22話 少しの平和
「フィオ君は可愛いですわね、これで19歳……合法ショタ……」
(このままいけばデザート、そしてスキンシップ、最終的には膝枕ルートへ……あらやだ、わたくしってばシナリオの先を読みすぎですわ。控えめに天才)
「アスクレー、なに考えてるのかしら?フィオは私の弟子よ」
声と同時に、フィオ君が物理的に回収されていく。
目の前にいたはずの合法天使ショタがヌイアの膝に居た
「ヌイア?……何してるのかしら」
アスクレー、硬直。
スプーンを持ったまま、時が止まったのはヌイアじゃなく自分だった。
(ちょっと待って!? そんな高貴なる座に当然のように合法ショタを配置するなんて、貴族的にも騎士道的にも反則技ですわよ!? 国際条約どこ行きましたの!?)
ヌイアが、その仕草に合わせてフィオの位置を少し直した。まるで自分の膝の上が“定位置”であるかのような自然さで。
アスクレーが思わず立ち上がる。
「フィオ君! わたくしのお膝も、非常に座り心地がよろしいですのよ!? なんならクッションもございますし、香りだってラベンダーで――!」
アスクレーは言いながら、ぐるりとテーブルを回り込む。勢いのままにフィオの手首をそっと取ると、にこりと微笑んだ。
「……というわけで、さあフィオ君。ぜひ、お膝へどうぞ♡」
そのままくるりと腰を回して、自分の膝の上に「ぽすん」とフィオを座らせた。
「よいしょっと♪ ……ふふっ、やっぱりぴったりですわね。ほら、座り心地はいかが? クッションが良い仕事してるでしょう?」
片手でそっとフィオの背中を支え、もう片方の手で整髪料のついていない指先で髪を撫でる。
完全に“自分の膝でくつろがせる気満々”である。
「そう……でも、フィオはきっと“二人の時間”なんて望んでないわ。みんなで楽しく過ごす方が好き」
「それは、それとして……この状況は、譲れませんわっ」
「いつまで続くの?これ」
フィオは困ったように言う
「じゃあわたくしと結婚するまでですわ」
アスクレーは考えるようにして言う
その言葉にヌイアは紅茶を吹き出す
「貴……貴方いったい何をいってるの?」
ヌイアは困惑している
「フィオは私の弟子よ?誰にも渡さないわよ」
ヌイアとアスクレーの目には独占欲が浮かんでいた
「フィオ!!結婚するなら私とアスクレーのどっちなの?」
フィオは明らかに困惑している
「…何言ってるの……?」