衝撃の事実
「では、先ほどの続きということでわたしから話していいかな」
二人が頷くのをみて、ディオネは続けた。
「俺はトーウ伯爵の長男だ。しかし俺は、リメーアだった」
「リメーア?」
「人の心を読むことができる者のことだよ、スリン。
俺はリメーアであったが故に父上が奴隷商人を擁護していることを知ってしまった。陛下から奴隷商人を捕らえるように言われていたにもかかわらず。
俺は父上に奴隷商人の擁護をやめるように言った。
父上は、トーウ・ガイアは、俺がなぜそれを知ったかを聞いた。
まだなにも疑うことを知らなかった俺は正直に自分がリメーアであることを告げた。
それを知るや否や、ガイアは俺を殺そうとした。
俺は抵抗できなかった。なぜなら、」
ディオネはそこで一度言葉を切った。
「トーウ・ガイアはサー・ルーナーだったからだ」
「トーウ伯爵もサー・ルーナーなのか?」
メルーナーの問いにディオネはああ、と頷いた。
「俺は、そのときとおりがかったオストワ様にお助けいただいたのだ。
オストワ様はトーウ・ガイアを説得してくださり、俺はチーアーになることで難を逃れたというわけだ」
「それでは、あなたもオストワ様に助けられたというの」
スリンは驚きを隠せずにいた。
「わたしも、ということはスリン、あなたもオストワ様に助けられたのか」
「ええ、だって、わたくしをメルーナーさんと、ディオネさんといられるようにしてくださったのはオストワ様だもの」
メルーナーは目を瞬かせた。
「スリン、そもそも俺にはなぜお前がチーアーになったのかが分からない。
わかる範囲でいいから教えてくれないか」
「ええ、いいわ。
といってわたくしにもわからないことが多いのだけれども」
そう前置きをしてスリンは話し始めた。
リュウア公爵が幽閉になったこと、本当は自分もそうなる筈だったが、陛下の恩赦でチーアーになったこと、そしてオストワがリュウア公爵に世話になったということでスリンをメルーナーとディオネに会わせてくれたこと。
「リュウア公爵が幽閉?それはなぜ……」
「リュウア公爵は魔女をかばったのよ。陛下と姦通した魔女をね」
三人は声がした方を振り返った。
そこにいたのは。
「メノウ裁判長。なぜここに」
それは、スティノア王国の裁判すべてを仕切っている、ドス・メノウに他ならなかった。
メノウは長い髪をかきあげた。
「オストワが全て教えてくれたわ。リュウア・スリンを、イレサイン・メルーナーとトーウ・ディオネと逃がしたことをね。
様子がおかしかったから問い詰めたらすぐに吐いたわ。
まったく、根性のない男ね」
「メノウ裁判長。なぜ、リュウア公爵は魔女を庇ったのですか。魔女を庇ったら、自分の罪に問われることを知っていたんですよね」
メルーナーが口を挟んだ。
メノウはスリンを一瞥して続けた。
「当然彼はその事を知っていたわ。でも、魔女をかばわなかったら、自分の愛娘が罪に問われることがわかっていたとしたら、どうでしょうね」
スリンの顔色が変わった。
「それは、つまりお父様はわたくしをかばったということ?
一体なんのために……」
メノウは一瞬躊躇った。この子に事実を伝えてもいいものか。しかし躊躇いは一瞬、すぐに意を決して口を開く。
「あなたは知らないだろうけれど、あなたは、陛下と魔女の間の子。
あなたが産まれる一年ほど前から魔女宮の結界は弱まっていたわ。それに不審におもったあたしは魔女宮に勤めてる侍女に最近変わったことがないか確かめたの。
そうしたら、魔女は最近急に食事をとらなくなったと聞いたわ。人前に出なくなったともね。もちろん、あたしもそれだけでは魔女が身籠ったとは言えなかった。
でもね、あたしは怪しいとにらんでからほぼ毎日魔女に謁見を申し込んだのに、魔女は気分が優れないということで、許可されなかった。その後あたしは魔女の魔 力がなくなったことを感じたわ。その時にあたしは確信したの。魔女は淫らなことに手を出し、国民の信頼を裏切った悪女よ」
「それならば何故その時に言わなかった。お前なら出来ただろうに」
「ええ、出来たわ。でも、あたしはこの事が国民に分かってしまって混乱が起きる方が怖かった。
それに、陛下と魔女の子というものも見てみたかったし、ね」
そう言ってメノウはスリンに対して微笑んだ。
「いい子じゃない。
ともかく、あたしはあなたたちを傷つけるつもりはない。ただ、興味本位でもう一人の陛下の子を見たかっただけ。
でもね、スリン。これだけは覚悟しておいて。
もし、今の陛下の御子たちに何かあった場合、あたしがあなたを王位継承者に担ぎ出すからね」