フェイクツー
少年は、ある時から少年ではなくなった。少年は器として生きて来た、ギフトを与えられるその日こそ彼は彼でなくなる日であった。
【ニューワールドオンライン】先行プレイの20名の男女が、この世界に入って来る。少年は、20名の中の1人の器としての使命を承ったそして約束の日、彼の中に1人の魂が入る。
少年は、彼を受け入れ混ざり合う、元々細々とした自我は彼の強い自我によって食いつぶされ少年の自我は消失した。残った身体と彼はこの世界の空気に馴染み始める。
彼は、吉野拓馬。称号:2人目 ユニークスキル:フェイクツー
この世界での彼の呼び名は、ゲイルである。
「へーこのガキ、ゲイルっていうのか。うおっ記憶?データが頭に流れ込んでくるみたいだぜ。お!あいつ、何だっけ?カイルの兄貴のラ...ライル。こいつプレイヤーじゃあねぇかー?このニューワールドオンラインでもプレイヤーキルが出来るのかぁ!!高まるぜぇ!!俺合わせて20人だろ?くっそ少ねぇなぁ。まあ、全員殺すし別にいいか。女もいるといいなぁ俺は、殺す前に標的をなぶり犯すのが堪らなく興奮すんだよ、こういうのは大体セクシュアルハラスメントシステムによって阻まれちまうが規制がガバガバなゲームは結構許されるのな。んでこのニューワールドオンラインはシステムが未完成なのかセクハラシステムは搭載されていないわけだ、犯し放題じゃねーの。んじゃ早速行きますか」
彼、吉野拓馬はあくまでも村の中ではゲイルを演じることを心掛けている。怪しまれずにここのNPCとしてライルに必要以上の警戒をさせないために、どう料理するか計画を練っていた。ある意味ではロールプレイと言えなくもないだろう。
そして、思いついたのだ。周りからじわじわと毒の様に攻める方法を。
彼は、ユニークスキル:フェイクツーを使う。フェイクツーの効果は、フェイクツーも合わせて、所持しているスキルを別のスキルに偽装する能力。偽装するスキルは本人が自在に決めることができる。再偽装は時間がかかるが性能は、元のスキルと同等効果をほこる。このユニークスキルが他人にバレた場合偽装で得たスキル効果を失う。二度目の正直として、もう一度スキルの偽装を行うことができるが三度目はなく、バレればユニークスキル:フェイクツーは永遠に失われる。
そして、彼はフェイクツーをスキル【洗脳】に偽装したのだ。
まずは、村でつるんでいる腰巾着の二人、アルメラとクイントンだ。更に村を歩きやすくするために他の子供を遊びに誘い洗脳しようと試みたが失敗した。だが、まだ始まったばかり
だ、とりあえず両親と兄弟も洗脳を済ませておいた。
他の村人は残念ながら、洗脳が弾かれてしまったので三人でライル達を追う事にした。
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ライルがアルメラの植物操作により森の奥へ連れ去られたあとのこと。
戦況は最悪でゲイル達三人とカーム・ディンク・ベルンの脳筋三人組が敵にまわった、この六人で来られたら終わるが、ゲイル達三人は、高みの見物。悔しいが脳筋三人組との戦いだ。
俺は、ディンクと勢いで戦うことになったが凄いやりにくい、ディンクは手加減なんてものは一切なく殺意の限り俺に長剣を振るう。
「裏切者!!裏切者!!なんで俺なんだ!?なんで俺ばっかり」
「何言って...」
ディンクは、気配察知と神速を用いてカイルの動きを先読みする。
この攻撃の仕方は、前にも魔物討伐の時に見たが、実際に攻撃を向けられるとは思わなかった。
「お前はいつも俺を見下してたよな?」
「見下してなんかいないだろ?逆にディンクから絡んで来ることが多いじゃないか!」
「うるさい!うるさい!死ねぇ!!」
ディンクの長剣は神速の速さでカイルの胸元を貫く、貫いたが貫かなった。矛盾しているが仕方ない。本当の事なのだ。
