それは学生として当たり前のこと
「ふげぇぇぇぇ〜〜〜。」
「それ、女の子が出していい声じゃないよ奈々ちゃん。」
げっそりと机に項垂れる私の絞り出した声に、若干引いたように真希ちゃんが言う。
「だってぇ。」
今日は一学期最終日、つまり明日から夏休みだ。
にも関わらず私がこんなうめき声を上げているのは、目の前の忌々しい紙共のせいに他ならない。
定期考査の返却だ。
「奈々ちゃん勉強苦手だもんねぇ。」
若干顔を引きずらせながら私の点数を見る真希ちゃん。
そんな顔になるのも仕方ないだろう、定期考査前に彼女がどれだけの労力を自分に注いでくれたかを考えると。
「ごめんね〜せっかく真希ちゃんが勉強見てくれたのに。」
真希ちゃんは勉強が得意だ。それにあやかろうとテスト前には真希ちゃんと随分勉強会を開いたものだった。
まぁほとんど私が真希ちゃんから教えてもらうだけだったが。
「そっかぁ…。あれが27点か…。」
遠い目をする真希ちゃん。
赤点、たとえ残り3点だろうと赤点は赤点…。
つまり夏休み中にも補習というわけだ。
「夏休みはいっぱい遊ぶつもりだったのにぃ。」
「別に夏休みが全部補習になるわけじゃないんだから。」
笑って言う真希ちゃんの目がちょっと怖いのは気のせいだろうか。
いや、気のせいに違いない。
決して彼女が「お前はもっと勉強しろ。」なんて思っているはずがない。
「つうかさぁ。補習とか意味なくない?」
「あ〜それまじわかるわ。」
隣で気怠気な鬱陶しい声がする。
クラスのギャルAとギャルその2だ。
本名は…意地でも言ってやらない。
「あんなもん勉強したかしてないかだけじゃん?」
「ほんとそれ〜。あーしも勉強会でやった古文は通ったし。」
「それにぃ、ホンモノのバカは勉強しても無駄みたいだしぃ。」
ギャルAがニヤリとしながらこっちを見てくる。
明らかな嫌味だ。
もうわかってもらえてると思うが、このギャル達と私達は仲が悪い。
原因は…いや、そんなことはもう関係ない。
「奈々ちゃん。あんまり気にしないようにしようよ。」
「でも〜。」
「も〜。今日の帰りクレープ食べに行こ?ね?」