006
私が言うと、カナメは押し黙った。
悲しげな顔をしている。
「分かった...。お前がどうなっても、俺は知らねぇ。勝手にやりな」
投げ槍に言うと、カナメは駆け出した。
最後まで、逃げて行く姿は見ない。
悪魔を見据えた。
「ガイアをよくもやったわね!」
怒りがMAXに込み上げてきた。
ガイアは大切な人だったから。
初めて、私を理解してくれた。
「何だ?人間の女か...」
臆することなく、私は悪魔の目の前まで、進み出る。
「今度は私が相手よ」
腰から剣を抜く。
それは、ガイアの剣とは違い、ほっそりとしていて、片手でも持つことが可能だ。
「また?こいつみたいになるぞ?」
悪魔は、ガイアの頭を思いっきり踏んだ。
グシャ
鈍い音がした。
人間の頭部を粉砕。
しかも、もうすでに息たえてしまった人間の。
「また、やった―」
怒りが更に膨らみ、喋ろうとしたが、相手の声にかき消された。
「弱い雑魚な人間は、倒しても暇潰しにすらならない」
雑魚?
悪魔はまだ言う。
「弱すぎて、生きてることに申し訳ないとか、思わない?もし僕が人間だったら、すぐ死ぬね!!」
挑発的だ。
自分が勝と考えているから。
でも、その考えは実にくだらない。
私にとっては。
「...あなた、自分が勝てると思ってるのね」
小さく溜め息。
「何だ?何が言いたいんだよ?」
「いや、今説明する必要はないわ。すぐに分かるから」
私はそれだけ言うと、意識を集中させた。
私にだって、余裕がある訳じゃない。
絶対に勝てる自信なんて、どこにも。
ただ、『あの技』を自信を持って使うには、それなりの集中力がないと無理。
「ハハ、どうしたの?さっきあれほどのこと言っておいて、まさか足がすくんで動けなくなっちゃったとか!?」
何も答えない。
集中集中。
「我混沌迷いてこの地に来たりし者を払う者なり。世界の秩序を守るため、今私に力を貸して下さいませ!」
言い間違えることなく、スラスラと言うことができた。
「こいつ頭可笑しくなってやんの!馬鹿だ、神様にお祈りなんて―」
あの悪魔が言っていた、効果が早速出てきた。
私の体を赤い、血のように赤い闘志が包む。
まるで、守ってくださってるかのよう。
「そんな口利いていられるのも、今のうちかもね!」
今度は私が挑発した。
闘志が私に力を与えてくれる。
これが私の力。
『ゴッド・アビリティ』
神に力をこうことにより、発動できる。
一見ダサいかもしれないけど、誰にでも使える能力じゃない。
神に愛されている、私だからこそ使いこなせる。
「それじゃあ、行くわよ!」
恐れる物なんて、今の私には何もなかった。