11話 副団長セイド
「この時を……待っていた」
フィオは刀を抜刀する
その手は少し震えており、視線は波に釘付けだ
「貴様は誰だ?俺は貴様には用事はない、その刀を下ろせば見逃してもいい」
波が真っ二つに割れると中から男がでてくる
水色の髪に白い目、服は甲冑のようなものを着ている
「下ろさないと言うことは……覚悟をする事だな」
石畳を砕きながら、大地が唸った。
セイドの足元から波紋のように亀裂が走る
「ゴゴゴォンッ!」
という轟音と共に、石造りの建物が根こそぎ浮き上がる。瓦礫が宙を舞い、ガラスが弾け、悲鳴のように風が鳴いた。
セイドが左手を天に向けて掲げる。
「ズズズッ……ドォン!!」
海水がどこからともなく建物の隙間を通って押し寄せ、通りが一瞬で滝のようになる。物も人も飲み込まれ、街路樹が根元から折れた。鉄柵がねじれ、街灯が吹き飛ぶ。
フィオは壁を走る。
足がつく寸前、全身に力を集中させ、速度をさらに上げる。空気が悲鳴を上げるほどの圧力
「ビシィ」
と軋む音を残し、セイドの横へ抜けた
フィオの刀とセイドの剣が火花を散らしぶつかり合う
「貴様……まさかフィオか?」
セイドは軽く笑いながら言う
「黙れ!!黙れ!!黙れ!!お前はこの手で殺す!!お前がしたように、少しずつ……痛め付けて殺してやる!!」
フィオは刀で素早く切りかかる
「なかなかやるようになったなぁ~フィオ?」
セイドはねっとりフィオの刀を防ぎながら言う
「お前のお仲間を守らなくてもいいのか?」
フィオはその言葉を聞くと思い出したようにヌイアとアスクレーの方向を見る
そこには瓦礫に埋もれたヌイアとそれを助けようとしているアスクレーがいる
「ヌイア!!ヌイア!!今すぐ瓦礫を退けるから……」
アスクレーはさっきまでとは違い、顔には焦りが見え、言葉使いが少し変わっている
「フィオ……守らないと……今のフィオじゃ……勝てない」
ヌイアはフィオを助けるためレングスの力を使おうとするが力がでない
そこに津波が向かってくる、その津波にアスクレーは気がついておらず、今行けば間に合うだろう
「ヌイア!!待って……」
フィオは助けようとした瞬間後ろからセイドに腰を刺される、腰からは大量の血が流れ、口からも血が溢れる
「あ……え…………」
フィオは声がでない
「これで終わりだな、反逆者ども」
(……やるしかない……アレを…どうなってしまうのかしら)
ヌイアは覚悟を決める
その瞬間アスクレーは少し離れたところにおり、ヌイアが倒れている
「?一体何が……それより……ヌイア、ねぇヌイア!!起きてよ」
アスクレーは必死に呼び掛けをする