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5話目

「遅いぞ先輩」

「シャワーを浴びてたんだから仕方ないだろ」


 しばらくして制服に着替えた泳が来たのだが夜道は不満を漏らした。


「もう少し遅かったら眠りついた後輩を置いといて先に行くところだったぞ」

「ふえ!」

「こんな所で1人ぼっちにならなくてよかったわねバニーちゃん」

「ふええ!!」

「いや、起こしてやれよ……」


 さっきからウトウトしていた卯月は夜道の一言で目が覚め更に玲子が追撃する。


「それで次は何処に行くんだい? 七不思議なんて私知らないんだけど」

「「「…………」」」


 夜道、卯月、辛が詰め物を外した玲子を見る。やはり七不思議の事を知っているのは玲子だけのようだ。


「え? なに? どうかしたの? もしかして私に欲情した? いやー私って罪な女」

「絶壁に欲情するほど貧乳好きじゃねーから」

「あぁ?」

「廻見話が進まないからいらん挑発はするな」


 辛が仲裁に入り次の目的地に話が進む。


「次は屋上よ。『満月の夜、屋上で謎の物体が姿を現す』これが次の七不思議よ」

「屋上ね。どっちの屋上なんだ?」


 伏木高校は教室練と特別教室練の2ヵ所屋上があり、そのどちらかなようだが違う方に行ったら無駄足である。

 そんな時間的にも体力的にも無駄にしたくない。特に睡眠時間が減るのは夜道的に極めて遺憾だ。


「ん~、たぶん教室練ね。私のシックスセンスが言っている」

「なら特別の方だな」

「おい」

「お前の勘なんてあてになるか」

「あの~、だったら2手に分かれるのはどうでしょう?」

「ダメよ!」


 卯月の提案を強めに否定する玲子。


「なんでだよ? 俺はいい案だと思うけど」

「私も甘口君と同じ意見だが」

「そ、それは……。な、謎の物体が危険なモノかもしれないからよ。自分達の身を守るために一緒に行動した方がいいじゃない」

「待て。浮遊君はそんな危険がある所に私達を連れて行こうとするのか? だったら私をすぐに帰らせてもらう」

「え? 待ってそれはダメ!」


 玲子の意見を聞いた泳が帰ろうとする。

 当たり前だ。自分から進んで危ない所に行きたくはない。

 だが玲子も帰らすのを拒む。


「……おい。いい加減自分の本心を言ったらどうだ霊子」

「ほ、本心って何よ」

「お前は……」


 夜道の言葉に全員が耳を傾ける。


「どうせお前はこのメンバーのリーダーは自分と思い込んでて2手に分かれた事で変にリーダー面する奴を出ない様にしたいだけだろう」

「「「…………」」」

「なんでバレたの?」

「「「当たってた!!!」」」


 夜道に自分の本心を言われた事で玲子はその場に崩れ落ちた。

 一方3人は思ってた以上にくだらない理由だったため開いた口が塞がらない状態だった。


「だってだって! 元は私が七不思議を解明したいって言ったんだから私がこのパーティーのリーダーでしょ!」

「こいつパーティーとか言い出したぞ」

「お願いよ戦士A。あなたが1番長い間パーティーに入ってたんだから私の有能性を知ってるでしょ」

「誰が戦士Aだ!」

「廻見先輩もういいですよ」

「そうだな」

「おそらく精神的な障害があるんだな」


 玲子が子供の様に駄々をこねるので3人共呆れを通り越して何かを理解したような菩薩の顔をしていた。

 そして夜道は『こんなのと障害者を一緒にすると障害者から名誉毀損で訴えられるぞ』と心の中で泳にツッコミをいれた。


「ならみんなで教室練の屋上へ向かうわよ」

「はい」「ああ」「そうだな」

「お前らそれでいいんなら別にいいけどさ」


 夜道もそう言いながら教室練の屋上を目指すのであった。




