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婚約破棄の悪役令嬢は娶られ、翻弄され、溺愛される  作者: 一番星キラリ@商業ノベル&漫画化進行中


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17/32

キスは薬?

 レオニス抜きで夕食が始まり、そこで何があったか、私は話すことになった。


 さすがにそうなると、私が悪女と言われている件を、話すことになる。


「ああ、新聞ではいろいろ書かれているな。だがその情報だけを、鵜呑みにするつもりはないからね。目の前にいるラザフォード公爵令嬢は、とても悪女には見えない。新聞が面白おかしく書き立てるようなことも、しているとは思えない」


 スターフォード伯爵がそう言えば、スターフォード伯爵夫人もこんな風に言ってくれる。


「レオニスはあの通り、とにかく猪突猛進の一直線な子なのよ。騎士になる、魔獣を討伐する、あなたを好きになる。もうとにかく真っ直ぐ。利害とか打算とか、とてもできる子ではないわ。不器用な子なのよ。それでいて好きな相手に、ストレートに好きって言えないような子だと思うの。もどかしいかもしれないけど、レオニスのこと、よろしくお願いします。あの子はラザフォード公爵令嬢との婚約を、解消するつもりはないと思うわ」


 既に婚約契約書へのサインは、レオニスと私、共に終わっている。勿論、双方の両親のサインも済んでいた。私の両親のサインは今日、実家を訪問した際にもらっている。後はこの婚約契約書を、提出するだけだった。宮殿に設置されている血統管理局という、貴族の婚約・婚姻を管理する国の機関へ。受理されれば、正式にレオニスと私の婚約が成立することになる。


 この大切な婚約契約書は、馬車の座席の下の荷物置き場に、実は仕舞われていた。無事、持ち帰ることができ、今はスターフォード伯爵が預かってくれている。


 夕食の前に入浴を終えていたので、食後は部屋で寛ぐことができた。


 レオニスが帰ってきたら、話をしたいと思っていた。彼の真意を知りたい……そう思っていたのだ。でもそれは不安と緊張も伴う。しかもレオニスはいつ帰ってくるか分からないのだ。そんな落ち着かない気持ちがありながらも、私はそのままベッドで寝てしまった。


 エアリルは優秀な侍女だから、ちゃんと私の頭に枕をおき、ブランケットもかけてくれている。


 そして――。




『ジェニー』

『レオニス様!』


 紺色のローブを着たレオニスがベッドに座り、横たわる私を抱きしめた。


『可哀そうに。首を絞められたのだな』

『首を絞めるというか、声を出さないよう、押さえられただけです』


『チュッ』と音がして、レオニスが私の首筋に……キスをしている!


『レ、レオニス様、な、何をされているのですか!?』

『この赤みを押さえるための薬をつけている』

『!? キスが薬なのですか!?』


 動揺する私が手を伸ばし、レオニスの頭に触れていたのだけど。

 その手は彼の手と共に、マットレスへ押し当てられてしまう。


『沢山のキスマークをつければ、赤みが目立たなくなる』

『えええっ!?』


 とんでもない提案をされているのに、嫌ではなかった。

 むしろ……。

 レオニスがキスを繰り返すので、私の息遣いは荒くなっている。

 つまりはとんでもなく甘い衝動に全身が包まれていた。


「うんっ……」


 ハッキリと自分の声が聞こえ、目が覚める。

 首の辺りがなんだか爽快に感じた。


 あ、キスは本当に薬なのね。

 すーすーして気持ちいいし、効く気がする。


 頬がほころび、「あれ? でもキスは夢の中の出来事では?」と気づき、一気に覚醒が進み、目が覚めた。


 大変強い視線を感じ、目を開けると、そこにレオニスがいる。


 キャラメルブロンドの前髪は分け目がいつもと違い、碧眼の瞳は力強く輝き、真剣な表情だった。白いシャツにズボンという軽装姿であり、もしかすると徹夜明けで帰宅し、入浴した直後では?と思えた。


 レオニスは手に、円形の平べったいブリキ缶を持っている。前世の青いパッケージのハンドクリームを思い出す。


 あ、レオニスが首筋に薬を塗ってくれたのだわ。


 それで私、キスをされたなんて夢を見てしまったんだ……。

 急に恥ずかしくなり、最後に出した声、聞かれていないわよね!?――と少し焦る。冷静を装うため、まずは挨拶をした。


「お、おはようございます、レオニス様」


 なるべく落ち着いた風に見えるよう、ゆっくりと起き上がり、でもそこでハッとする。昨日は胸の谷間を指摘されていた。よってネグリジェを確認してしまう。


 今回のネグリジェは、淡いラベンダー色で、鎖骨は見えない。つまり谷間が見えているなんてことはない。それにちょっと安心する。


 でもその安心は、次の言葉でひっくり返った。


「ああ、おはよう、ジェニー」


 ……! 心臓がドキリと反応する。

 ジェニーと、またニックネームで呼んでくれた。


 エアリルは「新聞に合わせた態度をとっただけだ」と言ってくれた。襲撃の場で、突然レオニスの態度が変わった理由を。


 ニックネームで呼んでくれたということは、エアリルの説が正解なのかしら?


 それにスターフォード伯爵夫妻は、襲撃犯の脅しを気にして、レオニスが婚約を解消する……そんなことは言いださないと言ってくれた。


 なんだがドキドキする。


 一方のレオニスは、疲れた様子で自身の髪をかきあげた。

 指先からサラサラとキャラメルブロンドの髪が流れ落ちる。


 なんだか男性なのに色気があるわ……。


 いや、そうではなく。

 彼には聞きたいことがある。

いつもお読みいただきありがとうございます!

感謝のサプライズ増量更新でした☆彡

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