表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

目標設定と、だいたい無理な現実

 正直に言えば、まだ状況を完全には飲み込めていなかった。


 魔王?

 未来?

 人類が宇宙に旅立った?


 情報量が多すぎる。


 僕は頭をかきながら、玉座の上でため息をついた。


「……まぁ、僕に選択肢がなさそうなのは分かったよ。そこはちょっと不満だけどさ」


 レリィはにこやかに頷く。


「理解が早くて助かります」


「助かってないけどね。それで、まず何を目標にすればいいの?」


 そう聞くと、レリィは少しだけ姿勢を正した。


「前向きでよろしいですね。では順を追ってご説明します」


 そう前置きしてから、さらっと爆弾を投げてくる。


「魔王様がこの世界に受肉なされる、少し前のことです。この城から南にある、人間の国家──皇国にて、“勇者”が召喚されました」


「……勇者?」


「はい。ただし、この勇者は問題があります」


 嫌な予感がした。


「今までのルールに違反した、いわゆる“チート行為”による召喚なのです」


「……え?」


「本来、この世界に存在してはならない力を持ち込み、世界の調和を乱しています」


 レリィは淡々と続ける。


「ですので──」


 にっこり。


「ぶったおしてもらいたいです」


「軽っ!?」


 思わず声が裏返った。


「いやいやいや、いきなり第一目標がそれ!? もっとこう、段階とかないの!?」


「ありません」


 即答だった。


「世界の均衡を崩す存在は、排除する。それが魔王の役目です」


「……なるほど、分かりやすいけど分かりたくない」


 僕は深くため息をついた。


「で、それが第一の目標ね。じゃあ次は?」


「続いては、魔王様の国──魔王国の再建です」


「……魔王国?」


「ええ。名前はまだありませんので、後ほど考えましょう」


 名前すらなかった。


「この城と、周囲の領土は残っています。ただし──」


 レリィは少しだけ言いづらそうに続ける。


「現状、戦力はほぼありません」


「……え?」


「私を含め、“魔人”と呼ばれる強力な存在はいくつかおりますが、各地で調和と統制を取る役目を担っております。そのため、自由に動かせません」


「ちょっと待って。部下、ほとんどいないってこと?」


「はい」


 あっさり言われた。


「どうやって勇者を倒せっていうの、それ」


「ですので、魔王様には戦力を作っていただく必要があります」


 いや、だからどうやって。


 僕がそう言おうとしたタイミングで、レリィは説明を始めた。


「この世界には、魔力や魔素と呼ばれる力があります。それが結晶化したものが“魔石”です」


「魔石……ゲームでよく見るやつだ」


「その認識で問題ありません。この魔石を集めることで、魔族や魔物を生み出すことが可能です」


「なるほど……」


 ここまでは理解できる。


「一応、この城には、魔石を製造する古代の装置もあります」


「おっ、じゃあそれで量産できるんじゃ──」


「ただし」


 レリィは静かに言った。


「一日に製造できるのは、オークで十体ほどです」


「……少なくない?」


「効率が悪く、非常に遅いです」


 希望が一瞬でしぼんだ。


「ですので、各地で魔石を集めていただく必要があります。魔石さえあれば、この城の古代装置を使って、新たな手下を製造できます」


 そして、レリィは少しだけ首をかしげて、こう付け加えた。


「分かりやすく言えば、ガチャですね」


「……急に現代的な例え出てきたな」


 しかも、ガチャ。


 勇者討伐。

 国の再建。

 戦力は自前で集めろ。


 僕は玉座に深く座り直し、天井を見上げた。


「……魔王って、思ったよりブラックな職業じゃない?」


 レリィは、にこやかに微笑んだ。


「はい。ですが、やりがいはありますよ」


 その笑顔が、一番怖かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