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僕の親友~黒板とチョークたち~

作者: 太陽月星
掲載日:2026/04/06

#1


  学校から帰ってきて、夕食までの時間はリビングで大好きな漫画の絵を模写するのが楽しみになっていた。


 今日も絵を描いていると、父さんが会社から帰ってきた。


「おい、清。絵ばかり描いてないでテスト勉強しなさい!! 今度も下から3番目の順位だったら、もう絵画教室は辞めさせるからな!!」


 父さんの脅迫はいつものことだけど、勉強が苦手な僕には絵しか楽しみがないんだ。


 これくらいは許せって思う。


「いい学校に入って、いい会社に入らないと、ろくな人生を送らないからな!!」


「あなた。絵画教室は清の唯一の趣味なのよ。。そんなこと言わないであげて」


「大体、お前が甘やかすから、勉強しないんだぞ」


 また、、夫婦喧嘩が始まり、僕は自分の部屋に逃げ込んだ。


 どうしても勉強のやる気が起きない。あまりに苦痛だ。


中学校にいつものように登校していた。


 たまには気分転換に違うルートから学校に向かっていると、、


 狭い交差点に差し掛かった時に、猛スピードで車が曲がってきた。


 僕は素早く避けたおかげで接触しないで済んだが、近くを歩いていたおじいさんがその車に轢かれてしまった。


 勢いよく壁に跳ね飛ばされてしまったおじいさんの元に駆け寄り、必死に声をかけた。


「ああ、、なんてことだ。おじいさん!! 今、救急車を呼びますからね!!」


 おじいさんは浅く反応していた。息はあるようだ。だが、さっきの衝突の勢いからどこか骨折はしているだろう。出血はしてないのが幸いだった。


 しかし、、携帯電話なんて持ってないし。どうしようかパニックになっていた。


 仕方なしにすぐ近くの家に飛び込み、、救急車を呼んでもらうことにした。


 おじいさんが心配になり、今日は学校で期末テストがあるというのに、その場から離れられなかった。


 「ありが……と…う」


 おじいさんから聞こえたかすかな声。


 今日は期末テストだけど、、人命が第一だと思い、、その場に最後まで残ることにした。


 救急車と警察パトカーまで来て、おじいさんは救急車に運ばれて、僕は事故の第一目撃者として、パトカーで警察署に連れていかれた。


 今度、、期末テストが失敗だったら、大好きな絵画教室を辞めさせられるとわかっていたが、どうせ、期末テストを受けていても最下位に近い順位だっただろう。なら、受けないで人を助けたほうがまだマシだと思った。


 警察署で事故の目撃情報を提供し、、現場の実況見分にも付き合い、、昼過ぎにやっと解放された。ちょうどテストが終わった頃だろうな。


 警察署から僕の親と学校には連絡してくれたみたいだった。


 学校には行かずにそのまま家へと帰っていいことになった。


 玄関から家に入ると、、ものすごい勢いで母さんがすっ飛んできた。


「清、、偉いわね!!!! さすが私の子だわ!! 期末テストは受けられなかったけれど、お父さんはきっと怒らないわよ!!」


「いや、父さんは怒り狂うと思うよ。他人の心配している暇があるなら自分の心配しろってね」


 僕は諦めにも似たような気持ちだった。


 シャワーを浴びて、自分の部屋で、疲れた体を休めるために布団で横になった。


「辞めたくないよ。絵画教室……でも、、僕は正しいことをしたんだ……悔いはない」


  


