魔術の減衰
一方、山に単身入って行ったメルーナーは異変をすぐに感じ取っていた。
「スリン・・・」
しかしすぐにスリンにはオンディーヌがいると思い直し、さらに山奥に入って行く。
しばらく歩いたところで、ここら辺でいいか、とそのキノコを置いた。
「フラマ」
激しい炎が燃え立った。
しかしそれは森を焼くことなく、キノコだけを燃やしてゆく。
ちりちりと火の粉がメルーナーを照らし、森をなめていく。
やがて、全てのキノコが燃え尽くされ、火は静かに消えた。
「これでよし」
そして、メルーナーは帰ろうとして、どっちに行けばいいのか分からなくなってしまった。
「ウィアム」
魔術を使って見ても、道は見えてこない。
メルーナーは途方に暮れて立ち止まった。
その時遠くに水色の淡い光が見えた。
暗殺者を撃退した後、三人はメルーナーが帰ってくるまでにどこにいくのかをかんがえることにした。
「この街からは出た方がいいと思う」
ディオネがそういうと二人も同意した。
「ええ、ここにいるのはもういや。わたくしまで気分が暗くなるもの」
「それに、ここにいるのはなんか危険な気がしますしね」
しばらくたっても戻ってこないメルーナーを心配した三人はオンディーヌにメルーナー を探してもらうことにした。
「わたしはスリンをおいていくことはできません」
「それじゃあ、メルーナーに帰る道だけでも示してあげて」
「わかりました」
そうしてきらきらと輝く水色の帯を空に投げ上げたのだった。
水色の光を見たとき、なぜかメルーナーは直感的にこれはオンディーヌのものであると悟った。
その光はふわふわとメルーナーの周りを漂い、メルーナーを先導する。
メルーナーはその後についてかえる途中、ピリピリとした殺気を覚えた。
おもわず構えて立ち止まる。
しかし一瞬後、その殺気は途絶え、静かな森がたたずんでいるだけだった。
メルーナーがようやく山から出てきた時には既にあたりは真っ暗になり、星がまたたき始めていた。
「よかったあ、心配していたのよ」
スリンはメルーナーに飛びつかんばかりに喜んだ。
「あんまりスリンをしんぱいさせないでください」
オンディーヌに言われ、メルーナーらオンディーヌにお礼をしていないことに気がついた。
「はい、気をつけます。ありがとうございました」
「スリンは初めわたしにあなたを探しにいくように命じました。
しかしそれではスリンの命を守ることができなくなります。
あなたにはスリンがそう言うことは予想出来なかったのですか」
「もちろん、予想はしていました。ですが、あの森では魔術を、道を知る魔術をつかえませんでした」
「なんですって?それって・・・いいえ、あるはずがありません」
オンディーヌの顔色がかわった。
「それなら、キノコは燃やせなかったのか」
ディオネが口を挟んだ。
「キノコは燃やせた。その後は一切魔術が使えなかった」
「それならばいい」
「メルーナーさん。今、魔術を使えますか?」
オンディーヌに問われ、メルーナーは試しにつかってみた。
「ルクス」
眩い光が辺りを照らした。
メルーナーはあわててその光を消した。
あたりは再び闇に包まれた。
「どうやら使えるようです。制御できるかは分かりませんが」
「それならばいいのです。思い違いであればいい・・・」
オンディーヌの呟きは闇に溶けて消えて行った。




