第一話 セリアさん、右手と右足を失っても絶対に負けない!
セリアさんは負けません。ボロボロになっても彼女は負けません。
セリアが生まれたのは、イースパニア王国の国境沿いの街だった。
父はロマン帝国の伯爵家の三男で、母は公爵家の次女。二人は本来、主従の関係にあった。母には政略結婚が決められていたが、それを嫌い、父と共に駆け落ちした。そして、隣国イースパニア王国で新たな生活を始めた。
父は剣の腕を買われ、冒険者として生計を立てた。母も家庭教師をしながら家計を助けた。そうした中で、セリアは長女として生まれた。
幼いころから父に剣を習い、十二歳になるころには魔物討伐に加わるほどの腕前になっていた。そして十五になるころには、すでに父の技を超えていた。特に身体強化の魔法に優れ、冒険者ギルドでも上位の実力者と認められていた。
だが、平和は長くは続かなかった。
秋の収穫祭が終わったころ、魔王軍が攻めてきた。四天王の一人、ダイソーガンが魔物の大軍を率いて周辺の村々を襲い始めたのだ。
警告の鐘が鳴り響く中、セリアは南門へと向かった。
その頃、正門にはセリアの父が向かっていた。門前では兵士や冒険者たちが必死に戦っていたが、圧倒的な魔王軍の力に押されていた。
その一方で、南門ではセリアの奮闘が光っていた。
「まだまだ!」
身体強化の魔法を駆使し、彼女は驚異的な速さで魔物を斬り伏せていった。魔法使いの援護もあり、南門の防衛戦は優勢に進んでいた。
だが、そのときだった。
正門の方角で、凄まじい爆発音が轟いた。炎が天を焦がし、爆風が街を震わせる。まるで地獄の蓋が開いたかのようだった。