間話 めざめる災禍
私、アレア・フルグレアはソノルに子供を残し、夫と王都のルナマリアに仕方なく仕事しに来てる。あの国王が命令しなきゃ私達夫婦は、子供達と平和に暮らしていただろう。
私達夫婦の仕事は本当なら冒険者なのだが、王国に気に入られ叙爵させられたせいで仕事を任されてしまった。
私達夫婦の仕事は他国からの連絡を受け取るメッセンジャー、まああんまし連絡が来ないので雑用を押し付けられてるんだけど、てか王国貴族仕事しろ!あの国王に文句言ってやろー。
そんな時だ、辺境の村ソノル。そこに隣接する様に広大に広がる森。そこの領域を守護する耳長からここ王都【ルナマリア】に手紙が来た。それも緊急で。
フォレストの管理者、エルナ・グリーンベルです。
緊急事態が発生しました。フォレストが私の管理下から外れました。
「っ!」
そのメッセージは絶望の始まり。
「メッセージ、陛下無礼失礼します。緊急プランFです。戦略級魔法進行の森が活動を再開しました。近隣の村町の避難要請を!私達夫婦も先に避難誘導の為向かいます」
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歴史に残る最悪。
第三章 災禍の創造魔法と森の人々
戦略級魔法進行の森、森の子の始祖真なる森、古代ハイエルフが何百何千と集まり究極の魔法の創造という大規模な魔導儀式を行い、三千人以上の犠牲を出し生み出されたエルフの切り札である。他種族を嫌悪した初代ハイエルフの女王が他の種族の滅亡を祈って術式を組んだとか。
この魔法が発動した一帯をエルフ以外が住めない森にする力を持ち、森に入った他種族を養分にして範囲を拡大するといったものだそうだ。そして、一番厄介なのは森自体、この魔法自体が生きており錬金術で言うところのゴーレムやホムンクルスの様な存在ということだ。
魔法の発動者に忠誠を捧げ、命令を遂行する。発動者が死しても止まることはなく、魔力がなくなると活動を停止させ、森に入ってきた他種族を糧にまた動き出すといったものだ。
かつて生み出した初代女王は一度も使うことは無かったが五代目の王が他国との戦争に持ちいろうとして悲劇は起きた。この魔法は、純ハイエルフの為に作られたものなのだが王は知らなかった。
三代目辺りから出生率が落ち、自身らの血に他種族を交えるようになり四代目からは種族の位は一段下りていた、ハイエルフではなくエルフに。
だが、エルフの王族はその汚点を隠してしまった、エルフになってしまった王族達は自分達がハイエルフだと振舞い続けたのだ。
エルフの代替わりなんて早々変わるはずもなく、長命故にその悪い因習が根付いてしまっていた。
その弊害か、王侯貴族の常識では習わなかったらしい、お前はハイエルフではないということを、五代目は習わなかった、家臣や民達は自国の戦争の勝利を確信して歓声に沸いていた。
戦争の開始に、フォレストの魔法が放たれ、案の定森は制御が効かず、敵味方に甚大な被害を出す形となりエルフの国は滅んでしまった。森を残して。
残ったエルフや隠遁していたハイエルフは、自国の罪を背負い、人の国、現王国ルナマリアに従属を誓ったのだった。