11 秘密基地 Side玲人 ⑤
そして今日。
俺達は秘密基地へ向かって険しい山道をひたすら歩いている。
歩き始めてもうすぐ一時間が経とうとしているが、俺はまだまだ余裕だ。
そう、俺だけは。
最初のうち、拯達はなかなか目的地に着かない不満を不毛な会話で晴らしていた。
俺はそれを「右に同じく」「同感」「……」「逆ギレか」と適当に流していたんだが……。
今はカオスだ。
拯の後ろを歩いている結揮は『なぁなぁ』が口癖になりつつある。
結揮の後ろにいる彰は普段より輪をかけて無口になっている。
俺の後ろを歩いている拯は足が微かに震えている。
対する俺は余裕だ。拯達三人が汗だくになっていても俺は汗すらかいていない。
拯達の眼が『玲人はおかしい!!』と言っているが、俺からしたらお前達の方がおかしい。
普通このくらい何でもないだろうに。
拯達がおかしい所為で、秘密基地に興味がない俺が先頭を歩かざるを得ない。
このままでは拯よりも先に秘密基地へ着いてしまう。
その事に拯は納得がいかないだろうし、何より俺が納得出来ない。
俺としては見つけた拯に案内してもらいたいと思っているからな。
例え案内がいらない一本道であったとしてもだ。
拯に主導権を渡す方法を考えているうちに行き止まりに突き当たった。
「……ん?拯、あれか?」
一応拯に確認してみる。
拯は感慨深そうに肯定した。
「そうだ。彰、結揮、着いたぞ。……ここが俺達の秘密基地だ!!」
此処が目的地か。
左隣で拯が嬉しそうに秘密基地を眺めている。
……拯のこんな表情が見れただけでも来た甲斐はあるな。
「拯。ここからはお前が先に行け」
結揮と彰の発言に追従し、主導権を渡すべく俺も言葉で拯の背中を押す。
何を思っているのか、拯は笑みを浮かべながら一歩前に出る。
そして大きく息を吸い込み、気合いを入れるかのように声を上げる。
「分かった。行くぞ!!」
俺達三人はそれに声を揃えて応えた。
「「「おう」」」