 #2


 おじいさんが交通事故に遭って翌日、、僕は学校にいた。


 給食の時間になり、今日は好きな人とペアになり、、席を自由に動かしていいことになった。


 僕とペアを組んでくれる人は一人もいない。仕方なく、、独りぼっちで給食を食べることに。


 周囲の視線が痛い。本当に苦痛な時間だった。


 「よお!!!! オカマ君は今日も独りぼっちか??」


 ガキ大将の増田裕助は僕を「オカマ君」と呼び、、いじめてくる。


 たぶん、、僕が紫の長髪で肌が普通の人より白いことや、気が小さく、無口で控えめな性格だからだろう。


 普通なら喧嘩になって言い返したりするんだろうけど、僕は無難な道ばかり選び、何も抵抗せずに泣き寝入りしているから、舐められているのかもしれない。


 嫌な気分だった。給食も美味しくない。


 一人でも「親友」と呼べる人がいれば、、給食の時間は天国に変わるだろう。


 僕はただ単に「親友」が欲しかった。アニメや漫画でも主人公には必ず親友がいる。


 独りぼっちの給食ほど残酷なことはない。


 「ううう、うううう」


 僕はみんなに気づかれないような涙を流し始めた。


 静かに泣いていると、、担任の先生がまた余計な一言を言った。


「みんなも新谷君に声かけて一緒に給食を食べてあげなさい」


 僕と食べたい人なんて一人もいない。迷惑がられるだけなのに。


 僕が一人孤独でいることが目立ってしまうだけじゃないか。 何も言わなければよかったのに。 そんな感情になった。


 こんな受け身な姿勢だから僕は友達が、親友が一人もできないのかもしれない。


 自分から積極的に動かなければいつまで経っても友達はできない。


 よし、、ここは一発勝負に出よう!!


 僕はドキドキしながら机と椅子をよりによってガキ大将の増田裕助のいる5人グループのところに移動した。


「よろしく!!!! いじめっ子のガキ大将!!!!」


と僕は発言してしまった。それも威勢よく、勢いよく。


 いつもと違う行動をした僕は、、心臓が張り裂けそうなくらい緊張していたが、何もしないでいつものように無行動でいるよりは全然マシだと思った。


「オカマ君と食べたい人~~??」


 ガキ大将がグループの奴らに聞いた。


 みんな無口で気まずい時間が流れた。


「俺は嫌だなーー!! 無口でいじられても反応すらしない奴は面白くないし!!!!」


 こうして、、みんな席を動かして、、僕だけを取り残して、、違う場所で給食を食べ始めた。


 担任の先生はそれをずっと見ていた。


 担任の宮澤香先生は清潔感のある美人で黒い服ばかり着ている人だ。


 宮澤先生は僕に近づいてきてこう言った。


「これからは先生と一緒に食べましょう。こんな美人な私と給食が食べられるなんて、、このクラス一番の幸せ者よ」


 「あっ、、はい」


 僕の気まずい独りぼっちの給食から、、先生と食べるという更に悲しくなる状況になり、、先生の好意に明らかに作り笑顔で対応して、、給食を食べた。


 #3


 交通事故を目撃する前日に、、「願いの木」という観光名所に行ってきた。


 そこに「親友が欲しい。誰でも何でもいい。僕の孤独を癒す親友をください」と短冊に書いて、、飾ってきた。


 みんなの願いの短冊でいっぱいだった。


 まあ、、たぶん、、ただのおまじないだろうから、、期待はしてないけど。


 


 先生と給食を食べてから、、放課後に勉強が苦手な僕に居残りでわからないところを個別授業してくれることになった。


 宮澤香先生に「次回の期末テストで悪い順位だったら、、大好きな絵画教室に行けなくなっちゃうんです。どうか、、勉強を教えてください。助けてください」


 と、頼んだからだ。


 何かアクションを起こさなければ。能動的にならなければ。待っているだけじゃだめだ。受け身じゃダメだ。


 先生に個別授業を頼むのは気が引けたが、、断られてもいいと思った。


ちゃんと行動を起こし、、先生に頼んだことが大事なんだ。


 


 放課後、、誰もいない、誰も来ない、今は使われてない教室で、、先生に数学を一から教えてもらった。


 難しかったが、、教えてもらっているときは問題を解けた。だが、一人になると、途端に問題が解けなくなる。


 夕方の6時40分まで数学の勉強を教えてもらって、、帰ることになった。


 とにかく勉強のために帰りが遅くなったといえば、、父さんも怒るどころか逆に喜んでくれるだろうと思った。根っからの学歴オタクだからだ。


 勉強を熱心にしていれば、、機嫌が良いのだ。  僕が絵が好きなので、、勉強を疎かにしているのが気に食わないだけで。


「新谷君。帰りましょう。電気消して」


「あっ、、黒板消すの忘れてます。僕が消してから帰ります。先生、お先にどうぞ」


「いいえ、、生徒を置いていくことはできませんよ。黒板を消すのを私も手伝いましょう」


「本当に大丈夫です!!」


「なにかしようとしているの??」


「いいえ、、何も……」


「私にはお見通しよ。黒板アートの練習をしようとしているんでしょ??」


「バレちゃってましたか??」


「あなたが絵が得意で、、黒板アートの大会パンフレットをいつも眺めていたから、、多分とは思ったのよね」


「1時間だけよ」


「ありがとうございます!!」


 こうして、、僕は10か月後に開催される黒板アート大会の絵の練習をすることにした。


 


