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邂逅と暴露

「あの少女の事をどう思う、兄さん」

 テンパスは隣に座っているトラクタスに尋ねた。

「なかなかの娘じゃないか。しかも可愛い」

「この場合可愛いかどうかはともかく、彼女ならば我々を使えると思うかい」

「それは分からない。だが、彼女がこのまま成長すれば、あるいは」

「しばらく様子見か、残念。せっかく僕好みの女の子なのに」

 トラクタスはテンパスを軽く小突いた。

「馬鹿。それは今関係ないだろう」

 兄さん痛い、とぼやくテンパスを無視し、トラクタスはスリンを見下ろした。

 スリンの隣にいる女性。彼女もどこかで見たことがある気がしたのだが。

「気のせいか」

 不思議そうに自分を見上げる弟を黙殺し、トラクタスは飛び去った。

「待ってよ兄さん」

 兄を追ってテンパスも飛び去った。

 後には誰も残らない。




 メルーナー、ディオネと精霊達はムツィオに向かって歩いていた。

「捕まるかもしれないが、その時はあなたたちはスリンの元に行ってくれませんか」

 ディオネが精霊達に向かっていう。

「わかりました。必ずやあなたたちの危機をスリンに伝えましょう」

「どちらの危機かは分からぬが」

 口を挟んだのはジルフェ。

「それはどういうことですか、ジルフェ」

「あなたたちが捕獲者を苦しめるかもしれないという事ですよ」

 さらりと口にするのは、リグナム。

「それは、ない」

 メルーナーが断言した。スリンがとらわれている以上、決して抵抗はしない、と。

「わかりました。心しておきます。

 スリンは今王宮にいるようです。仲間が、スリンと連絡が取れないと言っていましたから」

「それは、スリンと契約したい精霊がいるということですか」

「さあ、わたくしにもわかりません」

「そうですか」

 精霊達は二人を置いて去っていった。

「あなたたちはどこへ行くのですか」

 二人の質問に風が答えた。

「スリンの元に」




「それは、ありえないわ」

 メノウに向かってスリンは言い放つ。

「それは、あってはならないことよ」

「しかし、陛下がそう仰せなのも事実なのです」

「どうして」

 スリンがそういいかけたとき、侍従が二人の元に駆け寄った。

「お待たせして申し訳ございません。陛下がお二人にお会いになるそうです。さあ、こちらへ」

 二人は導かれるまま、門の中に入っていった。

「多少窮屈かとは存じますが、これにお乗りになられませ」

 二人が乗り込むと、扉はひとりでにしまった。

「お二方は陛下にお会いになるんで?」

「はい」

「それじゃあ、出発しますぜ」

 車引きは、大きく息を吸い込み、走り出した。

「多少揺れるが、辛抱してくださいよ」

 そして、あっという間に王の住む宮にたどり着いた。

「さあ、ここですぜ。気をつけてお降りください」

「ありがとうございます」

 スリンは微笑んで車から降りた。それに目を白黒させた車引きに微笑んで、メノウもスリンに続き、扉の中に入っていった。

「スリン様、メノウ様、陛下がお待ちです」

 侍従は二人に向かって一つの扉を示した。

「スリン様、メノウ様がおつきになられました」

 そして、扉が開かれた。

「待っていた、スリン、そしてメノウ」

 二人は叩頭した。

「そうかしこまるでない、スリン。お前は我が娘。臣下ではないのだから」

「陛下がどうおっしゃろうと、わたくしのお父様はアリュナイン公爵ただ一人でございますわ」

 メノウは青ざめた。

「スリン様、そのような」

「よい、よい。そなたがそう思うのも無理もないことだ。わたしはお前を放っておいたのだからな、自らの罪を隠す為に」

「陛下、わたくしをチーアーになさったのは陛下でございます。それなのに今度は陛下ご自身の権力でわたくしをチーアーでなくそうとなさるのですか。それこそ国民の信をなくすおこないではありませんか」

「それは、違います、王女様」

 メノウは思わず口を挟んだ。

「陛下は万が一のことを想定されたのですよ。もし、陛下が崩御された場合、今の状態では、王位争いが勃発します。しかし、王女様がいらっしゃることによってそれを防ぐ事が出来るのです。

 たとえ、王女様が陛下の側室の子供でなくても」

「メノウ」

 王は上機嫌で頷いた。

「その通りだ。これは民の為でもあるのだ」

 二人に見つめられて、スリンは困ってしまった。

「わかりました。ですが、いくつか条件があります」

「条件、とは」

 スリンは一つ深呼吸をした。

「わたくしをチーアーに戻して下さい。わたくしがサー・チーアーとなった暁には王女としての勤めを果たしましょう」

 二人は刮目した。

「わたくしは今はチーアーです。あの二人とわたくしの精霊達がいればサー・チーアーになる可能性は皆無ではないでしょう」

 淡々と続けたスリンにはもはや少女の面影はほとんど残っていなかった。

「分かった。そなたの言う通りにしよう」

「陛下」

 とがめるようにメノウはそれをひきとめるものの、王ににらまれ、あわてて目をそらした。

「帰るがいい、そなたの仲間の元へ。わたしは後四年、そなたを待つことにしよう。

 しかし、この四年の間にもしわたしが空へ帰ったとき、そのときにはそなたが王となってくれ」

「分かりましたわ・・・・・・お父様」

 王ははっとした様子でスリンを見つめた。

「その旨を書いておく書物すぐにしたためるのだ。わたしの遺言状として」

「はっ」

 侍従が慌てて、王の元に羊皮紙を運んで来た。

「メノウ、ここに記してくれないか」

 メノウが指先を羊皮紙にかざすと何やら文字が浮かび上がって来た。それはひときわ大きく光って、羊皮紙にしっかりと焼き付いた。

「これでよし。これを保管しておくのだ」

「はっ」

 侍従は慌てて退室した。

「待て。スリンを送り届けるのだ」

「かしこまりました」

 侍従はスリンをつれて出て行った。

「ときに、メノウ。そなたは次代魔女となる。そのために、わたしは当代魔女の力が失われたことを示す。そのときにそなたもともにその催しに参加して、魔女の力が失われたという事を民衆に知らしめて欲しいのだ」



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