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6話目

「そういえばコスモ君はこいつとどうやって知り合ったの?」

「そうッスね。兄貴との最初の出会いはただの興味本位だったッス」


 適応力が高いのか悠真は玲子が考えたアダ名を自分と理解した。アダ名の由来は宇宙だそうだ。UFO=宇宙、他にもペガサスやらなんか言っていたが夜道達にはよくわからなかった。

 悠真は夜道と友人になった経緯を話しだした。


「ウチの学校ってテストの結果を廊下に貼り出すじゃないッスか。それでずっと1位しかも全教科満点の人ってどんな感じなんスかね?って思ったのかきっかけッス」

「ちょっと待って。え? ずっと1位? 全教科満点? …………カンニングか」

「んな事するか」


 余程夜道の成績がいい事に納得できないのか玲子は勝手に自己完結した。


「嘘だ!! こんな自分の事を机マイスターとか言う頭のイカれた奴が成績上位者な訳ないわよ!」

「おい。誰が頭のイカれた奴だ?」

「やっぱりなんとかと馬鹿は紙一重ってやつッス」


 あえてそっちをぼかす悠真に「やはり類友だ」と思いを禁じ得ない4人だった。


「でも最初の頃の兄貴はかーなーり愛想がなかったッス」

「そうか? 普通だろ」

「私の第1印象は枕を持った変な奴よ」

「うさぎは特に何も……」

「ケーキか命のどっちかを要求する奴がか?」

「私はいきなりすのこを投げられたぞ」

「兄貴……」


 悠真は夜道の方を向いた。

 常識的に考えれば愛想以前の問題だ。


「あの兄貴がそんなにもアグレッシブな行動をするなんて自分は感激ッス!!」

「「「「えーー……」」」」

「お前は俺のなんなんだ? オカンか?」


 目に涙をうかべる悠真に対し4人は若干引いていた。


「だって初めの頃は自分が兄貴に話かけてもほとんど「あー」「そー」で終わらせてたんスよ! それが今は自分から話かけて新しい友達を作れるようになったなんて成長したッスね兄貴」

「兄貴とか言って俺の事慕ってねーな。馬鹿にしてんだろ」

「そんなことないッスよ」


 悠真の話からして悠真と友達になる前の夜道は積極的に誰かと話をする事はせずむしろ距離をとる感じだったようだ。

 今の夜道がまともがどうかは置いといて多少はコミュニティ能力が上がったようだ。…………上がってるのか?


「話が逸れたけど視聴覚室で最後よ。みんなもう一頑張りよ」


 話を逸らせた張本人が言うなとは誰もツッコまなかった


「おい待て。視聴覚室だと?」

「そうよ。『視聴覚室で深夜異世界の扉が開かれる』というのが最後の七不思議よ」



「視聴覚室は特別練の方だぞ。なら同級生と会った調理室の時に一緒に行けただろうが」

「しょうがないでしょ。順番通り巡りたかったんだもん」

「もんっじゃねー。勝手に自分ルールを採用するな」


 初めから夜道が七不思議の場合を知っていたのならば効率的に七不思議を巡っていただろう。だがそれは話し合いや他の面子も同行させずに淡々と作業としてやっていたはず。それで玲子は納得したかどうかは疑問だ。


