8 秘密基地 Side玲人 ②
事の発端は昨日の拯の一言からだ。
「秘密といえば?」
学校から帰っている途中、拯が突然質問してきた。
いきなり何を聞いてくるのかと思えば……。
「儀式」
ノリのいい結揮がゲームをしながら即座に答える。
同じではつまらないな。
「文章」
俺も本を読みながら間髪入れずに続けた。
さて、彰はどう出る?
「会合」
そうきたか。
ボールペンを指で回しながらの答えを聞き、感心する。
だが、どの答えも拯のお気に召さなかったようだ。
地団太を踏んで反論してきた。
「違うだろ!? もっとこう、わくわくするような響きの単語があるだろう?!」
ないな。
そう思ったのは俺だけではなかった。
結揮は首を傾げ、彰は唸っている。
二人とも心当たりがないようだ。
俺達が疑問と否定を示すと拯が喚き出した。
「だぁ~~~!! き・ち!! 基地だよ!! 秘密基地!!!」
……声がデカい。近所迷惑だ。
そもそも、秘密=基地という発想がよく分からない。
俺にはついていけない思考回路だ。
だが、ここで肯定しておかないとまた煩くなる。
「「「あぁ~」」」
考える事は三人とも同じで投げやりな声がハモる。
拯が興味あるふりしろだのなんだの嘆いているが、知るものか。
結揮が拯に突っ込んだ。
折角だから俺も言わせてもらおう。
「結揮と彰がどう思っているのかは知らないが、少なくとも俺は興味ない。ついでに言うと、お前のテンションが高いのはいつものことだ」
俺の後に彰が続き、三人でトドメの一言。
「「「哀れだな」」」
拯が文句を言ってくるが無視だ。
俺は本を読むのに忙しい。
このままでは俺達三人の雰囲気に流されてしまう、とでも考えたんだろう。
拯がツンデレになった。
……何故だ。謎すぎる。
拯のツンデレに俺達の声が一糸乱れず『……キモい』とハモったのは当然の結果だろう。
拯に慣れているはずの俺達でさえも無視出来ない程、それはそれはひどいものだったからな。
拯が調子に乗る前に冷ややかな視線で精神的にダメージを与えておく。
これで少しは大人しくなるだろう。
結揮がこちら側の気持ちを代弁し、俺達にふってくる。
「あぁ。聞くまでしつこく絡んでくるだろうしな」
結揮に俺と彰が同意したことで拯はへこんでいる。
が、俺達は気にしない。
いちいち気にしていたらこいつとはやっていけないからな。
どうせすぐに立ち直るだろう。
結揮もそれを分かっているから、さっさと話を進める。