17 秘密基地 Side彰 ⑤
そして今日、自分達は秘密基地へ向かっている。
思っていたよりも険しい山道を、ただひたすら歩いていく。
……こんなに険しい道だと思わなかった。恨むぞ、拯。
最初のうちは、なかなか目的地に着かない不満を言い合っていた。
不毛だと分かってはいたが、言わずにはいられなかった。
だが今は……カオスだ。
自分は「歩き疲れた……」「疲れた……」「……」「………」などと言っていたが、今は喋る気力が全くない。
なぁなぁしか言わなくなってしまった結揮の後ろで、完全に黙り込んでいる。
結揮の前にいる拯は逆ギレしていたようだが、そんな事に構っていられるほどの余裕はない。
拯の前にいる玲人は会話を適当に流すため、自分に同調していただけだ。
それよりも……絶対に玲人はおかしい。
自分達は既に一時間近く歩いている。
拯・結揮・自分は汗だくになり、前進するのがやっとだ。
拯に至っては、疲労が許容量を超えて足が震えている。
しかし玲人は汗をひとつもかいておらず、表情も普段と全く変わらない。
身体の構造はどうなっている?
……まぁ、『玲人だから』という理由で納得出来てしまうが。
秘密基地に興味のない玲人が、自然と先頭を歩く事になる。
自分達の中で一番余裕があるのだから当然だ。
その事に納得がいかないのか、拯は少し不機嫌になっている。
玲人も分かっていたようで、空気を変えるために拯へ確認する。
「そうだ。彰、結揮、着いたぞ。……ここが俺達の秘密基地だ!!」
玲人に答えた拯は、感慨深そうに秘密基地を眺めている。
早く入りたくてうずうずしている結揮に、自分も同意する。
「そうだな……」
更に玲人も、拯の背中を押すように声を掛ける。
流石は玲人。
拯に主導権をさりげなく渡したな。
拯もそれに気付いているのだろう。
笑みを浮かべながら自分達の前に出て、大きく息を吸い込む。
そして自分自身をも鼓舞するかのように、力強い声を上げる。
「分かった。行くぞ!!」
自分達三人は、それに声を揃えて応えた。
「「「おう」」」