「もう、これで終わりなんだからつべこべ言わずにさっさと付いて来なさい」


 玲子の言葉にため息をつきながら一同は視聴覚室を目指した。


「さてと、着いたはいいが何か言いたい奴はいるか?」

「なんだ? 藪から棒に」

「そうだぞ。なんで今このタイミングで言わなければならないんだ?」

「自分は特に無いッスね」

「…………ぁぅ」

「バニーちゃん何かある?」


 夜道の一言で何故かあわあわしだした兎月に玲子が聞くと全員の視線が兎月に集まる。

 それが余計に兎月を狼狽させたが全員兎月が喋るのを黙って待った。


「あ、あの、えっとその……。つ、次はどんな人がいるのでしょうね?」


 緊張からか最後が変な日本語になっていたがご愛嬌。


「60点だがまあいいか」

「なんなんだい、いったい?」

「気にするな先輩。ただの天丼の話だ」


 話の意味がわからない泳は首を傾げる。悠真は夜道の性格を考えてなんとなく理解できていた。


「それじゃあ本題に戻して視聴覚室に乗り込むとしますか。これが終わったらやっと眠れる」

「うさぎもそろそろ……帰りたい……です……zzz」

「飼育寝るな。ここまで時間がかかるとは思わなかったが結構面白かったな」

「夜の学校で皆が不法侵入という状況だが。その、なんだ。こうやってみんなでワイワイ活動するのは意外と悪くないな」

「なんだ先輩、部活動をしている割には友人交流が少ないんだな」

「部活は自分のタイムの事ばかり気にして他の部員と話す気にはなれなかったな。それでもそんな私にも話かけてくれたり遊びに誘ってくれてくれた部員がいてくれたのにな」


 夜道の言葉に泳は自嘲しながら言った。


「なら明日からでも自分から話かけならどう?」

「………………え?」


 意外にも玲子からそんな言葉が出てくるなんて思わなかった泳はたっぷり5秒程思考停止していた。


「そ、それでも今更過ぎやしないか? 話かけて無視でもされたら私はどうすれば……」

「それはしょうがないんじゃない。今までそんな態度だったんだから」

「…………」

「でもね。それが今更なんて思わない。たわわちゃんは3年生でも遅かったなんて思わずにちゃんと向き合ってほしい。そして数年後こんなこともあったなって思い出にふければいいのよ」

「……どうしたんだ浮遊先輩?」

「さあ。なんか悪い物でも拾い食いでもしたんじゃね?」

「そこ! 今いい事言ってるんだからちゃちゃいれない!」


 今までがアレだったため辛と夜道の反応は仕方ない気もするが玲子は咳払いをして話を続ける。


「いい。時間は戻らないのあの時あーしとけば良かったなんて後悔する前にやれる事はやっときなさい」

「わかった。その忠告有り難く貰っておくよ」


 泳の言葉に玲子はニッコリと笑った。


「…………」

「廻見どうかしたのか?」

「いや、なんでもない」





「さあ、ここで最後! みんな準備はいい? トイレは行った? 忘れ物はない? 最後だけど突入するときにかけ声とかいる?」

「ここに来てまたウザ絡みしてきたな」


 視聴覚室に着いたら玲子がそんな事を言い出したので夜道がウンザリしたように言った。少し前まで真面目な話をしていた人と同一人物なのか疑いたくなるレベルで酷い発言だった。