「どうして、心臓を貫いたはずなのにどうして何ともないんだよ」
「今のディンクに言う必要はないよ」
カイルは、長剣に魔力を込める、闇の魔力は影を纏い死とともにある力。それでも殺す力ではない。
生かす力にもなりえる力、彼のスキル聖魔人によって闇の力は精度を上げていく。
「何を!」
ディンクも何かを悟ったのだろう、表情が強張っている。
長剣をディンクに向ける。今まで使ったことのないスキルだったが、使いやすいと感じるとともに魔力がごっそり持ってかれる。そして放たれる。
「影纏偽装斬」
「ぐあっ」
ディンクはその場で倒れこむ、だが息はある。
「スキルレベル1で技なんか出せるわけないだろ。はあっ、みねうちでも魔力が結構持ってかれた。ラリア達の援護にむか....わ..ない....と」
カイルは膝を着く、そして意識が遠のく。カイルの背後にはいつの間にかアルメラが立っていた。
「これで良かったのよねゲイル!」
「ああ、不意打ちとかでもねぇと状態異常は届かねぇと思ったんだよ。だがなんでかね、この村の奴らは皆、耐性やスキルの成長速度が異常じゃねーか?なんか特殊なとこだったりしてな」
「あとは、ラリアとアメル、それとメローだけだね!ちゃんと治してあげないとだね」
「そうだな、泣いて喜ぶんじゃねーか?」
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この最悪の状況で、ラリアは軽傷でアメルは呪文練っている。
「<攻撃力上昇><守備力上昇><速度上昇><魔力上昇>をラリアさんに付与するの。あまり持続しないの、持ちこたえてなの」
「了解、これでも年長者。カームとベルンは任せなさい!」
カームとベルンは、ラリアを警戒し攻撃の隙をうかがっている。
「私は負けないわ、一発で仕留める」
ラリアの周りの魔力の濃度が上がる、放出した魔力を火の玉と水の玉に変え自身の持つ剣に纏わせる、普通なら中位魔術師以上でなければ出来ない芸当をそれも魔術師でもないラリアが行える理由は、アメルの強化魔術<魔力上昇>のおかげである。この強化魔術はアメル独自の魔術であり魔力を使ったあらゆる効果を大幅に上げる効力を持つ。だが、術者の精神負担が大きいのが難点であるが、それを同様にアメルは他三つの強化魔術をも維持している。
「喰らいなさい!火水双」
火属性と水属性の二連撃をカームに向けて放つ、一連撃目の水属性の刃は水流でカームの槍を絡めり、二連撃目でカームの身体を焼く。
殺すまでに至らない程度にカームを焼いた、これでカームは大丈夫...カームは?不味いベルンが居ない!
「やめるの!ベルン...はぁ..っ。私だって冒険者を目指してるの!!負けないの絶対負けないの!!」
ベルンはそれに反応せず小さく口元を動かす。
「トリプルアップ」
<トリプルアップ>攻撃力、守備力、速度を小上昇させる強化魔術。
「させない!アメルは私が守る!」
「うるさいっ!!」
「かはっっ!!」
ラリアは、ベルンに突っ込んでいったが強化魔術もとうに切れ、トリプルアップを積んだベルンの攻撃をモロに受ける。
「駄目、ベルン....やめて」
「しねねねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
金属がぶつかり合うを音がする。
「やっとオイラの出番ってわけだな!」
ベルンの刃を受け止めたのは、メローだった。
「メロー!!いたの忘れてたの」
「おいおい、ずっと近くにいたぞ!まっそういうことだ、殺すのは諦めろベルン!アメル行けるな?」
「はいなの。<状態解除>なの!!」
これで、二人の洗脳は解け....たの?
「ああ、解放されたぜ?だがまだだな今度は、お前らも一緒だぁ!」
突如背後から現れたゲイルになすすべなくその場の者は洗脳の餌食となる。
「あとはライルお前だけだぞ?」