死にたい
「死にたいな」
彼女はそう言った。
「本当は、死にたくないだろう」
彼は言った。
「なんで」
「死ぬ前って、たぶん、何もかもどーでも良くなって、寂しいけど、楽しいから」
「やっぱり、死んでたんだね」
「ばれたか」
「ばれるよ」
「まあ、そっちで頑張れ、こっちは楽しくやるから」
「終わり、なんだね」
「……」「……」
「ありがとう、おやすみ」
「うん、また……いつか、今度ね」
彼女は目を開け、ゆっくりと体を起こし、左腕から左肩にかけて、右手にで少し強めに擦った。
(保険証、病院……どっちのほうから、まあ、いいや、両方いけば)
立ち上がった彼女から、水滴がおちた。