表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハロー/チープワールド  作者: 助吾郎
ハローワールド
10/23

答え合わせ

「まず疑問だったのは」


 閃は淡々と語りだす。

 そばにいる壺のような体型をしたお歯黒の醜女の足は不自然なほど歪んでいる。

言わずもがな、竜胆だ。


「最初に僕が飛んだときのあなたの言葉。【あなたも?】半ば反射にちかいものだったんでしょう」

「次に引っ掛かったのは能力の制限です。運命にすら介入し死体すら意のままに動かせる力が制限なし、とは考えられません」

「そこで貴女の一挙手一投足に注目してみました。スキルの名前は確か…『花魁道中』ですね」


「貴女のスキルの発動条件は()()()()()()()ですね?それにしても反則級ですが」


 竜胆(醜女)は答えない。

 あらゆる体液を顔から垂れ流し震える様は双方にとって悪夢そのものであるに違いない。


「…僕は……やっと出会えた人を失ってるんですよ?足の2本何て軽いじゃないですか。言いましたよね?四肢をもがれようがもごうが疑問を解決するって」

「あ、あぁあ…」

「…喋れるようになった?じゃあ聞きます。なんでレンさんを斬ったんですか?勧誘したいなら最初からそう言えば良かったじゃないですか」


 見下ろす視線はあくまで冷たい。遠巻きにレンが見つめている。


「もしくは…依頼主でもいたんですか?」

「ぁ…そ、それは…」

「だからといって許すわけでもないけど」

「ち、違う…じ、自分の意志で、その…ガハっ」


 間髪入れずに鳩尾を蹴りぬく。既にスキルは解除されているためさほど威力は無い。


「で?理由は?重要だよね」

「ごぼ…ごほっ……」

「神担さん。そのあたりで…」


 咳き込む竜胆に対しさらに手を加えようとする閃。

それを止めたのはいつの間にか側にいたレンだった。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


「神担さん。あなたはそんな人じゃないでしょう?私のことは…いいんです。元々数あるうちの分体の一つなんですから」


 手が震え始めた。


「レンさん…?記憶…あれ、でも…レンさんはさっきまで…」

「竜胆さんについては私から説明を。質問なら後で受け付けます。竜胆さんをこれ以上痛めつけないでください」


必死に震えを抑える。

(    )

心の声が響く。

( や…  )

震えは全身に伝播する。もう止めることは出来ない。

(やめて…くれ…)

レンさんの顔を見ることができない。

(そんな…顔を…しないでくれ…)


「どうしました?」


声音の優しさに心が挫けた。


「や…やめて…ください…そのか、お……僕には…とても…」


()()()()()()()レンさんの顔に恐怖した。


…見たくない。


直視出来ない。


認めたくない。


口の端にうっすらと浮かぶ愛想笑い。


それが自分のものだと思えればよかったのに。


僕の求めた太陽(レンさん)はもうそこにはいなかった。


「顔?私の顔が何か?あぁ、表情ですね。今この場において元の神担さんの私と竜胆さんの私が一つになり、表情とスキルが追加されたんです」










 結局此処も僕の求めたものでは無かったんだ…

人の変化に脆い僕の在り方。

怖い。

 求めた人と出会った。そして別れ、また会えた。

そして僕はまた失おうとしている。

怖い。

 歯の根が噛み合わない。きっとこれは寒さによるものではない。


 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。


 また失うのが怖い。けど。目の前のレンさんの顔もまた……




そこから先は覚えていない。


赤く染まる心と思考と瞳と体。


何一つ覚えたくない。


いつの間にか僕の手には額縁が握られていた。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――


皇国内、商店街


「……………ん?」


 縞崎 華矛良は言葉が少ない。

 ひとえに彼の怠慢によるところが大きいため、聞き取る相手がその都度内容を膨らませる必要がある。

 ちなみに今のは「どうした?」という意味合いである。


「…先程まで竜胆穂と神担閃が交戦していました。結果は閃の勝利ですが…その後反応がありません」

「あ?…つまり?」

「考えられるのは第3勢力の乱入による全員の死亡。あるいは閃による大量虐殺。最後にその概念世界の消滅です」


「…そ」


変わらず商店街は人々の声で賑わい続ける。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

第一章  完

このあと省略した対竜胆戦の補足と顔合わせ前の会話の補足を挟み次章に行きます。

特に本編に関わることは書かないor書いても別の場所で書くのでスルーして大丈夫です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