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番かどうかわからないので恋愛結婚を希望します  作者: 幸智ボウロ(bouro)


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22 それでいいのか?

 部屋が空いているので住むことを許可し、お風呂、トイレ、台所…と『自分でやること、できること』を教えた。

「食事は私が用意しています。これはおやつが入ったマジックボックス」

 フォードはよく食べるので、専用のおやつ箱を用意していた。中にはソーセージパン等、調理パンがいくつか入っている。

 リムゼンの箱には焼きおにぎりが、私とライマの箱には甘いものが入っていた。

「ディアスの箱も作りましょうね」

「お茶の時間が決まってはいないのか?」

「いませんよ。おやつの補充は週に一回程度なので、計画的に食べてください」

 掃除と洗濯はソフィアがしてくれるが、自分の部屋掃除は自分でもすること。洗濯ものは洗い場の籠にまで持っていくこと。下着は軽く洗ってから出すこと。洗い終わったものはソフィアが各自の部屋に届けて収納までしてくれる。

「お買い物にはお金が必要です。庶民として生活をするつもりなら無駄遣いはしてはいけませんよ」

 例えば…、ライマに髪飾りをプレゼントしたいと思ったら。

「高級なお店に連れて行くのではなく、散歩しつつ屋台で可愛らしいものを買ってあげてください。値段ではなく、本人の好み優先で」

「おおっ、わかりやすい例えだな。わかった。高価なものでなくとも良いのだな」

「花束をプレゼントするのではなく、花畑を一緒に見に行く…とか。お金をかけなくても彼女を喜ばせる方法はあります」

 素直に頷いている。

「アリーも高価な物は欲しがらないよな」

「庶民ですから」

「逆に高価な物を欲しがる庶民もいるが、そういった相手はディアスを利用してやろうって下心満載だ。金が欲しいか、元王子の肩書きか。女、子供の中にも詐欺師はいる」

 子供が病気なのです、妹にご飯を食べさせたいのです。そんなことを言ってくる全員に援助はできない。

「慈善事業をしたいのなら教会併設の孤児院にしとけ。もしも小さな哀れな子供に泣いてすがられたら、教会に連れて行け。後ろ暗いことがあれば逃げる」

 ディアスは低く唸りながら、厳しいものだな…と。

「そういった子供達を助ける術はないのか?」

「ないな。それにこの国はましなほうだぞ。子供の奴隷がいる国もある」

 この国は奴隷制度がない。代わりに従者契約制度があり、借金の返済のために金額相応分、働くことになっている。その場合、衣食住の保証はされているし無茶な労働は強いられない。登録されているため定期的に司法の調査が入る。

「そうだな…。聞いてはいたが、現実のものとして受け止めていなかった」

「あんたは正義感が強そうだし、素直すぎる。突っ走る前に立ち止まることを覚えてくれ」

「努力しよう」


 フォードの部屋に戻ると、どちらともなくため息をついた。

「すまん…、変な荷物を背負いこんだ」

「いいですよ。私もアレを放っておくのは…、心配です」

 私から見ても子供みたいな人だ。

「それにライマの番ですから」

「ライマにも連絡しておこう。すぐに受け入れる必要はないが…」

「大丈夫ですよ。ライマは番に会える事を信じていたし、とても楽しみにしていました。ディアスは世間知らずで単細胞な大馬鹿野郎ですが、正直で真っすぐな方です。案外、早く仲直りできると思います」

 じっと見つめられる。

「なんですか?」

「自分以外の番に関しては運命を信じているんだな」

「それは…、私は獣人ではないので」

「オレと恋愛成立したら、早く言えよ?それこそ、恋愛かどうか、オレにはわからないんだから」

 拗ねた口調に『はいはい』と頷いておいた。


 ライマは落ち着くまでファーナム家に滞在することになったが、それはディアス用の理由で、実際は貴族教育と身を守る術を学ぶためだった。

 ディアスは王家から追い出されたが、王位継承権は剥奪されていない。

 王族という肩書きなしで常識を学んでこい。とのことで、こっそり護衛もついている。見えないし現れないけど、フォードの屋敷の外に出たら常に一人か二人いる。

 フォードとリムゼンには何となくわかるようだが、ディアスは気づいていない。私にはもっとわからない。

 ライマもファーナム家を出たら護衛がつく。

 ディアスが王城に戻れば、王子様の番となるのだから貴族の礼儀作法を覚えてもらわなければ困る…らしい。

 危険なことに巻き込まれないように周囲が警戒をしていても、本人に自覚がなければ守り切れない。

 幸いヴィクトリアさんが近接戦闘の猛者なので、この機会にみっちり教えてもらうとのこと。ヴィクトリアさん直伝ならば、ディアスに鉄拳制裁を加えられる程度には強くなるだろう。

 ライマがファーナム家にいるため、ディアスのことはリムゼンが面倒をみることになった。

「いや、オレも忙しいからっ。なんでもかんでもオレに頼めばなんとかなるって思ってない?王子様のお守とか、無理だって」

 ディアスの目の前で全力拒否するリムゼンにお弁当を差し出した。

「リムゼン、これ、お昼に食べてください。今日は新作のおにぎりを入れておきました」

「マジでっ?うわっ、楽しみ、じゃ、行ってくる~。ほら、ディアス、行くぞ」

 リムゼン…、餌で釣った私が言うのもなんだけど、それでいいのか?

 出掛ける二人を見送って、私達も家を出る支度をする。

 今日は改めて魔法院に行くのだ。

 魔法院に行き、受付までは同じ手順。ただ今回は魔法の登録ではなくホセ教官との面会だった。

 すぐに案内をされて、受付よりも奥へと進む。

 魔法院は受付までは豪華な作りだが、職員がいる場所は簡素なドアがいくつも並んでいるだけだった。

 そのうちのひとつで立ちどまる。

 案内の職員さんが下がるとドアが開いた。ホセ教官だ。今日もふさふさの柴犬尻尾が愛らしい。40歳すぎのおじさまだけど。

「やぁ、よく来たね。中に入って」

 もっと事務的な部屋を予想していたけど、サロンのようにソファやテーブルが置かれていた。調度品もあり、洒落た喫茶店のよう。

「休憩するのにあまり無機質な場では休まらない性質でね。この通り仮眠も出来るソファを置いている」

 その大きなソファにホセ教官が座り、私達は向かいの椅子に座った。

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