破壊の隻腕のプロセッサー
三話目です。
一、二話よりも文字数が多いですが飽きずに読んでいただければ幸いです。
さ~てと、創るためには詠唱が必要なんだっけ?考えるのって、面倒くさいな~。それにさぁ、詠唱ってなんか厨二病っぽくて嫌なんだよね。
うむ、できるだけ覚えやすく、それでいて強力なのを創ってやったぞ!これで兄さんの股間を攻撃してやる!
「ただいま」
ッ!!兄さんが帰ってきた!よし、手始めに兄さんで実験してやろう、ふはははは。
「お帰り~、<傲れる者の顎を打ち抜け、大地の怒張>」
「お、おい?!な、なにを?!」
兄さんは、下から打ち抜こうとする純鉄の柱を後ろにかわす。でも、僕の狙いは最初から顎ではないのさっ!!
「りぶ、いきなりなにする―――ぐおっ!!」
「ふふっ、ははっ。外では無敵の兄さんでも、僕の攻撃の意図までは分からなかったようだね」
「ぐぅ、おおっ、り、りぶ、い、一体、何を......」
兄さん、まだ分からないのかね。僕が兄さんのせいで、一体どれほど苦労したことか!!
「兄さんが有名すぎて!!僕の安心安全な学校生活(睡眠)が阻害されるんだ!」
今こそこのイケメンに報いを!!ぜ、絶対許さんぞ、いや、赦すマジ。
「?わ、わかった!!俺が悪かった!だ、だから今すぐっ!!この股間の痛みを消してくれ!」
「ごめん兄さん、無理(笑)」
「りぶーーー!!」
◇ ◇ ◇
「はあ、酷い目にあった......」
「ご、ごめん兄さん。能力を試したくって」
僕が涙目+上目遣い+甘え声をすると、あっけなく許してくれた。やはり、持つべきは弟に激甘な兄に限る!!
「で、りぶの能力は何なんだ?床を突き破って鉄の塊がでてきたように見えたが」
な、何だと?!たったあの一瞬で僕の術式を見破ったのか?!く、クソ、次は一生男の機能を使えない体にしてやる!
「おい、今なんか寒気がしたんだが、気のせいか」
「っ!!う、うん多分そうなんじゃない?てか、僕の能力が何か、だっけ?」
「ああ、何か詠唱もしていたようだし、強力なものなんだろ?流石は俺の弟だ!きっと鉱物の生成や操作をするんだろ」
ふふっ、勘違いしてる。まあでも、そう思わせとくのも悪くないかも。うん、兄さんがそう思ってるなら、勝手にそう、思わせておけばいいのさ。
「うんそだよ。能力名は土士鉱山って言って、効果は兄さんが言ったとおりかな」
「そうか。んじゃあ、飯作っといたから、さっさと食って風呂入って寝ろよな。俺は先に風呂はいるわ」
そう言って、兄さんは風呂場へと向かった。
作戦は完璧だ!!これなら明日の模擬戦も余裕かな。ってか、兄さんの悶絶するところ写真におさめられたぞ。一部のファンに売ればいい金になるはず......。
◇ ◇ ◇
「じゃ、いってきます」
「おう。気を付けろよな」
兄さんにいってきますを言って、あの写真を懐に忍ばせて僕は登校する。ふふっ、緋宮あたりにでも売りつけようかな。
◇ ◇ ◇
「おはよっ、倉間くん!」
「あ、お、おはよう緋宮さん」
「倉間くんは今日の模擬戦勝てそう?」
「う、うーん、どうだろ?強い人だったら勝てないかも」
んまあ、別に僕が本気出す必要ないでしょ。強すぎるのがいたら兄さんに報告すればいいだけだし。
「おい灼流!!そんな奴に構うなよな!」
「え、ら、来渡?!」
だれ?ぼくこのひとこわいよ。
「倉間も陰キャのクセに灼流と喋ってニヤニヤしてんじゃねぇ!!」
「え、えーと、どちら様で......?」
「お前の前の席だろうが!俺は吉良来渡!!灼流の幼馴染みだ!」
キラライト?なんか少女漫画に居そうだね。
「そ、そうなんだ」
「来渡、私今倉間くんと喋ってるんだけど」
「はぁ、灼流。倉間みたいな陰キャと喋って意味があるのかよ?それにこいつ、お前と話してる時ずっと胸見てるぞ!!」
は?こいつ、何言ってんの?ぶっ、いやぬっ殺すぞ。僕が?この緋宮の?胸を見る?はっ、笑わせんな。誰がこんな乳臭いクソアマに興奮すんだ?
