20話 フィオ争奪戦
数日後
フィオ達はエイレニアに着いた
エイレニアは花の街と言われるほど花がどこでも咲いており、絶景だ
「フィオ君?はい、こっちに来て?」
アスクレーは自分の膝を叩く
アスクレーは優雅に微笑みながらも、有無を言わせぬ手つきでフィオ君の手首をつかんだ。次の瞬間、ぐいと力を込めて、彼の身体を自分の膝の上へと引き寄せる。
「フィオ君はね、わたくしに甘やかされるために生まれてきたんですの。……だから、もう諦めて。今日は一歩も逃がしませんわよ?」
「ヌイアが来たらまた言われるよ?」
フィオ君の軽い体重を膝に感じて、アスクレーは満足げに頷いた。彼の髪を梳く指先は丁寧だ
「いいんですのよ、ヌイアに遠慮なさらなくて。わたくしの前では、ずっとこうして可愛がられていればいいんですの」
アスクレーはフィオを撫でているとそこにヌイアがやってくる
「アスクレー?何をしてるの?」
ヌイアは笑顔で近寄るが拳を握っている
「何ってフィオ君を甘やかしてるだけですよ?こんなに可愛いのに毎日頑張ってるんですわ、これぐらいしないとダメですわ」
アスクレーは甘やかす口実を作る
「ダメよ、フィオは私の弟子なんだから、甘やかす権利は私にあるはずよ」
そう言うとヌイアはフィオを大切そうに持ち上げ、自分の隣に座らせる
(ちょ、ちょっと待ってくださいませ!? 今! 今ですのよ!? わたくしがフィオさまのお膝を狙って――いえ、献身的にお世話しようとした矢先にっ!)
その目前で、ヌイアはまるで猫でも扱うように優しく、フィオをひょいっと抱き上げ――ぴたりと自分の隣へ。
(えっ今の何!? 抱っこ!? いや抱き上げ!? 王子様ムーブ!? そんなの許されますの!?)
「二人とも過保護だよ、別に一人でも大丈夫だから」
「ズルいですわ!フィオ君をわたくしも抱き上げさせてくれますこと?」
アスクレーは子供が駄々をこねるように言う
「フィオは私の弟子だもんね?ねーフィオ」
ヌイアは頭を優しく撫でながら微笑む
(なんですの!?この景色は?この世の天国なんですの!?でもある意味地獄ですわ……まるで兄弟のような……なんと言う尊さですの!?わたくしも……)
アスクレーはフィオの横に座るとフィオの頭を撫でる
「ちょっとアスクレー?フィオは私の弟子よ?」
ヌイアは少し強く言う
「わたくしの患者でもありますわよ?」
フィオにヌイアとアスクレーが密着している
(暑い……少し離れて欲しいな)