第4話
主人公は達観してて感情が少ないように見えますが、そこは至って普通の少年です
美味しい物や綺麗な物には感動しますし、綺麗な女性に近寄られたらドキドキします
しかし公私の区別が異常とも言えるほどしっかりと出来ているので、仕事で接しているソフィアを異性として意識することはありません
勿論、プライベートで接する機会が訪れた時には...( ・∀・) ニヤニヤ
「ではまず魔力量の検査をしますね」
受付嬢は小さい受け皿のようなものが貼っている銀色のプレートを差し出した
「魔力量?
魔力に量なんてあるんですか?」
「...はい?」
ノアの辞書に『魔力量』という文字は存在しない
それもその筈
彼の魔力は量もさながら、その回復量も常軌を逸している
使った端から魔力が回復するノアが『魔力とは無尽蔵にあるもの』と認識するのも仕方が無いことなのだ
しかしそれを知る由も無い受付嬢は彼の言葉を聞いてどう説明すべきか戸惑った
「えーっと...
まず、ノア君は魔法を使えますか?」
「はい 使えますよ」
「ちなみに属性は?」
「えっ...と 火属性と水属性と木属性と風...」
「ちょっちょっ!
ちょっと待ってノア君!
君は一体何種類の属性を使えるの!?」
「結界魔法を除けば確か...9属性ですね」
絶句して固まる受付嬢と対照的に、にこりと笑って愛想よくそう答えるノア
火属性、水属性、木属性、風属性、土属性、氷属性、雷属性、闇属性、光属性
その全てを使える
現在、魔法使いの頂点と呼ばれる者が5属性使えることから考えてもそれは異常なことだった
しかもそれに加えて結界魔法も使えるという
普通なら大法螺と笑う戯れ言であるが、彼があまりにも自然に言うため受付嬢は確認せざるを得なくなる
「ノア君!それは本当なのね!?
9属性と結界魔法も使えるっていうのは!?」
「え、ええ 嘘をつく必要も無いでしょう」
「じゃあ 軽くでいいから見せて!!」
受付嬢のあまりの剣幕に気圧されつつも何とか首肯する
受付嬢だけでなくその大声を聞きつけた多くの冒険者達がじーっと見つめる中、ノアが火属性から順に手のひらの中で発動させていく
4属性を超えた辺りから『大法螺吹き』だとノアを笑っていた冒険者達も徐々に静かになっていく
9属性目の光魔法である『ライト』を発動させた頃には彼らのノアを見る目は畏怖と驚愕にすっかりと染められていた
「あとは結界魔法ですね」
と自身を覆う半透明の立方体を出現させる
ごくりと誰かが喉を鳴らした
「ほ、他には何かスキルなどはありますか?」
流石にこれだけであって欲しい
受付嬢のそんな願いも次のノアの言葉で容易く破れた
「実は特殊な『能力』が7つ程
それも見せますか?」
「い、いえ それらについては代行者の任に就いた時にでも...」
慌ててそう言う受付嬢
もうお腹いっぱいだとでも言いたげだ
「それは重畳
ここでは見せられないものもいくつかありますので」
ノアはそう微笑みながら頷くが、受付嬢はすっかりと疲れてしまっている
「はぁ...
では魔力量の検査に戻りましょうか
この針で指を刺して、血をプレートに付けている受け皿に落としてください」
その後、ノアの魔力量を見た受付嬢が遂に卒倒してしまったのは語るまでも無いだろう
「すみません!
取り乱してしまって...!」
倒れた後ノアに『怠惰』を使って貰い、復活した受付嬢―ソフィアは頭を下げた
「いやいや そんな
僕も配慮が足りませんでした
しばらくは常識を勉強します...」
ソフィアを気絶させてしまったことに一端の責任を感じているノアはがくりと肩を落として落ち込んだ
「ふふ もうノア君の非常識っぷりは理解したので気にしないでください
そしてこれが代行者の正式な登録カードです」
すっかり立ち直ったソフィアはノアに銀色のカードを渡した
「この『第10等級』っていうのは...?」
「その代行者の等級です
これによって任ぜられる討伐依頼の難易度も変わってきます
ノア君はまだ代行者になったばかりなので第10等級に属することになります
10等級相当の討伐依頼が出た時にはそのカードに内蔵された通信魔道具が作動するので素早くギルドに来てくださいね」
「分かりました
えっと...ちなみにお給料とかは...?」
すこし気まずそうにそう尋ねるノアを微笑ましく思いながらソフィアは告げる
「ふふ やっぱり気になっちゃいますよね
お給料は等級によって違います
ノア君は第10等級なので、月に10万リアン程度です
勿論個人によって差はありますが、上の等級の代行者より給料が高いことは無いです」
「結構多いんですね
助かります」
「ええ 実は代行者って少ないんです
素質を認められた一部の冒険者しかなれないので、素質のある人をギルドに繋げるっていう意味もあるんです」
ペロッと舌を出して悪戯っ子のようにソフィアは笑う
「なるほど...」
ノアは感心したように頷いた
「説明は以上ですが、何か質問はありますか?」
「えーっと...あ、そうだ!
昨日魔物を何匹か討伐したんですけど、換金って何処でしたらいいですか?」
それを聞いてため息をつくソフィア
「...もう何があっても驚きませんからね
換金所には私が案内します
心配ですから」
そう満面の笑みを浮かべる彼女にノアは苦笑した