 #4


 


 黒板に書かれていた宮澤香先生との個別授業で使った数式や公式の数々を丁寧に黒板消しで消した。


 さあ、黒板にチョークで絵を描く。


 今まで使っていた筆やペンとは全然違うチョークだから、、練習は必要だ。


 「んん??」


 今、、チョークが一瞬動いたような……。


 バカな。あり得ないことを。似合わない勉強して目が疲れているだけだ。


 黒板に絵を描いていると、、


「ドッ!! ドッ!!」


 黒板のチョーク置きのチョークが地面に落ちたみたいだ。


 「えっ?? しっかりと置いてあったはず。なんで落ちたんだ??」


 2回目の不思議な感覚。


 地面に落ちたチョークを拾わずに、、絵を描いていると衝撃の出来事が!!


「拾って!! 拾って!!」


 チョークから声がした。確かにした。


 この教室には僕一人しかいない。


 3度目の不思議。


 僕は怖くなり、、教室から逃げ出そうと入り口にダッシュすると、、


「待ってーー!!!!」


 今度は大きな声で聞こえた。


 チョークの場所からだ。


「だ、だ、誰だ!!!! いたずらをしているのは!!」


 ヒョコ!!


 なんとチョークが動き始めた。


 言葉が出なかった……あまりのあり得ない出来事に。。


「うそ???? 嘘だ」


「嘘じゃないよ。僕たちは動けるんだ!!」


 本当に驚くと大声よりも沈黙になるのかもしれない。


 僕は叫ぶこともなかった。


 夢の世界にいるのだろうと思った。


 漫画やアニメの世界で非日常の世界に憧れていて、ある意味、慣れていたから、、あり得ないことへの耐性がついていた。


「驚かしてごめんね!! 僕たちは話すことができるんだ!!!! この黒板もね」


「えっ??」


「清くん。こんにちは」


 今度は黒板から挨拶が聞こえてきた。


 顔や手足はないが、、しっかりと声を出している。それに、チョークは宙を浮くような感じで動いてる。


 こうして、、僕と黒板とチョークたちの日々が始まった。


 


 #5


放課後の教室で、、担任の宮澤香先生には、、「どうしても一人で勉強したいです」と強く頼み、、しゃべる黒板とチョークのことは秘密にしておいた。


 僕は先生の代わりに黒板くんとチョークくんに勉強を教えてもらっていた。


 チョークが動きながら、、僕に解説して、大事な要点のまとめを黒板くんに書いてくれる。


 先生には悪いが、黒板くんとチョークくんの教え方が僕に最適で、、どんどん苦手な勉強が好きになっていった。


 「知ること」ってこんなに面白いことなんだ。


 知識を得ることの喜びを人生で初めて知った。


 5教科のテスト範囲もすべて、、1か月で内容をかなり理解できてしまった。


 自分でも驚いている。苦手な勉強がこんなに楽しいとは。こんなにできるようになるとは。


 チョークくんが黒板に書きながら、、その書かれた黒板くんが説明してくれる。


 最高にわかりやすい。


 夕方の7時まで、、一日3時間くらいの放課後の楽園教室だ。


 宮澤香先生が夕方の7時に下校のために迎えにくると、、黒板とチョークは声と動きを止めて、、正体をバラさないようにしていた。


「なんで君たちは話せるの?? 人間の言葉を話すことができるの?? 科学に反していて、、未だに夢の中にいるような、、現実じゃないような異世界にいるかのようだよ」


「だって、、僕たちは神様に魂をもらったからだよ。君たち人間にバレないように、、人間の見てないところで、、話したり、、動いたりしているんだよ。でも、、清くんには正体を明かしたんだ」


 チョークくんは人間にバレないように動いたりしていたらしい。


「なんで僕に正体を明かしたりしたの??」


「僕たちは人間の心や記憶を知ることができるんだ。君はいつも独りぼっちで寂しそうだったし、友達が欲しかったらしいからね。それに、優しい君にならば、、正体をバラしてもいいかなって」


