表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
右手右足を失ってもセリアさんは、負けない!  作者: 山田 バルス
セリアさん、魔王討伐に向かう。
7/56

第7話 マルシアさん、大ピンチ!助けて!

 


 マルシアは父の面影を知らぬ。ただ、人間であったと母から伝え聞くのみである。

 母はエルフであったが、かつて何らかの事情により人間の街に身を寄せていたらしく、今はエルフの村の外れにひっそりと暮らしていた。その理由を問うても、母はただ微かに微笑するのみであった。


 ある日、マルシアは父のことを尋ねた。母は沈黙し、やがて悲しげに目を伏せた。その表情に、それ以上言葉を重ねることが憚られた。

 

 しかし、その穏やかな日々も長くは続かなかった。マルシアが十歳となった年のことである。


 突如、魔族の軍勢が村を襲った。


 村は炎に包まれ、エルフたちの叫びが夜空を震わせた。

 マルシアと母の住まう家は村の外れにあったため、かろうじて難を逃れていた。しかし、それも束の間のこと。ふと家の前を覗けば、そこには黒い影が蠢いていた。


「マルシア、奥の扉から逃げなさい」


「お母さん! いやだ、一緒にいる」


「ここにいてはなりません。お母さんもすぐに行くから、あなたは先に行きなさい」


 母の表情は厳しかった。マルシアはなおも躊躇したが、やがて小さく頷いた。


「絶対に来てね。待ってるから」


 母の手に背を押され、マルシアは外へと飛び出した。そして、一心に村の外を目指して駆けた。


 その刹那、背後で爆炎が上がる。


「お、お母さん!」


 マルシアは思わず振り返る。次の瞬間、凄まじい爆風が彼女の身体を吹き飛ばした。


 地に伏したマルシアの前に、魔族が影を落とす。


「まだ生き残りがいたか」


「お前も仲間とともに地獄へ送ってやる」


 魔族の声音は冷酷であった。マルシアの身体は震え、恐怖が全身を支配する。


 殺される——その思いが胸を締め付けた、その時であった。


 突如、魔族たちの動きが止まる。いや、そればかりではない。彼らの身体は次第に霜に覆われ、やがて粉々に砕け散った。


「間に合わなかったか……」


 その声にマルシアはそっと顔を上げる。


 そこには、一人の男が立っていた。

 黒髪の、どこか寂しげな風情を纏う人間の姿が——。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