これだから戦闘狂と異世界人は
『くくく、さぁ、かつての仲間と戦うがいい』
『……はい』
『やめてぇっ!!目を覚まして!!』
敵に操られてしまったかつての仲間!
果たして、主人公達は仲間を助け、悪の親玉を倒すことができるのだろうか!?
「ううっ……なんて悲しい戦いなのっ。酷いよ、こんな仕打ち!」
大人という年齢になっても、操られた仲間と戦うなんて悲しくて辛いと。沖ミムラは泣きそうな顔で、子供向けのアニメを視ているのだったが、同じくアニメを視ている3人は
「……………」
「……………」
「……………」
全然、悲しそうではなく、嫌に前向き。それに気付かず、ミムラはみんなに
「アカリン先輩達はどう思います?もし、私が操られてみんなを襲ったら……」
「「「普通にぶっ飛ばす」」」
「ちょっと!?少しは悩んでくださいよ!!」
敵に操られた仲間と戦うシチュエーション。一般人にはあり得ない事ではあるが、ここにいる4人は地球人や異世界人。共通するのは、べらぼぅ危険で強いという事だ。
「当たり前じゃないですか!ミムラさん!」
「ミムラ、あんたは運命操るんだから、敵に回ったら速攻で殺す」
「この中で一番危険なのは、あなたよ!!」
「なんでよ!?」
沖ミムラ。”天運”を持つ超能力であり、あまりの運の強さで運命を捻じ曲げる。そして、本人にも制御できない危険過ぎるもの。
「特殊能力もヤバイのに、身体能力も中々高いんだからね」
山本灯。(通称、アカリン)”拳女王”の超人であり、その身体能力は極限に至る者。彼女の構えた姿を見た時、すでに攻撃は終わっている。
「のんちゃんも同意です!絶対に潰します!」
阿部のん。(通称、のんちゃん)”独占”の魔術を持ち、名の通りにあらゆるモノを独占する。彼女の気持ち次第では世界すら支配できる可能性がある。現在、小学生高学年。
「倒す理由が固まれば、即座にヤル」
裏切京子。”裏”の魔術を持ち、表裏ハッキリするモノ・現象を操作しては、裏返す事ができる。
4人共、この地球に存在する化け物ではある。そんな化け物達だからこそ、思考が通常とは異なるだろう。だからこそ、異常の癖して通常の思考を持つミムラがとても恐ろしい。
それはそれとして
「じゃあ。アカリン先輩達はそーいう状況だったら!どーしますか!?答えは決めておくべきです!私だったら、殴るのは分かりましたけど!!」
敵に操られた仲間と、どう向き合う?その答えはその時にしか分からないが、事前に約束することで行動ができるだろう。
化け物の能力に頼らず、強さも備える3人。一番に答えたのは、山本灯。
「敵の親玉を狙うわ。仲間を操って調子こいて観戦しに来た奴を殴る。操られた仲間は無視。攻撃してきても無視よ」
「……おぉ~。アカリン先輩!カッコいい!!」
「あたしならねって話」
洗脳類なら元を断てばいいという答え。それが簡単じゃないと分かっていても、確かに敵役はこーいう時に近くにいるもの。ミムラはその答えが一番良いなって思う。答えを言うのも速かったのが、高得点。
「のんちゃんなら逃げます」
「やっぱり、のんちゃんらしいねぇ(子供の意味で)」
「そうですか?のんちゃんは戦わないだけで、例えば、ミムラさんにその役を譲るつもりです。別に戦ってもいいけど、ヘイトを買っちゃうし。あとは灯さんと同じです」
「あ、そーいう理由……」
のんちゃんとしては逃げるという選択だが、操られている仲間を他の奴に任せるという手段。(他にも仲間がいるって想定で)しかも、仲間同士で戦うという遺恨を残しかねない。洗脳とかはどうであれ。嫌われるのは嫌だ。
子供だと侮ると、ドライな対応や行動をするんだよなぁ。
逃げるではあるけど、嫌なことは他に回すってイヤな大人になる。
「なんか思いました?」
「「「いえ、何も」」」
のんちゃんの将来。大物になる事、確定の対応を聞いた後。最後に
「はいはーい!私なら……」
裏切京子がこんな場面をどうするかって話。まるで解決してねぇもんだが、
「その洗脳の仕方をご教授させてもらうわ!」
「いや、仲間を助けろ!!」
灯の正論に対し、裏切は自分の妄想に走り
「だって!洗脳なんてできたら、あんな人やこんな人と仲良くなれるのよ!ぐふふふ、そ、そ、そーいう関係になっても宜しいじゃない!!ああっ、仲間以上の関係も……」
「のんちゃんは耳塞いで~」
「な、なんでですぅ?」
子供には聞かせられないとして、ミムラがのんちゃんの両耳を塞ぎ、裏切の特殊性癖というか。歪んだ愛情を喋らせてあげる。洗脳という類であれば、あんなことやこんなことがし放題。世界の命運とかが掛かっても、そんなもんは自分の世界じゃないって感じだ。
灯もミムラもあきれ顔になっても、裏切はベラベラと語る。
「まったく、裏切は~……」
「親玉が逆にドン引きしそうです。ある意味、攻撃かもですね」
「のんちゃんの耳を早く解放してください」
3人にそれぞれの対策・行動を聞いたわけだが、肝心の本人のやり方を灯が尋ねる。
「あんたならどうする?」
ミムラがそうなった時、どうするか?
迫真の表情で、
「テレビを消します!!(この世界を消す!)」
「サラッと泣きながら怖いことすんな」
マジでやりそうなんだよなぁって、灯は自分が一番まともだと思った。