孤独の最強魔導士
はじめまして。読んでいただきありがとうございます。
最強でありながら孤独に生きてきた魔導士と、優しすぎる剣士の物語です。
少しずつ距離が変わっていく2人を楽しんでもらえたら嬉しいです。
初めて小説を書くので温かい目で読んでいただければ嬉しいです☺️
焦げた匂いが、風に乗って流れていく。
崩れ落ちた魔物の残骸を一瞥して、ルナは小さく息を吐いた。
「……弱い」
呟きは、誰に向けたものでもない。
指先に残る魔力の余熱が、じんわりと消えていく。
たった一撃。それで終わりだった。
地面には深く抉れた跡。周囲の木々も巻き込まれ、黒く焼け焦げている。
——やりすぎた。
そう思っても、今さらどうにもならない。
「これで依頼は終わり、か」
返事はない。
最初から、誰もいないのだから。
視線を落とせば、そこにあるのは自分の影だけ。
長く伸びたそれが、やけにくっきりと見えた。
ひとりで戦って、ひとりで終わる。
それでいい。
それが一番、面倒がない。
「……帰るか」
踵を返した、そのときだった。
「ちょっと待って」
場違いなほど穏やかな声が、背後から落ちてきた。
ルナの足が止まる。
ゆっくりと振り返ると、そこには剣を背負った青年が立っていた。
柔らかく笑っているのに、その目だけはまっすぐで。
「これ全部、君がやったんだよね?」
——面倒なのが来た。
ルナは小さく舌打ちをした。
「関係ないでしょ」
「まあ、そうなんだけど」
困ったように笑いながらも、青年は引かない。
「でも、放っておけなくて」
「放っておいて」
即答だった。
それで終わるはずの会話だった。
なのに、青年はなぜか一歩近づいてくる。
「怪我、してない?」
「してない」
「本当に?」
「してないって言ってるでしょ」
しつこい。
ルナは眉を寄せた。
「……なんなの、あなた」
「ん? ああ、名乗ってなかったね」
青年は少しだけ姿勢を正した。
「ルーク。見ての通り、ただの剣士」
「ただの、ね」
ルナは鼻で笑う。
「で、その“ただの剣士”が、何の用」
「さっきの魔物、この辺りの依頼対象だったんだ」
「じゃあ終わりね」
「うん、終わりなんだけど」
ルークは少しだけ言葉を選ぶようにしてから、続けた。
「ひとりで来てたの?」
「そう見えない?」
「見えるけどさ」
苦笑しながら、ルークは肩をすくめる。
「危ないよ」
その一言に、ルナの目がわずかに細くなる。
「……は?」
「見た感じ、かなり強いのは分かるけど」
穏やかな口調のまま、ルークは言う。
「だからって、ひとりで全部やるのは危ない」
一瞬、空気が冷えた。
「余計なお世話よ」
低く、抑えた声。
「そうかもしれないけど」
それでもルークは引かなかった。
「それでも、放っておけない」
ルナは無言でルークを見つめる。
理解できないものを見る目だった。
「……意味がわからないわ」
「よく言われる」
あっさりと返される。
本気で言っているのか、冗談なのか分からない。
「とにかく」
ルナは視線を外した。
「依頼は終わった。用がないなら帰れ」
「じゃあ、一緒に帰ろうか」
「は?」
今度ははっきりと顔をしかめる。
「なんでそうなる」
「同じ方向っぽいし」
「違う」
「じゃあ途中まででも」
「来ないで」
ぴしゃりと言い切る。
これで終わり。
そう思って、ルナは再び歩き出した。
——はずだった。
背後から、足音がついてくる。
「……ねえ」
「うん?」
「来ないでって言ったでしょ」
「聞いたよ」
「なら帰って」
「それは無理かな」
悪びれもなく言う。
ルナは足を止め、振り返った。
「……なんで」
ほんの少しだけ、苛立ちが混じる。
ルークは少し考えるようにしてから、答えた。
「ひとりで大丈夫な顔じゃなかったから」
一瞬、言葉が途切れた。
「……は?」
「なんていうか」
ルークは視線を逸らさずに続ける。
「放っておくと、そのまま消えそうだった」
意味が分からない。
本当に。
何を言っているのか理解できない。
なのに。
「……馬鹿じゃないの」
それしか言えなかった。
「うん、よく言われる」
また同じことを言う。
その軽さが、余計に調子を狂わせる。
ルナは小さく舌打ちをした。
「勝手にしな」
吐き捨てるように言う。
「いいの?」
「許可した覚えはない」
「でも追い返さないんだ」
「面倒なだけよ」
そう言って、前を向く。
再び歩き出す。
今度は、足音を気にしないようにした。
それでも、隣に誰かの気配があるのは分かる。
少しだけ、歩幅がずれて。
少しだけ、呼吸のタイミングが違って。
——うるさい。
なのに。
完全に無視することも、なぜかできなかった。
「なあ」
隣から、声。
「なに」
「名前、聞いてない」
ルナは一瞬だけ黙った。
言う必要はない。
関係もない。
どうせ、ここで別れる相手だ。
なのに。
「……ルナ」
気づけば、そう答えていた。
「そっか、ルナか」
嬉しそうに、ルークが笑う。
その声が、妙に耳に残った。
「よろしく」
「よろしくする気はないわ」
「そっか」
それでも、気にした様子はない。
そのまま、並んで歩き続ける。
一定の距離を保ったまま。
近すぎず、遠すぎず。
その距離が、やけに落ち着かなくて。
ルナは、わずかに眉を寄せた。
——面倒なやつに、捕まった。
そう思ったのに。
どうしてか、その足取りはほんの少しだけ、いつもより遅くなっていた。
読んでいただきありがとうございます!
ここから2人の関係が少しずつ変わっていきます。
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