誰も気付かない、終わりの始まり
夏休み、高校生の夏休み。
友達とバーベキューをし、海で泳ぎ、山で星を眺め、花火大会でステキな男子とひと夏の経験をする、そんな高校生の夏休み
のはずだった。
「ぐげぇ…。」
「それでも女かよ、姉ちゃん。」
私のうめき声を聞いて弟の優が呆れた声で言う。
そう、ここは家。いつもいる家。なんの特別感もないただの家。
一度しかない高校一年の夏を、私は家で自堕落に過ごしていた。
「そんじゃ、俺は出かけてくるから。」
「いいわよねぇ。優は青春してて。」
姉を放ったらかして遊びに行く弟を睨みつける。
「姉ちゃんも出かけりゃいいじゃん。ほら、井ノ上さんとか。」
「真希ちゃんは家族と海外旅行だって〜。」
真希ちゃんはテスト勉強なんかで私の家に何度か遊びに来ている。そのとき優とも面識を持っている。
「ちぇっ…。」
小さい呟きを私は見逃さなかった。
優は真希ちゃんが気になるらしい。全くマセガキなんだから。
お前なんかが真希ちゃんを好きになろうなんて百年早い。
とは思うものの、流石にそれを茶化すほど私も馬鹿じゃない。
弟の淡い失恋をとくとながめてやろうじゃなあか。
「いいわよねぇ。真希ちゃんは。」
「は?姉ちゃんが井ノ上さん羨むとか百年早いんだけど。」
「くたばれクソ弟!」
私の気遣いも知らずにぬかしやがったなこいつ!
「んなんだから、井ノ上さんに置いてかれんだよ。俺にもな。」
怒った私から逃げるように、優は出ていった。
その日、優は…死んだ。