プロローグ
拙作ですが、お楽しみ頂ければ幸いです
「―悪魔、ですか」
白銀の鎧を纏った若い女性が隣で歩く男に話しかける
「ああ 相当な化け物らしいな
まずそこらの冒険者がどうにかできる相手じゃねえ...」
そう真剣な顔をして話す男に女は呆れたように笑った
「流石に冗談でしょう?
彼はまだ5歳ですよ?
正直私達聖騎士団が対処する程の案件だとは到底思えません」
「ばあか
5歳のガキだろうが、100歳のジジィだろうが強え奴にとっては関係ねえことだ
...ったく相変わらず了見が狭いというか」
「っな!?グラジオさんだ―って...?!」
その瞬間、女は何かに気付いたように立ち止まった
それは濃密な殺気
自らの領域を侵す者に対する警告
「マジかよ...
これは予想外だったな」
先程まで気の抜けた顔をしていた男は表情を引き締め、冷や汗を掻きながらそう呟いた
「な、何ですか...これ
ワイバーンの威圧が可愛く思えるくらいの殺気なのですが...」
相打って女性の方はやけになったように笑っている
「ありゃ
あちらさんは既にこっちに気付いてんな
近付いたら殺す
ってか
一体どんな教育を施したらこんな化け物が育つんだよ」
2人はかつて感じたことのない圧力に気圧されてしまった
「ど、どうするんですか?
私達の手に余る事態ですよ...」
先程までとは全く正反対のことを呟く女性
「...仕方ねえ
撤退だ
『悪魔は我々の手には負えません
不干渉を徹底することをオススメします』
ってな感じの報告でいいだろう」
「しかし教会関係者は黙っていないと思いますけど...」
「あれの逆鱗に触れる方がよっぽど問題だ」
「そうですね」
大陸最強とも言われた聖騎士が任務を失敗した
その報は大陸中を巡り多くの人間を恐怖に陥れた
そしてそれから10年後―
『悪魔』の少年は生まれ育ったその故郷を人知れず旅立った