「カギ開いてるわね」

「ま、こんな所滅多に人なんて来ないだろうしな」

「おい、もし開いてなかったらどうするつもりだったんだ?」

「同級生。そんなのは決まってる……」

「「力ずくで壊す!!!」」


 辛の質問に夜道と玲子がキレイにハモリながら言った。


「やはりこの2人は頭がどうかしている」

「失礼だな先輩。1億歩譲って霊子と同じ扱いなのは置いておくが……」

「おい? なんだその言い草は」

「俺達は不法侵入をしていたと考えれば器物破損なんて1つ2つ増えた所でどうせ同じだ」

「同じじゃねーよ」

「またすごい言い分だな」

「うさぎ達捕まってしまうんです?」


 夜道の極論に辛がくってかかり泳は呆れ卯月が涙ぐんでいる。


「外は特に問題無いわね」

「おいコラ、待ちやがれ」

「それはお前もだ廻見」

「やはり危険はないみたいだな」

「ふえぇぇ~~。みんなうさぎを置いてかないでくたさ~~い」


 4人がわちゃわちゃしているうちに玲子は1人フライングをしていた。

 玲子の後に4人が続くがそこには何もなくただただ綺麗な夜空があるだけだった。


「月が綺麗ですね」


 空には満月がありそれを見て卯月はなんとなく言っただけだったのだが。


「ほう。後輩、公開告白とはやるな。相手は誰だ? 同級生か?」

「こ、こここ告白なんてうさぎしてません!! なんでそんなことになるんですか!」

「なんだ違うのか。おもしろくない」

「ええっと、夏目漱石だったけ?」

「ああ、夏目漱石が『I Love You』を『月が綺麗ですね』と略したのが起源とされている。有名な話だな」


 突拍子のない話だと思ったが泳は知っていたのか聞いてみると夜道が捕捉を入れる。


「アンタ無駄な知識が多いわね」

「そこは無駄にじゃないのか?」

「なんで?」


 玲子の言葉に辛が指摘するが玲子は心底不思議そうだ。


「使えない知識は無駄なだけじゃない。それならまだ食べられる野草を知ってたそうが役にたつでしょ」

「先輩はどういう生活をしてたんだ……」

「やめておけ同級生。コイツにはいろいろと常識が通じないぞ」


 幽霊だったり死因だったり普通の事が少ない玲子にはもはや一般人が予測できない思考の持ち主だと夜道は決めつけていた。


「ところで何もないのだが……。やはり七不思議なんて非科学的な話あるはずない」


 泳の言うとおり屋上には誰もおらず不自然なところもなかった。


「おいおい先輩そんな事いってやるなよ。なにもないのが普通だが科学で証明できないもの、未知との遭遇にはロマンがあるだろ」

「ロマンねー」

「なんだ霊子? 何か言いたそうだな」

「べっつにーーーー」

「浮遊先輩拗ねてます?」

「あーーもーーうるさいッスよ! なんなんッスか! こんな時間に!」


 なぜか玲子が拗ねていると上から声が聞こえてきた。


「屋上なのにさらに上から声が! これはもはや宇宙人か何かかしら!」

「ん? この声……」


 はしゃぐ玲子に対し夜道は怪訝な表情をしている。


「宇宙人!? どこ! どこッスか?」

「「「「「………………」」」」」


 声の主は夜道達より上、屋上の出入口である扉で突起した場所から身を乗り出した。


「こんな所でなにやってんだ悠真?」

「あれ? 兄貴じゃないッスか」


 夜道はその人物を知っているのか名前をよんだ。


「なに? あんたの知り合い?」

「まあ、そんなところだ。コイツは実知(みち)悠真(ゆうま)。1年で後輩だ」

「夜道の兄貴が自分以外の人といるなんて……。明日は世界滅亡ッスかね」

「随分な物言いだな悠真」

「廻見それブーメランだからな」

「確かに。廻見君が言えるセリフではないね」


 悠真と呼ばれている生徒と夜道を見て4人は『類は友を呼ぶ』が頭に浮かんだ。