「な、何言ってるの?あんた馬鹿じゃないの?」
「俺はお前の心配をしてるんだ!こうなったら倉間!!次の模擬戦で勝負だ!!」
何が「こうなったら」なの?え、やだよ?何で僕が正義の味方と戦わなきゃいけないの?めんどくさいんだけど。
「ふん!首洗って待ってろ!」
しかもこっちの返事を聞かずにどっか行ったし。自分勝手なお子様だな~。
「ご、ごめんね。あいつたまにああいうところがあるの」
「べ、別に緋宮さんが謝ることじゃないよ」
「それもそうね。ありがとっ」
「は~い、皆さん座ってくださいね~。今日は模擬戦ですよ~」
ついに来た!でも、あのめんどくさい奴とするのか。やだなぁ。あいつ、自分が勝ったらとことん相手を馬鹿にしそうだし。
もういっそのこと、本気で叩きのめして猫かぶるのやめようかな?うん、それがいい。あのキラライトとか言うのを、プライドごとすりつぶしてやろう。
「全員いるようなので、修練室に行ってくださいね~」
そう言って、他の生徒たちと、ぞろぞろと行ってしまった。
「私たちも行こっ、倉間くん」
「うん」
◇ ◇ ◇
「それでは、模擬戦のルールについて改めて説明しますね~。まあ今回は一対一ですので、それぞれがフィールドに入り、審判の合図とともに試合開始です。怪我をしても大丈夫なように、治癒結界を設定しておくので、存分に戦ってくださいね~。因みに治癒結界というのは、中に入っている人の傷などを、結界を解除すればどんなものでも治癒するものです。ですから、皆さん安心してくださいね~」
へぇ~。それって、一種の異能だったりするのかな?魔導書の悪魔で再現できるかな?今度似たようなやつつ~くろっと。
「それでは、最初にやってくれる二人はいませんか?」
樹屋が言う。正直やりたくないな~。無駄に体力とか使うし、考えるのにも精神力を使うんだよ?
「先生っ!!俺と倉間がやります!」
「そうですか。それではお願いしますね~」
は?勝手なことを(怒)!!僕はもう激怒プンプンまるだぞっ!赦さん。兄さんみたいに股間を打ち抜いてくれるわっ!
「......うん、やろっか」
「だ、大丈夫なのっ?!」
「大丈夫大丈夫」
「はっ、ボコボコにしてやるよっ!身の程を知れっ!!」
こいつ、うるさいなぁ。せっかく集中してるのに。いつもどおりふざけながら相手してやろうか?
「それでは二人とも位置についてくださいね~。はい、すた~と~」
......適当すぎやしませんかねぇ~。ま、いいか。
最初っから本気出す!!
「<傲れる者の顎を打ち抜け、大地の怒張>」
「あ?なん―――グハッ!!」
ふふっ、このまま出力全開!!惨めだねぇ~、散々馬鹿にしてたクセに、ふふっ。
「て、てめぇ。この、卑怯者がぁ!」
さてと、ここからは本当の"僕"でいく。
「勝負に卑怯なんてあるわけないだろ?」
「「「っ!!」」」
おっと、殺気が漏れちゃいました。全員ビリッとキてるね~。このまま潰す?でもそれじゃ面白くないから、アレ見せちゃおっか。
「ぐっ、クソっ!!くらえっ!」
やけくそ気味にキラライトから放たれたのは、一筋の電撃。馬鹿だねぇ。自分の股間を潰してるのは純鉄だよ?
「はっ、ぶっ殺せっ!!って、ぎやあああ!!」
「ふふっ、避雷針って知らないの?まあいいや。<来たれ、悪魔の隻腕>」
僕が詠唱すると、肩甲骨あたりから、テレビの砂嵐のような色の巨大な片腕が出現した。
「な、なんだそれはっ?!」
キラライトがびくっ、ってなって震えてる。か~わいい~。ふふっ。
「握り潰せ」
たったそれだけ。六文字だけで指示し、それをただただ実行する隻腕は、他の有象無象からすれば畏怖の対象だろう。けど関係ない。我が儘の代償は払ってもらうから。
「ひっ、や、やめっ。ぎゃあああ!」
さっきみたいに調子にのってたのとはうってかわって、赤ん坊のようにおぎゃおぎゃと泣き叫び、胴体をぐちゃっ、と握り潰された。
「......し、試合終了です。か、解除」
樹屋がそう言うと、治癒結界が解除され、無傷の状態でキラライトが蹲っていた。
貴方に心の底から申し上げたいことがあります。
―――ざまあっ!!