 驚いた。


 もう、、なんでもありだ。


 でも、今、僕は黒板くんとチョークくんという「親友」を手に入れることができた。


 嬉しかった。


 この1か月間は、、毎日、、誰もいない、誰も来ない予備教室で黒板とチョークと楽しく勉強できた。


 親友がいることがこんなにも嬉しいことだとは思わなかった。


「いつまで一緒にいられるかな?? 僕が来年卒業したら、、もう会えないんだよね??」


「僕たちは君が卒業したら、、一旦、魂が天国へ帰るんだ」


「えっ?? そうなの?? 天国に??」


「僕たちは人間に生まれるための練習に来ているんだよ」


 #6


 放課後、、予備教室にいつものように黒板とチョークに会いに行くと、、


 なんと、、チョークが粉々に割れていて、、黒板が水浸しになっているじゃないか。


「あーーーーーーーー!! そんな……」


 誰がやったんだよ。


 絶対に許さない!!


「やあ、、清。僕だ。黒板だ。これをやったのは増田裕助くんだよ。君が最近、楽しそうにしているから後をつけていたらしい。でも、、僕は大丈夫だけど、、チョークくんは魂が壊れて、、天国に帰ってしまったみたいだ」


「あのヤロー!! 今度こそ絶対に許さない!!」


 僕は増田裕助の元へと向かった。


 ガキ大将の増田裕助はバスケット部に入っている長身で体力のある男だ。


 タイマンでは勝てない。


 でも、、武器を使えば、、もしかしたら……


 ここまでされて黙ってられるか。


 だが、一瞬、立ち止まって考えた。


 「なんか気まずいし、、怖い。反撃か。気が引ける。このまま何もせずにまた我慢すればいいんじゃないか……両方傷つくかもしれない喧嘩なんてなるべくしないほうがいいのではないだろうか……」


 僕は葛藤していた。


 怒りでどうしようもない感情と、、喧嘩したらお互いが損するだけじゃないだろうかという怖さ。


 だが、、今まで「オカマ君」と言われ、、給食も一人で食べていた情景を思い出した。


 何より、、あれだけ僕と一緒に楽しい時間を過ごしたチョークくんが犠牲になったんだ。


 あいつを傷つけてやりたい。後悔させてやりたい!!


 少しでも痛い目に遭わせたい!!


 僕はやはり、、あいつと対峙することにした。


 ここで逃げたらダメだろ。


 逃げちゃいけないんだ。


 今こそ、、戦う時なんだ!!


 体育館に行くと、、バスケットボールをやっている増田がいた。


「おい!!!! 増田裕助!!!! ちょっと来い!!」


 体育館の裏で大きな増田と二人きりになった。


「なんだ?? オカマ君か。何怒ってんだよ。アハハハハ」


「言わなくてもわかってんだろ?? お前、僕の使っている黒板とチョークをよくも、、よくも!!!!」


 僕は増田に飛び掛かった。


 結局、、武器は卑怯だから素手で喧嘩しようと思った。


 増田の顔を思い切りぶん殴ろうとしても、、腕で防がれ、、逆に一発、、大きなパンチを頬に食らってしまった。


「グハッ!!」


 でも、、僕は怒りを通り越していて、、痛みを感じる余裕すらなかった。


「お前のことは、、いつも気に食わなかったんだよーー!!」


 一発、増田の腹に僕のパンチが命中した。渾身のパンチだったが、、増田は少し苦い顔しただけで、すぐに反撃してきて、僕は髪の毛を掴まれ、強烈なビンタを食らった。


「死ね!! 死ね!! お前なんて死んでしまえ!!」


 僕は今までの鬱憤をすべて込めて増田に反撃していった。


「ガン!!!!」


 僕のあごに増田の本気の拳が炸裂した。


 今度はとても痛かったから、、僕は攻撃をやめて、泣いた。


「はは、ははは、グスッ……僕がどれだけあの黒板とチョークに助けられたと思っているんだ?? 親友だったんだよ?? なんでこんな酷いことするんだよ……」


「はあ、、これだ!! 俺が求めていたものは!! お前、、初めて本気になってぶつかってきてくれたな。よし!! もう、、今日限りで、、俺はお前をいじめないことにするよ……」


