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緊急事態なう 密室殺人事件編

作者: 岩滝 将大

……俺は悪くねぇ!こんな事を思い付かさせられただけで、アイデアの神様が毒電波を向けてきただけだ!

――――はい、著者の弁明でした。

一言で言えば、「魔が差した」。以上です。

 今、私――否、私たちは、非常に、ソレはもう非常にまずい状況下にある。

 端的に述べるなら、旅館・冬・密室殺人の3単語で充分すぎるほどに説明がつく。

 その何処がどうまずいのかと言われればソレはもう全部と答えるほかないのだが、ソレを差し置いて非常にと付けざるをえない状況だ。


 ――――*―――――*―――――


 ことの始まりから説明するならば、在る一人の男について説明しなければならないだろう。


 その男は、まるで小説から出てきたかのような男だった。

 都内に事務所を持ち、他人様のお悩みや不義やら失せ物探しにペットの捜索なんかを生業にする――所謂ところの探偵というやつであった。

 探偵としての腕前は、噂によると「都内で右に出るものは居ない」とか評されていたらしい。

 ――らしい、というのは、ぶっちゃけた話が私が無知に過ぎただけのことなのだが。


 ただ、彼はまた別の――もう一つの噂の方で、様々な業界で有名だった。

 ……どちらかと言うと、というか圧倒的に。

 その探偵は、とある理由から様々な業界から蛇蝎の如く忌み嫌われていた。

 ――テレビ局を訪れれば、機材が落下しアナウンサーが死亡し。

 ――旅行をしたなら、宿泊先で殺人事件が発生し。

 ――挙句、事件簿でも出版しないかと打診され出版社を訪れれば、社長が窓の外を紐なしバンジー。


 小説から出てきたかのような男。小説のジャンルは、勿論ミステリー。

 つまりは、コイツが出掛ければ必ず事件が発生し、風評被害やら何やらで窮地に立たされる。

 だから、ついたあだ名は「死神探偵」。曰く、コイツが訪れた先で殺された被害者の人数は、この半年だけで50に到達するとか。


 第一のまずい状況。ソレは、まずこのクソ死神探偵殿が、私の宿泊先に泊まっていたことだ。


 ――――*―――――*―――――


 何故私がそういう情報を知っているのかというと、まあ、そう言う業界の人間だからとしか言いようがない。

 この有名温泉街への宿泊も、業務の内であり、飯の種だ。


 そして、当然温泉にも入り、まったりとしていた所、ついうっかりうたた寝をしてしまい、気が付けば夕飯の時間。

 豪勢な夕飯に舌鼓を打ち、ふと外を見れば雪がちらつく。


 まあ、予想通りといえば予想通りだろう。

 第二のまずい状況。吹雪で陸の孤島。どうも電話線が切れたようで、電話も繋がらないそうだ。


 そして第三のまずい状況。こんな状況で、三文小説みたいな事が自然発生するアレがいる以上は予想していたことだが。


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 殺人事件である。


 ――――*―――――*―――――


 パニックも度を過ぎれば逆に冷静になるものらしく、全員が不気味なぐらいに落ち着いていた。

 大体が自分の身の安全を。そうでなくても、自分の潔白を表す方法を模索しているのではないだろうか。


 そんな、一回転して逆に冷静な思考の海におぼれていると、ふと怒鳴り声が聞こえた。

 どうも、第一発見者の、ちょっと背が低めの中居さんに、ある客が怒鳴りつけているようだ。


「あの有名な探偵さんがいるんだろ!?あいつは一体どうしたんだ!?」

「あの、その、あの部屋です」

「だからどのだよ!」

「あの、死体があった、あの部屋です」

「だったらその部屋ま……で……え?」

「あの部屋で、殺されてたの、探偵さん、なんです。間違い、ありません」


 そう。第四のまずい状況。



 探偵が、小説から出てきたようなあの男が、





【事件を解決する前から、すでにこの世から退場してしまっていた】ということだ。






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