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魔王、ガチャに溺れる

 牛山という、どう考えても当たりの部下を引き当ててしまったことで、僕の気分はすっかり良くなっていた。


「よし、じゃあ残りもいってみようか」


 そうして始まった、残り四十九回のガチャ。


 結果から言うと――


「……オーガ」


 筋肉。


「……オーク」


 また筋肉。


「……オーク」


 筋肉、再び。


 数体ほどオーガらしき個体は出たものの、残りはほぼオークだった。

 しかも、どれもだいたい似たような顔と体格をしている。


「うん……」


 僕は顎に手を当てて考える。


「しばらくは、魔石発掘要員として鉱山に行ってもらおうか」


 オークたちは無言で頷いた。

 どうやら納得はしているらしい。


「合理的な判断です」


 レリィも特に反論はしなかった。


 そして――


「次が、最後ですね」


 レリィのその言葉に、僕は壺の中に残った最後の魔石を放り込む。


 四十九回目。


 壺が、これまでとは少し違う光を放ち始めた。


「……お?」


 光は静かで、しかし明らかに“質”が違う。


 まばゆい閃光が収まったあと、そこに立っていたのは――


 執事の格好をした、細身の男だった。


 黒髪。

 眼鏡。

 無駄のない姿勢。


 どう見ても、「できる人」オーラが漂っている。


 男は一礼し、静かに名乗った。


「セレス・ノクス。参りました」


「……おぉ」


 思わず声が漏れる。


「なんか、当たりっぽいぞ」


 レリィが一歩前に出て、男をじっと観察する。


「戦術立案、偵察・罠・魔導兵器の運用、少数精鋭の指揮……

 このあたりが得意そうですね」


 何か、淡く光る魔法陣のようなものが一瞬だけ浮かび、消えた。


「……なにそれ?」


「簡易的な能力観察です」


「鑑定スキル? それ欲しいんだけど」


 心の底から思った。


 そんな僕たちを前に、セレスは一瞬だけ沈黙し――


 こちらを見て、眉をひそめた。


「……確認します」


 嫌な予感がする。


「本当に、この方が魔王ですか?」


「失礼ですよ」


 すかさずレリィが注意する。


「このお方こそ、我らが魔王様です。柔軟な思考と、時に鋭い判断力を持ち――」


「なるほど」


 セレスは頷いたが、表情は変わらない。


「……ずいぶん、評価が抽象的ですね」


「え、今ちょっとディスられた?」


 レリィは咳払いを一つして、話題を切り替えた。


「ともあれ、これで主要な戦力は揃いました」


 僕は、玉座の間にいる顔ぶれを見渡す。


 有能すぎる牛の魔人、牛山。

 皮肉屋で頭脳派の新参、セレス・ノクス。

 そして、常に冷静な側近、レリィ。


「……まずは、この四人で魔王、やっていく感じかな」


 牛山は深く頷いた。


「承知いたしました。全力でお支えいたします」


 セレスは腕を組み、淡々と言う。


「判断次第では、評価を改めましょう」


 レリィは、にこやかに微笑んだ。


「では魔王様。次は、具体的な運営方針を決めましょうか」


 どうやら本格的に――

 魔王業が始まってしまったらしい。

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