「??」


「あの話す黒板とチョークのことを俺が知らないとでも思ったのか??」


「お前、、知っていたのか??」


「ああ」


「チョークはお前に粉々にされたせいで、、天国に帰ってしまったんだぞ?? どうしてくれるんだ??」


「俺はお前が控えめでいじめられても黙り込んでいることが許せなかったんだ。やられたらやり返せよ。じゃないと面白くないだろ?? とにかく、、もうお前はいじめない!! 臆病者の負け犬から、、戦う男へと成長したからな!!」


「なんだと?? チョークを粉々にして殺しておいて、、何言ってんだよ!!」


 僕は増田裕助の胸倉を掴んだ。


「チョークは死んでない!! ついてこい!!」


「えっ?? 待って!!」


「早く来い!!」


 俺は増田に腕を引っ張られながら、、黒板とチョークのいる予備教室に入った。


「おお、、増田裕助と新谷清か。どうだ。仲直りできたか?? どうなった??」


「黒板くん。どういうことだよ?? チョークは天国に行ってなかったの?? なんで嘘ついたの??でも、この粉々のチョークは??」


「それは僕じゃないよ!!」


 なんと、、同じ白色のチョークが動いて、、声を発した。


「増田くんが壊したのは他のチョークだよ」


「チョークくん。無事だったのか。なんだ……よかったーー!!」


 安堵に包まれた僕は疲れて地面に座り込んでしまった。


「俺がお前をいじめていたことは素直に謝るよ。ごめん」


 増田裕助はいきなり謝罪してきた。


「謝って済むか!!!! どれだけ嫌な想いしたと思ってるんだよ!!」


「お前がチョークを破壊されたと思って、、反撃してきてくれたのが嬉しいんだ。黙っていじめられても我慢している奴にはなってほしくなかったから、自分の殻を破ってもらいたかったんだよ」


「だからって、、オカマ呼ばわりするのはよくないだろ!!」


「もうしないって!!」


「黒板くんもわざとチョークが天国に帰ってしまったと僕に嘘ついたんだね。増田に反撃させるように仕向けたのか……」


「ああ、、それでも増田に黙り込んで何もしないようなら、、もうダメだと思ったんだよ。でも、親友のためならきっと怒って、、やってくれると思っていたよ。いじめをやめさせ、、仲直りさせるには本気のぶつかり合いが一番手っ取り早いと思ったんだ!!」


「俺はお前をオカマ君とからかってきたのは事実だ。でも、ガキ大将として後戻りできなかったんだ。みんなの前では見栄はって、カッコつけて、悪い奴っていう自分でいなくちゃいけなかった。でも、、本当はお前とも仲良くなりたかったんだよ。今までいじめてきて本当にごめん。これからは、、俺と友達になってほしい。もう、、みんなの目は気にしないから」


「やられたらやり返すことも大事なんだな。黙って何もしないからいじめられてしまう。いじめられている自分が変わらないといけないんだな」


「そうだ。それに気付いてほしい。いじめられている側が変わらないとダメなんだ。いじめる側が変わるのを待っているのは愚かの極みだ」


 増田が言っていた。


 いじめをやめさせるには、自分が変わるしかないと。


 いじめられる側にも原因があるという言葉は悪いと思われがちだが、、


 実際の現実では、、いじめっ子がいじめを自主的にやめてくれることはほぼない。


 自分が変わらない限り。


 それを今日は実感したよ。


 #7


 増田裕助との本気の喧嘩から6ヶ月後……


 僕は黒板アート全国大会の作品作りに熱中していた。


 期末テストで最下位近かった僕がトップ30までに入れたのは黒板くんとチョークが勉強を教えてくれたおかげだから、黒板アートの大会では、、黒板くんとチョークを作品に使いたいと思った。


