魔王、ガチャを回す
場所は、魔王城(仮)の玉座の間。
床の上には、これでもかというほど魔石が山積みになっていた。
「……思ったより、集まったなぁ」
僕はその山を見下ろし、自分の努力の成果にしみじみと感心する。
一週間、黙々と鉱山でつるはしを振るい続けた甲斐はあったらしい。
「さすが魔王様です」
レリィが、どこか嬉しそうに頷いた。
「これだけあれば……そうですね。五十連はいけそうですね」
「……五十連」
聞き慣れた単語に、嫌な現実感が混じる。
「ちなみにさ」
僕は玉座の横に鎮座している、やたらと存在感のある機械を指さした。
「“手下の製造機”っていうのは……この、デカい壺みたいなやつ?」
黒く鈍い光を放つ、壺型の装置。
どう見ても、神秘というより怪しい。
「ええ、そうです」
レリィはあっさり肯定した。
「ここに魔石を投入していただくと、新たな魔人や魔族が即座に出現します」
「即座に……」
「まぁ、当たり外れはありますけどね」
さらっと重要なことを言われた。
「だいたいは知性のある者が出ますので、優秀な部下として活躍してくれるはずです」
「……はず、ね」
仕組みはまったく分からない。
でも、この世界ではそういうものなんだろう。
(ピックアップガチャとか、限定ガチャとか……あるのかな)
心の中で、どうでもいいことを考えながら、僕は魔石を手に取った。
「じゃあ……やってみるか」
意を決して、壺の中へ魔石を放り込む。
次の瞬間──
壺が、低い唸り声を上げながら光り始めた。
「おお……」
魔法陣のような模様が浮かび上がり、光は次第に強くなる。
やがて、視界を覆うほどのまばゆい閃光が炸裂した。
「うわっ、まぶしっ……!」
光が収まった、その先に立っていたのは──
筋骨隆々。
全身を覆う分厚い筋肉。
身長は、ざっと見ても三メートルはありそうだ。
しかも、二足歩行。
頭部は……どう見ても牛だった。
「……え?」
巨大な牛の魔人は、ゆっくりとこちらを見下ろし、深々と頭を下げた。
「魔王様でございますね? お初にお目にかかります」
やけに丁寧な口調だった。
「私、“牛山”と申します」
低く落ち着いた声で、彼は続ける。
「コンゴトモヨロシク」
……見た目に反して、どうやら知的キャラらしい。
僕は一瞬、レリィのほうを見る。
「……これ、当たり?」
レリィは少し考えてから、にこやかに答えた。
「はい。かなりの当たりだと思いますよ、魔王様」
巨大な牛の魔人──牛山は、胸を張って言った。
「力仕事、戦闘、交渉、事務処理。幅広く対応可能です」
「事務処理も!?」
予想外の万能型だった。
僕は魔石の山と、壺と、新たな部下を交互に見回す。
「……もしかして、この国の未来、ガチャ運にかかってない?」
レリィは微笑んだまま、何も言わなかった。
その沈黙が、何よりの答えだった。




