14 秘密基地 Side彰 ②
「秘密といえば?」
拯のこの一言が全ての始まりだった。
「儀式」
「文章」
「会合」
結揮と玲人に合わせて自分も答える。
下校中の自分達は、夕日に照らされながら道路を歩いていた。
拯は自分達の答えが気に食わなかったようで、激しく地団太を踏む。
「違うだろ!?もっとこう、わくわくするような響きの単語があるだろう?!」
あっただろうか?自問自答してみる。
「……ない」
自分だけではなく、三人とも『ない』という結論に達した。
「だぁ~~~!!き・ち!!基地だよ!!秘密基地!!!」
自分達の否定を聞いた拯は、大きな声で騒ぎ出す。
……五月蝿い。
大体、どうしたら秘密→基地という発想になるのだろう?
全然分からないが、肯定しておかないとまた五月蝿くなるな。
「「「あぁ~」」」
皆考える事は同じだ。
自分達の投げやりな返事に、拯が何やらブツブツ言い始めた。
……全部聞こえているぞ。
すかさず結揮がツッコミを入れ、玲人は拯の呟きをバッサリと切り捨てる。
「自覚がないのか……」
自分も一言付け加え、仕上げに三人でトドメを刺す。
「「「哀れだな」」」
それを聞いた拯は文句を言ってくる。
まぁ、無理もない。
自分達はここまで、拯の方をちらとも見ずに会話してきたからな。拯は寂しいのだろう。
しかし、自分達は敢えて無視をする。
相手にしすぎると、拯は調子に乗るからだ。
結揮はひたすらゲームをしているし、玲人は文庫本を読んでいる。
自分は新しい技を習得すべく、ボールペンを指で回している。
それにしても二人は凄い。
結揮の指は霞んで見えるほど高速で動き、玲人は難しい単語が出てくる本をスラスラと読んでいる。
自分も新技の『五回転大車輪』を完成させ、二人に負けないようにしなければ。
そう思い黙々と練習していると、血迷った拯がいきなりツンデレになった。
……何をやっているんだ、拯?
『……キモい』
自分達の声がピッタリ重なったのは必然だろう。
手を止め、邪魔をした拯を冷ややかに見る。
玲人の視線に至っては、氷点下五十度くらいある。
玲人は結揮の言葉に、仕方ないといった様子で同意する。
「まったくだ……」
自分も玲人の言葉に賛成した。