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強者どもは四人いる  作者: 麟凰
序章
16/18

16 秘密基地 Side彰 ④

さっさと話をさせるためだろう、玲人は拯に命令している。

拯は……涙目だ。

その状態のまま、震える声で話し始めた。

拯は前々から、自分達四人だけの拠点=秘密基地が欲しかったらしい。

玲人は腕を組み、顎に手をあてて拯の話を聞いている。


……カッコイイ。

そのポーズは反則だぞ、玲人。

拯もそう思っているのか、玲人に熱い視線を送っている。

当然その視線は無視されているが、めげずに話し続けている。

拯には『秘密基地は山にあるものだ』という考えがあったため、頑張って探していたらしい。

ここ最近、何やらこそこそしているなと思ってはいた。

だがまさか、秘密基地を探していたとは……。

相変わらず、面白い行動をする人だ。

それは今もそうだが。


玲人の威圧に影響を受け、報告口調になったり敬礼をするのは拯ぐらいだ。

他の人ではそうはいかない。

玲人に威圧されたら、大概の人は何も喋れなくなる。身じろぎすらも出来なくなる。

拯は違う。

喋る事も動く事も出来る。

何より、玲人の眼を真っ直ぐ見つめる事が出来る。

拯のそういうところに敵わないと思ってしまう。

やはり拯は凄い。

玲人の隣に居られるのは、拯だけなのかもしれないな……。


改めてそう考えていると、結揮が自分達の気持ちを代表で言ってくれた。

結揮の言う通りだ。

しかし自分の中では、四人で何かするのが楽しいから手伝うというのが大きい。


――玲人が拯に対して、特別な感情を持っているのは知っている。

文句や愚痴を言いながらも、それらが本心からのものではない事を知っている。

本人()には知られないように、拯を全力で援護しているのを知っている。

どんな時も拯の事を一番に考え、行動しているのを知っている。

拯が拯らしくいられる為なら、どんな事でもする覚悟があるのを知っている。

玲人は拯に救われたからそうするのだろう。

だが、自分は違う。

自分は玲人に救われた。

玲人が拯の力になろうとするように、自分は玲人の力になりたい。


自分の決意を再確認していると、拯一人で秘密基地を探していた理由が判明した。

自分達を驚かせるためだったらしい。

……無理だろう。

拯が何かを隠していると、態度に出るからすぐ分かる。

現に結揮と自分は、『拯が何かやっている』と大分前から気付いていた。

玲人は論外だ。

あの人は興味すらないだろう。


拯の嘆きを聞き流す。

放っておいても問題はない。

結揮の見事なスルーは流石だな。

口には出さないが、玲人も同じ事を思っているようだ。

嘆きを無視された拯は複雑な顔をしていたが、渋々ながら結揮の質問に答える。


拯によると、秘密基地は山の奥の方にあるらしい。

洞窟になっており、結構広いとか。

山とは、自分達の学校の裏側にある山を指す。

熊などが出て危険なため、出入りが禁止されている。

まぁ、自分達はそれを無視してよく入り浸っているが。


秘密基地、か……。

一日で行ける距離なら、今からでも行ってみたいな。



「片道は、どのくらいかかるんだ……?」



気になって拯に聞いてみると、一時間半はかかると言われた。

往復では三時間。今から行ったら、歩いている途中で暗くなってしまう。



「夜は危険だからな……」



結揮の意見に同意しつつも残念でならない。

落ち込んでいる自分と結揮を見て、気になったのか玲人が聞いてきた。

拯も身を乗り出してくる。

前とは様子が全く違うから当然か。

結揮が玲人と拯に答えながら、秘密基地について力説している。

鼻息を荒くするほどの熱意はないが、結揮に共感出来る部分ならある。



「するな……」



結揮の言葉に頷く。

自分達の答えに相槌を打っただけの玲人を見て、拯は何か思うところがあったようだ。

明日、四人で秘密基地へ行かないかと誘ってきた。

玲人に興味を持たせようとしているのだろう。

そんな拯の思惑に気付いているのかいないのか、結揮が真っ先に賛成する。



「賛成だな……」



自分も結揮に続く。

後は玲人次第だ。

恐る恐る聞く拯に、玲人は仕方ないといった表情で返事をする。

玲人の唇の左端が少し吊り上がって見えるのは、決して自分の見間違えではない。



「「「了解」」」



自分達は玲人の言葉に、声を合わせて答えた。

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