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ハロー/チープワールド  作者: 助吾郎
10人の探索者
23/23

対抗

後書きをご覧ください。

 

「ところでさ」


 新たな喜びに打ち震えた後、司郎は閃に向き直る。

 誰の依頼であろうと、『天岩戸』発動前の時間稼ぎという点では及第点である。


「君、何時までそこに立ってるの?」


 既に司郎の使用したスキルの効果は全て消え、雨は変わらず降り続けている。


「ま、僕さん的には楽でいいんだけど、ネ」


 などと虚偽を司郎は並べ立てる。

 司郎は先刻の閃の発言によりキレていた。


 司郎はキレていることを隠す癖がある。

 故にもどかしい思いをしたことも多々あるが、心理戦においてはこれ以上ないほどのアドバンテージを得る。


 そんな司郎は閃の行動をじっと待つ。

 そのすべての行動をあらゆる手段を用いて叩き潰し、怒りを鎮めるために。


「…司郎さんは……弱すぎます。多彩な手品で対抗してきても、結局僕に一度殺されてるじゃないですか」


「僕はね、記憶の痕跡を消したいだけなんです。そのために人を殺すのは嫌なんですよ…少なくとも」


「直接、僕の手で潰すのは」


 しかし。

 閃には伝わらず、逆に煽り返されることとなった。


 閃には人を見る目がない。

 というより、自分の都合の良いように人の性格を歪めて捉えてしまうのだ。


 畔の場合がそう。

 畔を見た閃の第一感想は『圧倒的な陽キャ』。

 しかし彼女は本来は悪く言えば地味な性格である。


 彼女の自身を鼓舞するための演技を見て、閃は誰にでも平等に笑顔を向ける存在を当てはめ、透かし見た。


 恐ろしいほどの自己本位。

 司郎にとっては精神的な相性が凄まじく悪い相手、というわけだ。

 

 司郎の言動は全て一般人に対してのアイロニーで満ちている。  

 そんな彼だからこそ逸般人を苦手とする。


「……そう。僕さんが弱い…かぁ………じゃ、本気出すかなぁ…間違っても」


「死ぬなよ。僕さんの目的は君の捕獲なんだから」


 そんな閃に司郎は即座に対応を改める。

 司郎の纏う雰囲気が一気に変化した。


 言ってみれば…魔境。

 司郎の周囲は踏み込み難い重圧で満たされる。


「君みたいな必殺技。僕さんも作ってみるよ。『限定固定』」


 限定固定。

 限定された空間内においてのみ、其処に存在する全ての生物は動作を禁じられるスキルである。


「…僕は君の全てを否定する。君の意思、希望、夢、理想、努力。その尽くを踏みにじり、壊して見せよう。ここに悪意は集結する。まだ見ぬ明日を永久に押し込めよう。」


「此処に全ては侵される」


 ぽつぽつと司郎の口から言葉が漏れる。

 祈りのようなそれは、純粋な狂気と悪意で満ちていた。


(ま…まずいっ!)


 閃は身動き一つ出来ぬまま、その光景を焦りながら注視する。

 それが来ないことを願った。


 しかし。

 口すら動かせない閃を眺める司郎は心の底から湧き出る笑みをそのままに、無情に、淡々と。


 それを口に出す。


「墜ちて…微睡め。『伏魔』越天楽」



―――――――――――――――――――――――――――


「…ここだ。僕が押し返してるけど…ま、無意味」


 縞崎により天岩戸前まで連れてこられた女性陣は、その大きさに息を呑む。


「…呆けてる暇は…ない。先ずは…とり()。この状態で写真を。ルー(アルル)は…出来る事を教えて…」

「ぁ、私に何が出来ますか?この場でこれに一番詳しいのは縞崎さんですから…」

  

 多量に雨を吸い込んだ砂は空中に浮いてなお、かなりの安定感を齎していた。


 一同の心を落ち着けるのには十分であった。

 事実、レンは動き出そうと縞崎に語りかける。


「レンは…いや、も。…レンも、出来ることを。あとは僕が……ぁあ、しんど」


 バッサリと切り捨てる…というよりは情報不足から来る一時的な戦力外通告。

 レンは動じずに自身のスキルを思い返し、答える。


 短い間ではあるが、レンは彼のことを理解し始めていたのだ。

 彼は会話が不器用なだけなのだ、と。


「私のスキルは…一撃必殺です。私は好きではないのですが…私が()()()()()()()()()()()()()()()。そういったスキルです」

「…なら、これは?」

「申し訳ありませんが…まだ…悪と判定出来ません」

「…そう。ルー?」


 縞崎にとってレンの返答が予期していたものかどうか、傍観している畔にはわからなかった。

 少なくとも縞崎にとっては些事であった様である。


 一方アルルは自身の呼び名に困惑していた。

 なにせ関わりにくさナンバーワンであることは間違いない縞崎から愛称のようなモノが飛び出したのだ。


「んむ…えと…夢…と…ここの…境目を操…れ、る?の。確か」

「…そう、…アレの中身を夢に持っていける?もしくは…衝撃とか」

「ん、もう少し…小さかったら…いける、かも。衝撃は…ん。できる」

「…よし」


「…とり、撮った?じゃ、これの鏡合わせで現像、頼むよ…」


「…タイミングは僕が合わせる。中身を衝突させたらその衝撃をルーが飲み込む。…破砕物は僕とレンで壊す」


「…それでいいか?」


 ここに初めてまともな対抗策が出来上がった瞬間だったり、しなかったり。


 かくしてそれぞれの場において、終わりの瞬間が近づいてきた。

自身の力不足により、ここで一度終わらせさせて頂きます。


いずれタイトルや詳細部分を変更したものを書く予定です。


拙作極まる当方にお付き合い頂き、ありがとうございました。

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