66 火星での活動
酸素の過量摂取について調査を命令された。調査の結果は直ぐ出たが、どう対処すべきかは返答出来る者がいない。
66 火星での活動
マリエールから、火星の生態系の酸素の過量な摂取について調査するように指示が出た。一部のアンドロイドは、
「仕方がない事と報告すべきでしょう。ここはマリエールの星とは違う。酸素を過量摂取しないと、生物は生きていけません。」
確かに、大型哺乳類の中に酸素の過量摂取をするか、窒素を大量に含ませるかしないと生存が難しいものがいる事が判って居た。それらの動物の導入を諦めるか、酸素を過量にするか、窒素を大量に入れるかだった。選択したのは酸素を過量にするだった。生物は酸素さえあれば、生きていけるものと空気量の問題が大切な場合がある。殆どの生物は酸素量で決まる。人間だって空気は薄くても酸素量が得られれば生きていける。一定の空気量が無いと生活出来ない生物が稀なのだ。そういった生き物は火星には不要という意見もあったし、過量な酸素は弊害があるという意見もあった。しかし、この星の1.5倍程度なら、弊害はないし、生物達全て救われるという意見で収まった。窒素を少なくして酸素を増やす実験は誰もした事がない。あるいは火星という特殊性故かも知れない。実害は報告されていないが、酸素の過量摂取が伺える。
「本当にそうなのでしょうか。我々は選択肢が沢山あった。敢えて酸素の過量摂取を選択してマリエール様の指摘を受けた考えるべきでないですか。マリエール様の果敢が強調されますが、マリエール様の優しさを忘れがちです。対策を取るべきです。」
この意見の方が賛同者が多かった。しかし、具体的な策がない。ないというか選択出来ない。議長は恥を忍んでマリエール尋ねる事にした。
凄く簡単な事だ。マリエールが調査の指示を出した事に関する会議を開いている事は連絡してある。マリエールは調査の報告を待っている筈だ。その報告がてら、指示を出して貰うだけだ。
議長は、会議の席上マリエール念話した。調査結果などは伝わる筈だ。
「マリエール様、我々はどう対処すべきでしょう。」
マリエールは暫く言葉がなかった。当然だろう。我々は長期間この問題で悩んできたのだ。いくらマリエール様でも解決は難しいだろう。やがてマリエール様から返事があった。
「酸素の対応が出来ない動物の内、帰せるものは帰して下さい。帰せないものは、個別で対応して下さい。何も火星全体を過量の酸素に置く事はありません。それから、いきなり減らすのではなく徐々に減らして下さい。我々の方針を知らせ、慎重に実行して下さい。」
マリエールのこの一言で事態は収拾した。同じような意見はあったが、あくまで意見の一つで物事を収拾するものではなかった。全てマリエール様が決めていだければ良いのだが。そう思ってしまうのは甘えだと判っていても、しかるべき人の発言でないと同じ事を言っても聞き入れられない事実を見ては思ってしまうのは仕方ない事だろう。マリエール様の発言と自分達の発言の重さ。これは正しいとか正しくないという次元ではなく全ての責任を持つ者の言葉の重さだろう。
マリエールからの指示は、適正酸素量では耐えられない物は、帰せるものは帰し帰せない物は個別に対応という常識的なものだ。なのにマリエールでないと了解されない。




