237 英雄
マリエールと英雄の戦いは激しいものになった。英雄が優勢だった。ただ英雄にはアキレス腱に不死性がない。マリエールはそこを攻めた。
237 英雄
英雄はマリエールの口上に軽く答え剣を構えた。やはりこの世界の戦争にも英雄の決闘はあるらしい。他者の踏み入らない場所と時間が出現した。マリエールは兜を取った。相手に合わせたのだ。その瞬間ドッと沸いた。年若い女性の姿だったからだ。英雄は、
「女子どもは切る趣味はない。ここは戦場だ。とっとと立ち去れ。」
英雄は吠えた。
「外見で判断するのか、臆病者。敗けた時のいいわけが欲しいのか。」
英雄は何を言うと言ってかかってきた。マリエールはガッチリと受け止めた。何度かの剣戟の後、英雄の剣はマリエールの肩を切った。マリエールは構わずに剣戟を続けた。英雄の剣はマリエールを何度も切り貫いた。マリエールの胴を貫いた。マリエールは英雄の剣を握りしめ鎧の上から英雄の肩に剣戟を放った。鎧は裂け英雄の肩から血飛沫が上がった。何度かこういった攻防があった。英雄にも不死性があった。ただ足のアキレス腱にだけにだけ不死性がない事が判った。マリエールはアキレス腱を狙った。中々難しい。隙を作り何度も英雄の剣戟を受ける。マリエール両手に剣を持った。片手で剣を受け止め片手でアキレス腱を狙う。英雄にその狙いが知られると警戒される。両手に剣を持てば不安定になる。英雄の剣戟で跳ね飛ばされるようになる。態勢が崩れた時に痛打を受ける。遂には転ばされた。
英雄は止めを刺すチャンスだと判断した。まさにそうだろう。英雄はマリエールの頭を狙った。マリエールは英雄のアキレス腱を狙った。先届いたのは英雄の剣だった。頭部にはバリアがある。英雄の渾身一滴の攻撃にもマリエールは僅かにしか傷付かない。逆にマリエールは英雄の右足アキレス腱を切り落とした。英雄は大声上げて絶命した。マリエールは英雄の首を落として、剣に刺して敵味方にアピールした。英雄達の軍勢は引き上げた。マリエールは敵の英雄を倒した英雄として迎え入れられた。
敵は引き上げる時に大きな木馬を置いていった。味方は木馬を陣地に入れた。これはトロイの木馬だ。ギリシャの物語のトロイア戦争だ。木馬の中には大勢の兵隊がいる。宴が終わった。兵隊は宴の園の場を離れようとしている。マリエールは木馬に火矢を射掛けた。驚いた兵隊は武器を持った。木馬から出て来た火達磨の兵隊達を仕留めた。伝令によって敵兵が陣地に接近していると連絡があった。接近している敵兵はマリエールが駆逐した。木馬から出て来た兵隊は全滅した。この国の危機は取り敢えず取り除かれた。
マリエールは数日この国に滞在した。その間にこの世界で一番美しい王女様から褒美を頂くイベントもあり、それなりに楽しめた。この王女が今回の戦争の原因らしい。婚姻の縺れのようだ。とにかく敵軍は海を隔てた国に帰ったらしい。当面は戦争はない。臨時に徴兵された兵士は一旦解除になった。マリエールは引き止められたがながいをする気はない。マリエールは次の旅に向かう。別れの挨拶に王女のところに向かう。マリエールは王女に、
「幸せになって下さい。」
と伝えた。
マリエールは英雄の右足のアキレス腱を切断して勝利を得た。敵軍は木馬を置いて退散した。トロイの木馬だ。