 タイトル「本気の喧嘩」だ。


 増田裕助と僕のあの時の喧嘩を描く。


 書いてすり減っても、、すぐに元通りになる魔法のしゃべるチョークと黒板くんにアドバイスもらいながら、、


 作品を完成させてゆく。


 宮澤香先生が校長に頼み込み、、黒板アート大会の参加を許可してもらえた。


 元はと言えば、、先生がこの予備教室に入れてくれたから、黒板くんとチョークに出会えたんだ。


 未だに先生には内緒にしているけれどね。


黒板くんとチョークとの別れまであと2ヶ月か。


寂しいな。。


 こうして、、


 黒板アート全国大会の作品は完成した。


  そして、、結果は、、


 準グランプリだった。


 全国2位か。


 賞金50万をもらった。


 黒板くんとチョークに、、今までの恩返しがしたかった。喜んでもらいたかった。


 黒板アートで自分達が活躍できたということに。


 もう卒業式まで3カ月切った。


 予備教室が改装されるということが決まり、、


黒板とチョークは撤去されることになった。


もう使わなくなった古いものなので、、捨ててしまうらしい。


  僕は父さんに頼み込んだ。


「父さん!! 捨てられてしまう学校の黒板とチョークをぜひ、、家に設置して、、迎えたいんだ!! この黒板とチョークがあれば、、いくらでも勉強できるから!!」


「しかし、、どこに置くんだ??」


「僕の賞金50万でなんとかならない??」


「本当に勉強をしっかりやるんだな??」


「もちろんだよ!! 黒板とチョークがあれば百人力さ!! 学年1位も夢じゃない!!」


 少しハッタリをかましつつも、、結局、、僕のあまりの必死さに根負けして、父さんがプレハブ小屋を庭に作ってくれることになった。


 黒板とチョークの撤去費用を節約できる学校側は、、僕の家が引き取ることを承諾してくれた。


 撤去作業での費用や運送設置費やプレハブ小屋の費用も、、「東大目指して頑張るから!!」と父さんをおだてて、工面してもらった。


 父さんが学歴勉強オタクの親であることに初めて感謝できた。


 こうして、、 


 プレハブ小屋が完成し、、黒板くんとチョークが我が家にやってきた。。


「これからはいつでも一緒にいられるね!!」


「清よ。本当にありがとう。でも、、僕たちはもう天国に帰らなくちゃいけないんだよ」


 黒板くんが悲しそうな声で言う。


「今まで楽しかった!! 僕たちは必ずまた再会できるから!!」


 チョークが楽しそうに言う。


「そんな……今すぐに行くの??」


「ああ。もう、、時間だよ……君が泣かない内に帰るよ」


「また会えるって、、どうやって??」


「いつかわかるよ」


「さようなら。黒板くんとチョークくん。僕は泣かないよ!! もう強くなったからね」


「泣かれたら……いつまでも天国に帰れないからね。助かるぞ」


 黒板とチョークが光を放ち始めた。


 やはり、、本当にお別れなんだ……


 黒板くんに体を寄り添い、、チョークを持ちながら、、


 彼らの帰還を見守った。


  彼らは天国へと帰っていった。


 


 『最終話』


 学校で最後の給食では、、


 なんと、、  増田裕助と一緒に食べていた。


「まさか、、お前と一緒にこうやって給食を食べる日が来るとは思わなかったな」


「僕と食べているから、、他の人たちはみんな離れちゃったね。本当にゴメンね」


「俺の周りにいたのは偽りの友達だったんだよ。なら、、いないほうがいい。それに、、俺は今、やっと親友と呼べる奴ができたからな」


「それって僕のことだよね??」


「正解!! 本音で素直な自分をさらけ出せる真の友達だ」


「ありがとう。黒板とチョークくんがいなくなっても、、君という宝物を残してくれた。僕の願いは叶ったんだ!! 親友が欲しかった。昔から……」


「黒板とチョークはまた会いに来るって言っていたよな」


「どうやって会うんだろう?? まさか、、今度は幽霊として……」


「半分正解!! あいつらは人間になるための練習をしにきているって言ってたから、、今度は人間になり、、会いに来るのかもな」


「楽しみだなあ。今度は人間になって会いに来てくれるかな」


 僕はいつの日か、、人間に生まれ変わって、、会いに来るかもしれない黒板くんとチョークくんを楽しみにしている。


「いつかまた会えるから」


 この黒板くんとチョークくんの言葉は僕の支えになって、光り輝いている。


 プレハブの小屋では、、黒板くんとチョークくんがいる。


 もう、、天国に帰ってしまい、、声を発しないが、、


 黒板アートで描いた絵はそのまま保存してある。


 消したくなかった。


 あの時の増田裕助との戦いで僕は生まれ変われたから。


 一生、大事な思い出と仲間を手に入れることができた。


 もう、、黒板くんとチョークくんがいなくても大丈夫。


 一人で勉強できるから。


 そして、、彼らは僕の心の中にいつもいるから。


 



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