「それでこれはどういった集まりなんスか?」

「端的に言えばここにいる全員不法侵入者だ。もちろんお前も含まれるぞ」

「ちょっと。私は違うわよ」

「同じようなもんだろ。それで悠真はどうしてここにいたんだ?」

「それはこっちに上がって来ればわかると思うッス」


 悠真に言われるまま上がってみればそこには変な図が書かれていた。


「ミステリーサークル」

「悪魔召喚」

「え!? え~とお絵かきです!」

「……魔除け」

「私も続かないといけないのか? だ、ダンスステップの順序」


 夜道に続いて全員がその図を見ての予想を言った。


「全部違うッスよ。これはUFOを呼び出す為の絵ッス」

「UFOを呼ぶ為の絵ならグラウンドを使いなさいよ!」

「お前は何に怒ってんだ?」

「ここに絵を書いたのはここが1番高い所だからッス。山の頂上もあるんスけどたまに野性動物と遭遇するんで危険なんッス」

「でもどうやって屋上に出られたんだ? 確かカギが掛かってたはずだろ」

「それは合鍵を使ったからだ」


 辛の質問になぜか夜道が答える。


「悠真が屋上に行きたいとうるさかったから合鍵を作って渡したからな」

「合鍵を作るにしても本鍵が必要だがそれはどうやって調達したんだ?」

「職員室から拝借した。案外似たような鍵を置いとけば案外バレないもんだ」

「そうパクったのね」

「え~とネコババですか?」

「ギったのか……」

「……さっきの答え予想といい、この同じ意味の言葉遊びはなんなんッスか?」

「道中暇だったから適当に決めた」


 七不思議は後2つなのに5回ミスしたら罰ゲームという謎システムまである。


「兄貴頭いいのにたまに頭悪い事するッスね。やはり馬鹿と天才は紙一重ッスか」

「もう頼まれてもハッキングしねーぞ」

「それは困るッス! 兄貴天才! 兄貴ノーベル賞!」

「ちょっと待って。ハッキングってどういう事だい?」


 悠真の発言にこのメンバーで最高学年の泳が眉をひそめた。


「ああ、ある国でUFOの機密情報があるって悠真に言われてな。結構すんなりいったぞ」

「それって犯罪なのでは……」

「バニーちゃんバレなきゃ犯罪じゃないのよ」

「なぜおまえが言う。それに大丈夫だ。痕跡は残さないようにしたしそれにもしバレたとしても学校(ここ)のパソコンを使ったから犯人までは特定できない」

「余計たち悪いぞそれ……」

「廻見くんキミは……いや、いい。言っても無駄だろうからな」

「そうッスね。これで成績がいつもトップだから先生達も手を焼いてるんスよ」

「「「は?」」」

「先輩頭良かったのですか?」

「なんだ? 別に驚くほどのもんでもないだろ」


 更なる悠真の言葉に4人は耳を疑った。


「だってこんな奴が成績トップってあり得ないでしょ! いや待てよ。この学校の全員が超絶馬鹿だったらもしかしたら……」

「今の発言は俺以外にもケンカ売ってるからな」

「それで兄貴達はなんで屋上(ここ)に来たんスか?」

「かくかくしかじか」

「だからそれで伝わる訳ねーだろ」

「なるほど七不思議巡りッスか。楽しそうッスね」

「「「伝わった!?」」」

「で、でもこれで6つ目、次で最後よ。みんな私についてきなさい」

「あと1つか。これでやっと眠れる。悠真をオマエも来いよ拒否権はない」

「先輩がた待ってくださ~い」

「はあ、行くか……」

「もう帰りたいのだか……」

「拒否権なしッスか。面白そうだから別にいいッスけどね」


 玲子は1人先に屋上を後にしてその後に5人が続いた。


「でも変ッスね。七不思議に屋上なんてあったッスかね?」

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