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4:技能種子《スキルシード》

「さて」


 ぽつり、と俺は呟いた。

 シルフィアが意味ありげに笑ってるのでそれを問いただそうという魂胆なのだが……こやつ、まるで種明かしまでのリアクションを楽しむマジシャンのようではないか。


 この感じ、多分知ってるな、この種の正体。


「ワトソン君。答えを教えてもらおうじゃないか」

「ワトソン……? それは私の持つ魔剣【解析不能ワトソン】のことじゃないよね。まぁいいや、答えを教えてしんぜよう」


 魔剣ワトソン!? シャーロック・ホームズの相棒の……?

 いやいやそれは想定外だよ! 本当になんだよそれ!? そんなつもりで言ってないから!


「これは技能種子(スキルシード)。簡単に言えば、スキルをゲットできちゃうアイテムさ」

技能……種子(スキル  シード)!?」


 ——技能種子(スキルシード)は、魔物の食材なんかよりも数桁上をいく超高級アイテム。

 スキルが獲得できるというとんでもない効果があるが、希少すぎて発見されればネットに流れ、そのたびに他の探索者が大騒ぎしている。


 俺はこの名前に聞き覚えがあった。探索者を知る者はきっとこの言葉も知っているのは間違いない。


「これ、売ったら数億円くらい稼げる気がするんだが」

「え、いやいや……確か円ってのはこっちの通貨だよね……はは、怜は冗談が下手だなぁ——ちょ、ちょっと待ってよ。その顔は本気じゃん! 嘘だよね……?」

「はっはっは、本気だぜ!」


 きっと、今の俺は今日イチ笑っていることだろう! 

 はっはっは、笑いが止まらん! なんだよ数億円のアイテムがD級ダンジョンから出てくるって! 冗談もいい加減にしてくれ! 聞いたことないから!


「これを売れば大金持ちに——」

「怜は冗談が本当に下手だね! これは見つけたら使う! 冒険者の基本だよ」

「いやいや俺は冒険者になった覚えは——」

「いいから! ほら!」


 俺の言葉は全て遮られ、ろくな反論もできぬままにシルフィアは虹色の種(スキルシード)を掴み、俺の胸へと突き刺した。


「ちょっ、刺さってるんだけど!?」

「でも痛くないでしょ?」

「そうだけどさぁ!」


 ダンジョンの最深部で何やってんだろ、とか思いつつも、抵抗を諦めじっとする。


 ……なんか、注射を嫌がる子どもみたいな気分だ。もう注射なんか怖くないというのにね。


 そんな感じで種が発する虹色の光に包まれつつ、待つこと数十秒。

 ついに光は収まり、それを確認したシルフィアは腕を引き抜いた。


 不思議なことに傷跡はない。服も変わらずあり、その下の素肌にもダメージなし。本当に理解できん。


「それじゃあ私が鑑定してしんぜよう! 感謝するがいい!」

「いや、ステータス見ればいいので結構でございます」


 俺がひと息つくと、シルフィアは胸を張って高らかに言った。

 しかしステータスというとても便利な機能があるので遠慮しておくことにする。それくらいは自分でやりますよ……あと先に見られるのなんか嫌だったし。


「ん? ステータス?」

「え?」

「え?」


 ……おっと。認識に齟齬が生じているらしいぞ。


「ステータス……異世界にはないのか?」

「あるにはあるよ、うん」

「あるんかい! ……じゃあその反応は何さ」

「いや、それは自分じゃ見れないもの——なはずなの!」

「でも見れるんだよね、こっちの世界だと。『ステータス』」


 中空に手を伸ばし、俺は呟いた。 

 すると、目の前に薄い板のようなものが浮かび上がる。


 〜〜〜

 朝宮 伶

 スキル:〈召喚〉〈天眼〉

 体力:60%/100%

 魔力:80%/100%

 アビリティ:精神苦痛耐性LvⅡ

 〜〜〜


「ほぉ、ちゃんとスキルが追加されてるじゃないの」

「おい待てシルフィア、ステータスは他の人からは見えないはずだぞ……? もし本当だったら追加されてるスキルの名前を当ててみろ」

「〈天眼〉か。私は持ってないからちょっと羨ましい」

「……なんで見えてるんだよ!?」

「だって私――いわゆる『魔眼系統スキル』の上位互換スキル持ってるから」

「じゃあいいじゃん! どこが羨ましいんだよ!?」

 

 もはや嫌味にしか聞こえん。まぁ、その健気な表情からはそういうの一切感じられないんだけどね。


 というか、以前初めて見たときには「精神苦痛耐性LvⅡ」なんてものなかった。もしかしたら今日で獲得したのかもしれない。少なくともレベルは上がっていると思う。


 ……やっぱ戦闘は恐怖とか感じるもんね。一般人だからね、俺。


「〈天眼〉はまた系統が違うんだよね……と、ともかく! 早速使ってみなよ。私のスキルでは見えないものが見えるかもよ?」

「なら、それを期待しておこうかな……〈天眼〉」


 刹那、俺の視界に異変が起きた。

 扉の方を向いていると、その先が、はるか先が見えた。壁が透けて見えるようだ。これがあればダンジョンでも迷わない気がする。とても便利なこと間違いなしだ。


「ほぉ……!」


 新しい玩具をもらった子どものように辺りをくまなく見回してみる。「何かないかなぁ~」と期待に満ちた声が零れるほどにだ。


 すると、一つおかしな場所があることに気づいた。

 このボス部屋の向こう側——扉の反対側——に部屋があるのが見えたのだ。なんならそこに人影も見える。

 ついでに言えば、慌ただしく焦ったように動いていることからそれは死体ではないのも分かる。


「あっちに、誰かいる」


 俺がそう呟くと、その影はびくりと跳ねてさらに慌て始めた。


「私の〈万魔眼〉でも見れないなんて……相当な隠蔽技術だね」


 万魔眼……!? 何それかっこいい! なんか自慢された気分だよ。


「問題はどうやってあそこに行くか、だな」

「そこは私に任せなさい! 最強と名高い私が壁くらいぶっ壊してあげる!」

「だから兵器でも壊せないはずなんだけどなぁ?」


 俺の疑問を無視して、シルフィアは手に虹色の力の奔流を集め始めた。今まで見えなかった、これこそが「魔力」なのだろう。やはり〈天眼〉は超有能なスキルらしい。

 てか今回結界ないんだけど……? ご、ご臨終です。


「《迷宮の壁って(アンブレイカブル・)邪魔だよね(ブレイカー)》!!」


 バコーン! と今まで聞いたことのないほど大きな岩が崩れる音がした。その影響で煙が舞う。


「けほっけほっ……」


 少し経ち、咳が止まると既に煙が晴れており、穴の空いた部分からその先を見ることが出来た。


 そこには部屋があった。

 色は紫や黒のもので統一されていて、怪しげでありつつも中世を感じさせるような雰囲気。

 その先にも部屋が透けて見え、内装まではわからないが、同じような作りになっている。


「は、はわわ……」


 そして、その中には人がいた。


 といっても、ダンジョンの中にいるのだからただの人間ではない。

 青紫色の肌に黒い角、スーツのような服装にキリッとした赤い目、そしてメガネ。いかにも仕事の出来そうな女性といった感じだ。クールビューティーというやつだろう。


 まぁ、後ろに手をついて「はわわ……」ってひっくり返っているんだけどね……。

ちょっとでも「面白い」と思っていただけましたらぜひとも、

画面下にある☆を押して頂けると幸いです!

作者はとても喜びます!!!


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