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        195 アイシャ 5

 オマール商店はアイシャに見捨てられた。オマールはマリエール商会に向かった。謝罪は受け取って貰えたようだ。

        195  アイシャ  5


 オマールはアイシャにも見捨てられた。完全な詰みなのだろう。手打ちになるわけにはならない。兎に角マリエール商会に行こう。手ぶらでは行けない。金貨を包んで謝罪文をしたためて、マリエール商会に出掛けた。

 マリエールに面会を求めると応接間に通された。やがて上品で美しく若い女性が現れたがマリエールではない。女性は心配ないという様に、

「マリエール様には連絡して私に一任して頂いているから問題ありません。こうして謝罪文と慰謝料を頂きましたので手打ちにはしません。本当に謝罪するならば今後誠意を込めた対応を求めます。マリエール様、マリエール商会を不快にさせた償いはきっちり付けて貰います。」

オマールは謝罪の言葉を述べその日は帰宅した。

 騒動になったのは、取り立ての日だった。先月は、借金返済を必要経費と認め、利益はなかったとしたのに今月はそれを認めなかった。文句を言った店員を収納した。

 貴族の証明を出して、文句を言う者は無礼打ちにする。と言った。今月はあり金ほとんど出してなんとか乗り切ったが来月以降はお金のやりくりが付かない。

 翌月の集金日、出納帳と借金の返済金を出した。マリエール商会の店員達は書類等を調べて、

「明らかな誤魔化しがある。貴族への反逆だ。」

事細かに説明した。出納帳の管理者が自白して、管理者は収納された。現金では足りなかったので有価物を押収された。食堂が没収されるのは確実だ。誰か相談出来ないか。マリエール商会に相談に行った。

 前回と同じ人が担当してくれた。担当者に苦境を訴えた。担当者は冷酷に言った。

「アイシャ様があんな事を言ったから、こんな事になったのですよ。」

要するに死ねば良かったと言っているのだ。担当者は、

「今直ぐに食堂を手放すなら、住居の手配くらい出来ますよ。」

 オマールは店に戻って、家族や店員に事実を話した。来月の集金日がこの店の終わりだと。家族は妻の実家に返し、店員達は店を代わって行った。集金日の10日前店を閉めた。妻や店員にお金を渡し、あまりお金はない。土地の権利書くらいしかない。この店を出た後は冒険者になるつもりだ。マリエール商会に目付けられた者が商売の道で生きられるとは思えない。

 集金日が来た。オマールは土地の権利書と家の鍵を渡した。マリエール商会の店員は、

「受け取りは明日の朝でいいですね。」

オマールは黙って頷いた。

 アイシャはオマール商店がマリエール商会の物になったと聞いて自責の念にかられた。同時それがこの商会でなくて安堵した。アイシャの商会長代理の就任式で手打ちを止めたのは正解だったかどうか自信がない。マリエールの温情で商会長代理に就任したのに恩を仇で返しているのではないか。そのためか商会の利益は根こそぎ没収される様になった。アイシャは番頭に聞いた。

「私はマリエール様の怒りを買っているのでしょうか。」

番頭は、

「マリエールはそんな単純じゃありません。アイシャの発言を逆手取ってオマール商店を冷酷な手で滅ぼしたのでしょう。」

まさその通りになった。

 その後の返済は不可能なものだった。借金の返済も利益として押収された。オマール商店はマリエール商会に吸収された。

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