19話 時の覇者
「時の覇者は……時間を操れる能力……時を止めたり……未来を見たり、過去に戻ることもできるの」
フィオとアスクレーは驚いたように見る
「時を操れるって……そんな能力が……」
フィオは驚きを隠せない
「そう言うことなのですね、全てに納得がいきます、ブラックホールの剣も……それの応用と考えれますわ」
アスクレーはヌイアの能力についてほぼ理解しているが、フィオは学がないため理解できない
「ちょっと……どう言うこと?ブラックホールと時間の何が関係してるの?」
「ブラックホールの回りでは重力が重くなりますの、重力が重いと時間の流れも遅くなり、止まると聞いたことがありますわ」
アスクレーはフィオに説明をする
「さっきのセイドとの戦闘で貴方の姿をした残像のようなものを覚えてる?」
「あれも……ヌイアの?」
「そうよ、あれはリプレイ、過去の映像を立体的に流すと思えばいいわ、ただこの時の覇者には副作用があるの、それは回りにいる人の感情が流れ込んでくるの……フィオの奪われた事に対する怒り……アスクレーの失うかもしれないと言う悲しみ……そして疲れが来るの」
その場の時間だけが、他の世界とは切り離されたような、不自然な静寂に包まれていた。
空気は張り詰めていた。まるで、時間そのものが周囲を遠巻きに見守っているかのように、音も色も、呼吸さえも、どこか鈍くなる。フィオもアスクレーも、問いかけることを忘れたようにただ静かに耳を傾け、彼の存在そのものに引き寄せられている。
「安心しなさい、あくまで一瞬よ、もちろん辛いけど何かを失うよりマシだわ」
「そうですわよね……これからどうしますか?旅に出ますか?」
アスクレーはこの空気を変えるためにこれからの話をする
ヌイアは歩きだす
「次はエイレニアに行くわ……もう着いてこないで、足手まといなの」
アスクレーはその言葉にショックを受けているフィオは何かを考えている
「ヌイア…貴方は何を企んでるんですか?、アイツらが何故貴方を狙うんですか?それに……何故ヌイアは人を近寄らせないようにしてるんですか?」
「私は……怖いの……私が私でなくなるのが……この怒りは誰の怒りなのか……悲しみは本当に自分の悲しみなのか……わからなくなるのが…怖いの」
ヌイアは肩を落として俯いていた。白い髪が顔を隠し、手は膝の上で固く握られている。何も言わず、動かず、ただ感情の重さに沈んでいた。
「ヌイアはヌイアでしょ、それ以外の何者でもない、そこ怒りや悲しみが他の誰の物だろうが今泣いてるのはヌイアでしょ?」
「どうして……優しくしてくれるの…?」
「理由なんてきっとフィオ君にはありませんよ?フィオ君なら理由なんてないと言うと思いますわ」
フィオはアスクレーの言葉に頷く
「……ありがとう皆…」
「何が目的かは言いたくなったら言ってください、自分はヌイアに着いていきますから」
「私もですわ」
フィオとアスクレーはヌイアを助けるように歩きながら次の都市、エイレニアに向かい始める