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魔王、つるはしを担ぐ

 僕は今、つるはしを担いでいた。


 どうしてこうなった。


「……いや、ちょっと待って。魔王だよ? 僕」


 黒々とした城門を背に、思わずぼやく。

 隣ではレリィが、いつも通り落ち着いた足取りで歩いていた。


「問題ありません。魔王様も労働なさいます」


「問題しかない気がするんだけど……」


 魔王城(仮)から東へ。

 どうやらこの先に、小さな魔石の鉱山があるらしい。


 歩きながら、ふと気になって聞いてみた。


「ちなみにさ。この世界、この……魔王国? の周りって、どうなってるの?」


 レリィは一拍置いて、にこりと微笑む。


「前向きでいいですね。ではご説明します」


 嫌な予感しかしない。


「まず、今からおよそ千年ほど前に、先代の魔王様がおられました」


「ほう……」


「先代の魔王様も、魔王様と同じく魂をサルベージされた方です」


 そこは共通なんだ。


「生前は“シャチク”という、非常に真面目な職業に就いておられたと伝え聞いております」


「……え?」


「世界の調和と統率に、非常に熱心に取り組まれていたそうです。

 見事な悪役を演じておられました」


 僕は言葉を失った。


 シャチク。

 なぜか妙に引っかかる響きだった。


「……頑張りすぎた、ってこと?」


「はい」


 即答だった。


「その結果、世界の国々が一致団結しはじめ、聖魔大戦へと発展してしまいました」


「それ、完全に裏目じゃない?」


「先代の魔王様もそう嘆かれたそうです。

 このままでは、かえって調和が崩れる、と」


 レリィは淡々と続ける。


「そこで先代の魔王様は、自ら討伐された、という形を取りました」


「……え、自主的に?」


「はい。仕事熱心な方でしたので」


 なんだその美談。


「その後、勝利した人類側は、この地を“封印の地”として結界で閉じ込めました」


 レリィは前方の山々を指さす。


「周囲は軍事国家で固められています」


「うわぁ……完全に囲まれてるじゃん」


「はい。こちらは、この大陸──エルディアの北の端です」


 ようやく世界の名前が出た。


「東はエルフの国。南は小国連合。

 いずれも、先の大戦で人類側を指揮していた皇国の属国ですね」


「つまり、敵だらけ?」


「基本的には」


 さらっと言うな。


「西は、聖中央神国に包囲されています」


「……それも敵?」


「いえ」


 レリィは少しだけ声を落とした。


「聖中央神国は、私たちと同じく、調和と統率を目的としています」


 嫌な予感が、確信に変わる。


「裏では、魔王国とつながっています」


「……え?」


「お仲間ですね」


 にっこり。


「……この世界、思ったより闇が深くない?」


「はい」


 肯定するんだ、そこ。


 文句を言いながら歩いていると、やがて目的地が見えてきた。


 古びた鉱山だった。


 だいぶ使い込まれた様子で、坑道の奥は闇に沈み、どこまで続いているのか分からない。


「……ここ?」


「はい。小規模ですが、魔石が採れる鉱山です」


 レリィは楽しそうに言った。


「さぁ、張り切っていきましょう」


「いや、張り切るっていうか……」


 僕はつるはしを見下ろす。


 魔王。

 世界秩序の管理者。

 勇者討伐予定。


 そして──


「……採掘作業からスタートかぁ……」


 こうして、魔王コウイチの鉱夫生活は、静かに始まった。


 なお、この生活は一週間続くことになる。

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