「なんだよ。最後くらいテンション爆上がりさせたっていいじゃない」

「お前、俺と会った時もそんなテンションだっただろうが。あれか最初から最後までクライマックスってか」

「いや、私の場合エンディングも終わってアイキャッチに入ってんよ」

「ならそのまま終わってくれ」

「うるさい! 黙れ!」

「兄貴楽しそうッスね」

「そうなのか?」

「うさぎ知ってます。仲良く喧嘩してるんですね」

「飼育君それは喧嘩ではなくじゃれているだけなのでは?」


 夜道と玲子のやり取りを見てそんな感想を口にする一同であった。


「もう! そんな事はどうでもいいわ! 行くわよ! 突撃ーー!」


 勢い良く叫んだ玲子は扉に向かって飛び蹴りを食らわす。


「っ〜〜〜〜っっっ!!!!」

「お前なにやってんの?」

「な、なにって扉を蹴破って突入するのは警察の常套手段……」

「いろいろ違ううえに私達は警察でもない」

「防音用のドアを蹴破ろうなんて浮遊先輩男気があるな」

「浮遊先輩大丈夫ですか?」


 玲子の自業自得なので心配する気はさらさらない夜道は視聴覚室の扉に手をかける。


「たのもー」

「ぬぅぅおおおぉぉぉーーー!!!! 負けられぬ!! 負けられぬ戦いがあるのでござる!!」


 棒読みで乗り込んだ夜道を迎えたのは何十発もの銃声と爆発音そしてスクリーンの大画面でゲームをしている男の叫びだった。


「てい」

「ぐきゃーーー! ぐえっ!」


 夜道は男が座っているキャスター付きの椅子を容赦なく蹴り飛ばし男はそのまま壁に衝突して止まった。


「いったいなんなんでござるか!?」

「御用改めである! 貴様がここに潜伏していた動機を述べよ! 拒否権はない! 黙秘も禁ずる!」


 いつもどおり問答無用で夜道は男を問いただす。


「ちなみに人権はあるのでござるか?」

「そうだな……。今回はありの方向でいこう」

「ない時のほうが問題だからな」

「それでどうなんだ? 言うのか? 死ぬのか?」


 辛のツッコミをスルーして夜道はさらに極端な2択を提示する。


「物騒でござるな。潜伏と言われたが拙者にはここの使用許可が出てるござるよ」

「……ほう。それはいつのことだ?」

「放課後でござる」

「じゃあなにか? 放課後からずっとここにいたのか?」

「そうでござるよ。そのために食料なども持ち込んでいるのでござる」


 教室の片隅にカップ麺などのインスタント食品の入ったダンボールが置かれてあった。これは常習犯と言ってもいいだろう。


「その間ずっとここでゲームをしていたの? 飽きない?」

「飽きるなんてとんでもない。ゲームにはいろいろやり方がごさる。縛りプレイ爾りRTA爾りソフト1本で何回でも楽しめるのでござる」


 玲子の問いに力説する男に対し全員がそれはある一定の人の話だと思うと考えたがあえて口にしなかった。


「よし。これでミッションコンプリート。長い時間をくったがこのクソみたいな七不思議巡りは終わりだ」

「クソみたいってなによ! 楽しかったでしょ!」

「う、うさぎは楽しかったですよ……」

「まあ、問答無用で連れて来られたけどそこそこ楽しめたんじゃないか。いろいろ言いたいけど」

「そうだな。1人で鬱蒼とした気分で過ごすよりかはマシだったな。いろいろ言いたいけど」

「自分はこれが最初なのでなんとも言えないッスね。クレームは入れるッスけど」


 玲子の言い分には多少は同意できるがその何倍も文句も言いたいというのが全員の意見だった。


「ふむ。拙者だけ話についていけぬでござる」

「ならとりあえず自己紹介しましょ。私は浮遊玲子。他コイツ、バニーちゃん、甘辛くん、たわわちゃん、コスモくんよ」

「おい霊子。お前の考えたアダ名で呼ぶんじゃね。つか俺のはアダ名ですらねー」

「何故かアンタには言われたくないわね……」


 女の直感で夜道を不信な目で見ている玲子を無視してあらためて自己紹介をする一同。

 ついでに今までの経緯を悠真が説明する。夜道に任せると何時もの流れになることは予想に(かた)くないからだ。


「ほうほう。なら拙者がここに居座ったばかりにそのような面白話に発展したと……。噂話とは恐ろしい物よ。ああ、名乗りが遅れたが拙者は御宅(みやけ)影蔵(かげくら)と申すでござる」

「……あれ? 御宅……影蔵……。もしかして生徒会長?」

「「「は?」」」


 泳の言葉で玲子、夜道、辛の頭に疑問符が浮かぶ。

 それはそうだ。使用許可書があるにしてもこんな深夜まで使っている者がこの学校の代表な訳がない。


「いかにも。拙者生徒会長をしてるでござる。今は完璧にオフであるからしてゲーム用のメガネやボサボサの髪でござるが始業中はキッチリしてるでござるよ」

「見た目が全然違うが同じ名前だからもしやとは思ったが……」

「まったく別人ッスね」

「言葉遣いも違いますよ」

「これも私用でござる」


 影蔵にとってはこの格好と言葉遣いがリラックスできる状態なのだろう。生徒会長の影蔵とは天地の差みたいだ。


「それじゃあ恒例のアダ名付けね。御宅だから読み方を変えてオタクくんね」

「スゲー安直だな」

「それがダメなら電車男ね」

「ん? 拙者電車には詳しくないのでこざるが……」

「これがジェネレーションギャップか!」


 訳もわからず膝を折って嘆く玲子をよそに夜道が話を進める。


「説明も終わった事だしこれで本当に終わりだな。七不思議の元凶7人揃い踏みだ。それで……」


 夜道は影蔵から兎月と順に七不思議の原因の顔を見ながら玲子で止まった。


「お前の本当の目的はなんだ?」

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