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       201 マリエール 3

 バリア解除の条件は10人の公開処刑などだ。9ヶ月が経って、バリアの解除は今の人間には無理です。将来、価値のある人々が居たら解除して下さいとあった。

         201  マリエール  3


 アンドロイドは各星に課せられた課題を一年以内にこなす事は出来ないと考える。万能者は星々を緩慢な死に至らしめるつもりなのだろう。あるいはマリエールの考えかも知れない。いずれにしろ一年以内の実現ならば早急に動く必要があるのにその気配はない。出るのはバリアを張られた怒りだ。アンドロイドには関心がない。刻々と時は過ぎる。アンドロイドと話し合いがしたいというオファーはあるが無視をしている。10人の公開処刑無しに話し合いに応じられない。

 半年が過ぎた。もうバリアの解除はないと配信した。怒りの反応があった。更に3ヶ月経った頃心を打つ返信があった。

「バリアの解除は諦めました。今のこの星の人々は交流会に許される価値がありません。しかし、将来のこの星の人々に宇宙への進出の可能性を奪うのは必要な事でしょうか。数十年のこの星の積み重ねをみてご判断頂けないでしょうか。バリアを解除してもこの星がまた増長するならば再度バリアを張るだけだと思います。」

謙虚な返信は始めて見た。これまでは反応を返す価値があるものがなかった。アンドロイドは返信した。

「あなたの言葉は私の胸を打ちました。今のこの星の人々が価値がないと言って、将来の人々が価値がないとは言えない事は承知しました。数十年後に様子を見に来ましょう。その前にバリアを解除する方法が見つかるかも知れないですね。この星の正しい発展を祈ります。」

この星は一年間何にもしなかった。一年が経ちアンドロイドは10人を抹殺してマリエールの元に帰った。他の星も同じだ。バリアを張り続けることに対して万能者は特に何も言わない。

 後日、あの惑星を訪れた。アンドロイドは全ての宇宙船を収納した。王侯貴族、軍隊を収納した。人間種を別の大陸に移住させて、自分達の国を作った。全ての人間種を移住出来たわけではない。自己満足もいいところだ。人間種の長にこう言われて少し救われた。

「我々は他の人間種に奴隷のように扱われて自尊心も失っていました。あなたに救われて少し尊厳を持てました。これからは自分達の足で歩いて生きます。奴隷でない道を選びます。」

長の深い皺に笑顔が見える。将来に明るさが見えるのだろう。

「必要なものは出して置きましたが、ここにある以外は自分達で確保する必要があります。狩猟にせよ採集にせよ農業にせよ一朝一夕で出来るものではありません。試行錯誤して会得して下さい。」

 アンドロイドは時々ここに来る。大変そうだが、皆の顔は明るい.。今回唯一の朗報だ。正直空しい事が多かった。バリアの掛かった星に未来はあるのだろうか。現実を正しく捕らえ正しく行動する事は思った以上に大変な事のようだ。間違った概念から抜け出すのは容易ではない。

 今回大きな粛清に成らなくて良かった。人は明日を信じる生き物だ。理不尽な状況でも正しい選択はある。いつか輝かしい未来はきっとやって来る。インターネットの返信のように将来に期待しよう。

 あの惑星で人間種の国を作った。試行錯誤だが、人々の顔は明るい。今回の唯一の朗報だろう。

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