5 秘密基地 Side拯 ⑤
以上、回想終了。
つまり今日が秘密基地へ行く日なため、さっきから険しい山道をひたすら歩いている訳だ。
そして、いくら歩いても目的地へ着かないため、冒頭の会話に至る。
カオスだ……。
何がかって?そりゃあ、今の俺達の状態がだ。
まずは俺の後ろにいる結揮。
比較的元気だが、なぁなぁしか言わなくなってきている。
次に結揮の後ろにいる彰。
普段からあまり喋らないというのに、今は全く喋らなくなってしまった。
そして俺。
疲労は許容量を超え、足が微かに震えている。
一度でも立ち止まったら、その場から絶対動けなくなる。
確信をもって断言出来る。
それなのに……。
おかしいだろ、玲人!!
何でお前は普段と変わらないんだよ?!
俺達三人とも汗だくになっているのに、玲人は汗をひとつもかいていないとかどうなってんだ!?
しかも先頭を歩いてるし!
お前、興味なかったはずだよな?!
このままだと、最初に玲人が秘密基地へ着くんだが!!
いや、俺達の中で一番余裕があるからだってのは分かるんだぞ?
分かるんだが……。
なんか納得いかねぇ。
俺が見つけたんだぞ?
普通は見つけた奴が他の奴らを案内するために、先頭を歩くんじゃないのか?
秘密基地までは一本道だから、ぶっちゃけ案内とか要らないんだが。
……やっぱり納得出来ん。
「……ん?拯、あれか?」
俺の気持ちを知らずに聞いてくる玲人。
……まぁ、いいけどさ。玲人だし。
先頭を歩くのは譲るよ。
これが結揮だったら許さないけど。彰はそんなことしないしな。
必ず俺達の殿だ。
「そうだ。彰、結揮、着いたぞ。……ここが俺達の秘密基地だ!!」
玲人に応え、改めて秘密基地を眺める。
……やっと、玲人達と来れた。
感慨深いな。
「突っ立ってないで早く入ろうぜ!」
「そうだな……」
「拯。ここからはお前が先に行け」
結揮と彰の声に押され、三人より一歩前に出る。
玲人の何気ない気配りが嬉しく、思わず笑みがこぼれる。
……玲人のこういうところが好きなんだよな。
女は勿論だが、男にも惚れられる理由が分かる。
細かな気配りができ、こちらの顔を立ててくれる。
男らしいし、喧嘩となれば敵う者がおらず強い。
冷たい態度とは裏腹に義理堅いし。
まぁ、玲人だけじゃなくて彰も結揮もいい奴なんだけどな。
「分かった。行くぞ!!」
「「「おう」」」
気合いを入れて、俺達は秘密基地へと入っていった。