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第9話

 ウィルク・バーチェスです。会計責任者には気持ちよく帰っていただきました。


 さて、なんとか竜素材を売り付けることには成功した。そしたらあとは簡単で、うちから優先的に購入したという()()を存分に振り回せば良いのだ。


「ご主人様。そろそろ馬車の方に」


「わかった。あ、これあげるよ」


 カトリーにアミュレットを渡す。内容としては耐魔力というお粗末なものだが、スキルと素材の質の問題で災厄級(カラミティクラス)のモンスターが放つデバフや遺物(レリック)級のアイテム効果なら全部弾けるようになっている。とはいえ、この程度じゃ気休め程度にしかならないが。


「竜王の討伐に行くと仰ったときは失礼ながらご病気を疑いましたが…本気なのですね」


「あのトカゲを倒さなきゃ山の向こうは行けないからね。今後この国がどうなるかもわからないんだから、出来そうなことは全てやっておかないと」


 馬車に揺られながらあのトカゲのことを書き起こしていく。

 基本は高高度からの炎ブレスと炎弾の乱射。たまに降りてきて脚で潰しに来るぐらいの簡単なボス…なのだが、耐久力の高さゆえゲーム時代はかなり嫌われていた。テストバージョンではこれから倒しにいくトカゲはここウキト山脈を守る守護竜という設定であり、コイツを倒せばウキト山脈を越えて教国一帯のエリアが解放されるという流れだった。

 なのだが、当時はコイツを倒すとストーリークエストの問題で王都にトンボ返りし、王城地下遺跡(ラストダンジョン)の最奥にいるラスボスを倒してメインは終わりっていうなんとも駆け足な展開だったため、印象の薄さと時間を喰う硬さからプレイヤーは「飛ぶ硬いトカゲ」と呼び嫌った。

 で、肝心のウキト山脈より北の教国エリアについてだが、当時は行けなかった。地上にはこれから大規模な開拓が行われるっていう話をするNPCと先遣隊っぽいNPC、空中には見えない壁は存在しないもののある場所を境に裏ダンジョンへの入り口となっていたからである。

 あそこから先は製品版を買ってね。ってことだったんだろうが…ラスボスを倒した後の展開が急過ぎて製品版を待ち望んだのも既に懐かしい。


「───人様、ウィルク様!ご気分が優れないのでしたら」


「いや、大丈夫だから。その、離して、苦しい」


 カトリーのそれなりに大きい胸にキュッと締められ閉塞感に襲われる。こんな状況前世ならただただ羨ましいと感じるだろうけど実際になると…閉塞感が強すぎてダメだな。


 咳払いしつつ竜王の特徴を挙げていくとどんどんカトリーの顔が顰めっ面に変化していった。気持ちはわかる。俺も先に竜王倒したやつから詳細聞いた時うへぇって気持ちでいっぱいだったし。


「まあ僕が前で結界と障壁を張るし、カトリーにも耐性バフをかけるから問題ないとは思うよ。最悪転移で離れてから超長距離魔法で倒せばいいから」


「なんといいますか…そんなあっさりと対処出来るようなものでは無い筈なのですが」


「言っとくけど教会が喧伝(けんでん)してる使()()とかじゃないからね」


 呑気に言い合いながらも武器の状態、障壁の付加などを行っていく。流石に互いの雰囲気がピリピリしてきた。対策や弱点がわかっているとはいえ油断はできない。もう現実なのだから。


「すみません、ウィルク様。これ以上は進めなさそうです。」


「あーほんとだ。わかった、僕らはここで降りるよ。町で待機してて」


 御者に指示を出して馬車を引き返させる。まだ攻撃姿勢ではないけど4、5匹のワイバーン…じゃない竜が視認出来る距離にいる。かなり珍しいんじゃないだろうか。ゲームの時に(ふもと)側に基本的に居たのはワイバーンだったし、今世でもそれは変わらないというのを調べてきてる。ということは…


「ご主人様、何か竜たちの様子がどこか変です。まるで焦っているような…少なくとも、こちらへの敵意があるようには見えません」


「みたいだね。山頂に急いだ方が良さそうだっ!」


 地面を力強く踏み込み、ステータスに物を言わせて勢いよく山道を駆け上がる。ちゃんとカトリーが着いてきているのを確認して更に速度を上げる。周囲の景色が凄まじい速度で変わっていき、魔獣をも無視してあっという間に山頂に辿り着いた。


「竜王がいない?あ、でも確かゲームの時は…」


 空を見上げて睨む


「上からポップしてたな!」


 バッサバッサと大きな一対の翼を羽ばたせながら巨大が山に着陸する。土砂崩れでも起きるのではと思ってしまうような振動と共に、竜王が咆哮する。ここまではゲームの時と一緒だ。となると最初の攻撃はブレスしながらの上昇なんだが、雰囲気が違う気がする。


「ッ!ご主人様っ、こちらに向かってきます!」


「予感当たったぁ!?とっ、取り敢えず来んな!」


 水、風の複合魔法で竜王を高く打ち上げる。しばらく錐揉み落下していたが、途中で体勢を立て直し吠えてくる。そのまま落下してれば楽だったのに。

 愚痴を漏らしても仕方ないので、カトリーに前衛を張ってもらい後方から魔法でチクチク突つくことにする。


「ハァァァァァッ!止まりなさいっ、このっ!」


 カトリーの鬼神の如き戦いっぷりに呆気に取られつつも、魔法で援護射撃しながら竜王の様子を観察する。どこか違和感があるというか、違和感しかないというか。

 さっきカトリーが放った、影で出来た剣をブワーっと飛ばす魔法を()()で受けていたのが頭の隅に引っかかる。ゲームの時もそうだが竜種は背中の鱗が厚いので敵の強い攻撃を背中で受けようとする。なのに竜王は絶対に背中を見せてこない。もしかして背中に何かあるのか?

 

 風魔法を使って思いっきり飛び上がる。望遠魔法で竜王の背中を隈なく見ると明らかな異物が目に入った。竜王の体表にはない魔石だ。


「一先ず剥がすしてみるか。狙って狙ってー…そこっ!」


 狙撃型の魔法で魔石を撃ち抜き粉々にする。するとあら不思議、竜王がいきなり動きを止めた。


 大丈夫だよなこれ?

お久しぶりです。

所用重なりまして中々着手出来ませんでした。申し訳ありません。

次は来月辺りに出せたらなと思います。多分。

少しでも面白かった、また読みたいと思われたら⭐︎や感想のほどよろしくお願いします

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