「ひ、酷い!!あそこまでする必要ないのに!」
「な、何だよあれっ?!お前、ば、化け物?!」
「最低っ!!クズっ、死ねっ!!」
キラライトをボコったせいで、僕に向けられるありとあらゆる罵詈雑言。ま、兄さんに殺気向けられるよりは十分ましかな。いつ兄さんに殺気向けられたかって?兄さんの好物のプリンを食べたときかなっ!
「そ、それでは次の組お願いします。それと、倉間くんはこちらに来てください」
いつものおちゃらけた様子はなく、ちょっと怒ってる?まさか、樹屋って、自分のだいちゅきなキラライトをぼこされて怒ってる?若作りのクセに可愛いとこあるんですねっ!
「倉間くん。あなた、能力は一体なんですか?あんな危険なもの、放って置けません」
危険?それ、別に僕の能力だけじゃなくない?使い方によってはどんな能力であっても、危険だと僕は思うけど。
「じゃあ先生が当ててみてください。能力はその人物の趣味や生まれてからやったことに左右されますから」
「っ!!ど、どこでそれをっ!!」
「せんせークイズですよ。知りたいならそのちんけなおつむで考えてください」
あー、偉い人煽るのすっごい楽しいな~。もっとしよっかな?だめ?
「くっ、鉱物操作ですか?」
「違いますね~。間違えたので先生の負けで~す。答え、知りたいですか?」
人差し指を立てて顎にあてる。そして、少しだけ首を傾ける。あざといよね。でも、そういう一つ一つの細かい行動が心理的に相手の心にダメージを与える。
「し、知りたいですっ!」
「じゃあ、教える代わりにせんせーは何してくれるんですか?人のプライバシーを知るんだから、それなりの対価をください」
にちゃっと笑うと樹屋は能力なのか太い蔓のようなもので攻撃してくる。
「はぁ、<来たれ、悪魔の隻腕>」
呟くだけで現れる僕だけの何でも屋。
「巻き取って、叩き付けろ」
「っ!!」
樹屋は急いでカバーしようとするが、意思がある隻腕は、樹屋をその巨大な手で掴み拘束した。
「身の程を弁えなよ。あんたが僕に勝てるとでも?」
「くっ、倉間くん!今すぐやめなさい!そうすればまだおふざけですみますから!」
僕こういう展開嫌いだな~。だって、僕が悪者みたいじゃん。弱いものいじめみたいでつまんないや。
「はぁ、先生、いきなり攻撃してきたのはそちらでは?まあいいけど、能力知りたいんでしょ?教えてあげる特別に」
「ほ、本当ですか?なら、これを今すぐ解いてください」
「それはまだ解きませんが、その前に貴女も本性をさらけ出してくださいよ。ねえ?隠者の外套の幹部さん?」
「っ!!な、何のことですか?せ、先生には何を言ってるのかさっぱりです」
あくまでしらばっくれるんだ。へぇ、後悔しないでね。
「そうですか。じゃあ先生が話してくれるまで、僕は先生を傷付けなければいけないようですね」
「え?ま、待ってください!何をっ?!」
「簡単なことですよ。僕の能力でちょっと拷問するだけですよ。安心してください。最初は痛いですが、段々気持ちよくなりますから」
「ひっ、わ、分かりました!話します、だから」
「じゃあさっさと話してください」
「は、はい。え、えっと、私は隠者の外套の幹部であるのは事実です。いや正確には元ですが」
「ふーん、じゃあ組織に消されたりとかしなかったんだ」
「え、ええまあ。あそこは他の諜報機関よりも大分緩いので。そ、それで、話したので、貴方の能力を教えてくれませんか?」
ちっ、もう忘れたと思ったのに。ビビらせようと少しだけ凄んでみたけど、失敗だったかぁ。
「ああ、いいよ」
「ほ、本当ですか?!」
「うん、約束だしね。でも、どうせなら君には僕の本になってもらおうかな」
「へ?」
お読みくださりありがとうございます。誤字脱字や疑問、改善すればより良くなるところなどあれば、感想などと共にお願いします。
それでは、次回も楽しみにしていてください。