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第3話 飛べない竜は唯のトカゲだ

この物語の主人公は竜です。苦手な方は戻るボタンを(ry

 嘗て無いほどの|真剣≪マジ≫睨めっこ、両者とも微動だにしないまま時間だけが過ぎていった……。

 




 ――くっ、どうすれば、どうすればいいんだ。

 女の子は相変わらず凄い顔で睨んでくるし、頼みの綱である髭は居なくなるし。

 言葉は理解できないし!

 俺今竜だし!!



 もう、お手上げですよ。 

 なしてこの世界に生まれてすぐ、こんな修羅場に遭遇しなきゃならんのか。

 神様、俺なんかした?

 ……ちなみに、あの髭のことじゃないから、奴は唯の助平だから。


 


 なんてことを考えている間にも、女の子の表情は険しさを増していく。

 

 (ああ、そんなに皺をよせたらダメじゃないか! まだ若いのに、お婆ちゃんになりたくはないでしょ?)


 そんな俺の願いが届くはずもなく、顔の皺はさらに深くなる一方。

 

 考えろ、空ちゃん(髪が空色だから)はいったい俺にどうしてほしいのか。

 あ、怖いからどこかへ飛んでいってほしい、は無しの方向で。

 さっきも言ったがこの状況で置いていくなんて非人道的すぎる。

 そこ、人間じゃないだろ、とか言わない!


 ふと思ったんだが、空ちゃんはホントに怯えているのだろうか?

 外見からして十二歳くらいの小さな女の子が、怖いお兄さんを前にしてこんな態度をとることが出来ると思うかい?

 普通、ただ怖がっているだけなら相手を睨む、なんてことはできないと思う。

 俺だったら睨むなんてことはしないでガタガタ震えながら泣きじゃくるだろうね。

 それに加えて、今空ちゃんの前にいるのは怖いお兄さんの何十倍も怖い竜君だ。

 ……下手したら食べられちゃうかもしれないんだぞ?


 じゃあどうして俺を睨んでいるのか。

 顔からは怒気しか読み取れない。 

 じゃあどうして怒っているのか。

 怒らせるようなことをした覚えはない。

 ならばなぜ、現在進行形で顔の凄味が増しているのか。


(ん? 現在進行形?)

 

 疑問に思い、状況を再び整理することに。

 

 ――俺の体は相変わらずの銀色ボディ、ここに原因はないだろう。

 そして視線を空ちゃんに移したところで、俺はあることに気がつく。


(待て。空ちゃんの今の体勢、既視感を感じるぞ)

 

 もう一度、今度はじっくりと空ちゃんを見る。

 両足をくの字に曲げて座り込み、左足首を片方の手で押さえながらの涙目&鋭い視線。

 俺はこれと同じような場面をどこかで見た覚えがする。

 ――そう、あれは確か友達から回ってきた人生初めてのギャルゲーをプレイした時のこと。

 

 未知なる世界へと足を踏み入れ、興奮しまくってた俺が最初に出会った茶髪の女の子。

 俺(主人公)が通う学校への道の途中、右の角から急に飛び出してきたその茶髪っ子とぶつかって怪我をさせてしまうという、今思えばちょっとアレな出会い。

 その時あの子は今の空ちゃんと同じ体勢でなんて言った?

 俺は覚えている。

 当時ギャルゲーなんか絶対やらないと決めていた俺を、一瞬でピンク色の世界の住人にしてしまったあの言葉。

 それは……!

 

「ちょっと あんたの所為で怪我したんだから、責任取りなさいよね!」 

  

 茶髪っ子と空ちゃんの表情がだぶる。  

 俺の頭上に稲妻が走った気がした。


(――つ、ツンデレっ子だったのか!!!)


 どうして俺はこんな簡単なことに気付けなかった?

 空ちゃんは俺に助け起こされるのを待っていた。

 なのにいつまでも行動に出ない俺に腹が立ってきたのだろう、あの凄い顔にはそんなわけがあったのだ。

 そしてさっきの叫び声、あれは多分そういうことなのだろう。

 男としてまだまだ修行が足りんな、そう自分を叱りつけながら両腕で空ちゃんを抱え上げる。


「   !」


 短い悲鳴を上げたが、それ以降の抵抗は皆無。

 拒絶する様子もなく、唯眉間に皺を寄せて泣きそうな顔をしている。

 

(きっと――もっと早く行動しなさいよね、ばか――みたいな、そんな乙女心なんだろう。

 御免よ、今まで待たせてちまって。あとは俺に任せとけっ)


 自分の考えが間違いでなかったと確信すると、俺は格好よく翼を空に掲げて飛び立った。

 

 ――が、ここで問題が生じる。

 俺は元人間。

 当たり前だが空を飛ぶ練習なんてしたことがない。

 そんな俺が上手く飛べるはずがないのだ。

 まあビギナーズラックなんてものもあるけど、今回ばかりは通用しないだろう。

 

 ここまで言えば、このあとの俺たちがどうなるかなんて誰にでも予想できるはず。

 



「            !」

「アアァァァァァァァァァァ!」


 ――というわけで、絶賛落下中な俺たちでした。


 そしてここでも問題が発生する。

 恐怖のあまり思いっきり喉を使って叫んでしまったのだが、今の俺の悲鳴はハウンドボイス。

 それを耳元で聞かされた日には軽く昇天すること間違いなし。

 

 そう、腕の中にいる空ちゃんだがすでに意識がない。 

 

(ゴメンナサイ御免なさいごめんなさいでもその前に、誰か助けてください!) 


 必死になって翼を上下に振り、頭の中で祈り続けた。

 それでも祈りは神に届かず、ただ地面が迫るのみ。

 飛ぶのは無理だと判断し、自分の背を盾になんとか空ちゃんだけは守ろうとする。


(俺ちょっとカッコよくない?)


 最後にそんなどうでもいいことを呟き、俺たちの体は雪の中へと消えていった。


今回は短め。ホントはこの話も第2話だったんですが、予定変更で。

修正加えました、スイマセン

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