森に入る子供達
今日は、弟のカイルとカイルの友達と村の周辺に広がっている森林に遊びに行く予定になっている。
今日の為に少しスキルのレベル上げを頑張った。
俊敏のレベルをカンストさせた、毎朝走るようになってメキメキと速くなったのだが俊敏が【進化】して【神速】というスキルになった。
スキル:神速
レベル1
人以上の存在の速さ、スタミナ・疲労の自然回復力大上昇。
この神速になったのは良いが、スキルレベルが上がらなくなった。俊敏の上位互換だけあって凄いスピードが出るようになったがまだ弟や兄のスピードに追い付けない。クソ速い。
他のスキルは愛し子がレベル5になった。テイムした三匹を撫でまわしていたらいつの間にかレベルが二つ上がっていた。スキルの能力は、異性15%同性10%の確率になり身体能力中上昇、テイムした魔物などに愛し子の効果を一時的に付与することができるようになった。
最後に魔法スキルレベルが4に上がり、魔法スキルに含まれている風属性魔法のレベルが3になった。
アイル兄さんから「奥に進み過ぎるなよ」と注意を受けた。
遊ぶ予定の森は、魔物もあんまり入って来ないしもし入って来ても弱いから簡単に対処できるから心配いらないらしいが、奥に進むとかなり高ランクな魔物が出てきたり、毒がある植物の群生地だったりするんだとか。
そして弟共々、兄に口酸っぱく言われたのが最奥地の森にだけは決して入るなと言われた、一応理由を聞いてみたところその奥は人の領域ではないらしく、入った人・間・を害する魔法の森だという。
「まあまず、人間は魔力酔いしやすいから魔力の濃度が低い最奥地の手前までしか入れない。あんま心配しなくていいぞ。気持ち悪くなったら進んでる方向は危険なんだなって分かると思うし」
「分かったよアイル兄さん」「分かった兄さん、なるべく危険がないようにするよ」
そんな会話をしていたら、時間になる。集合は村の出入り口辺りにしているという、早速行こうとするが兄に止められる。
「どうしたの?」
「これを持っていけ!」
兄から投げ渡されたのは、皮の袋。その中には、木で作ったであろう水筒が二つと鉄製のナイフだった。
「これは?」
「水筒は、喉が渇くだろう?ナイフの方は護身用だな本当ならもっと早くに渡すんだが、ライルは病気で外に出ることはなかったからすっかり忘れてた。この村では15歳になる子供には護身用の武器をあたえることになってるんだ。その証拠にカイルも身に着けてるだろ」
横目で見ると、カイルの腰には鉄製の長剣が付いていることが分かった。
「じゃあ気負付けてな!」
僕と弟の二人で集合場所に向かうと、見たことはあるが喋ったことはない子供達と目が合う。
そして、子供達の中から一人こちらに近づく者が現れる。
「あら、あなたがカイルのお兄さんのライルかしら?私は村長の娘のラリアというのあなたと同じ17歳よ。一応、子供達の保護者として同行するからよろしくね」
「うん、こちらこそよろしく」
そんな感じの自己紹介をしていると、他の子供達もこちらにやってきて次々と自己紹介をしてくれる。
「俺はカームだ。これからよろしくなカイルのにーちゃん!!」
「私は、えっとそのアメルっていうの。よろしくなの」
「オイラはメローってんだ、仲良くやろーや」
「俺は、カイルにもお兄さんにも負けないんで」
「ちょっとお!ディンクいきなり喧嘩売ったりしないの!あっアタシはベルンよろしくね」
「うん、よろしく。僕のことはライルって呼び捨てで構わないから」
みんないい子そうだ、特に悪い印象もないし。あいつらとは大違いだ。
いきなり、ディンクには喧嘩を売られたがいつものことのようなのでスルーしていればいいらしい。
僕らは、ある程度自己紹介をして森に向かう。
■□■□■
俺は、ゲイル!この物語の主人公と言っても過言じゃない男だ!!
今日は、暇だから外で遊ぼうと思っている。だが、一人というのもつまらないので村の奴らを誘ってやる。だが...。
「何?遊べないだと!!カーム、この前暇だって言ってただろ!!だから俺が遊んでやるよ」
「この前は暇だったけど今日はカイル達と約束があるから無理だよ」
カームの奴、俺が誘ってやってんのに断りやがった。
あとはディンクかメローか...だがこちらもカイルと約束があると言って断られてしまった。
なんなんだ、みんなしてカイルカイルって気持ち悪りぃ。
しょうがないので、いつものアルメラとクイントンを呼ぶことにした。
「あいつら、俺の誘いを断りやがったんだぜ。いつも良くしてやってんのに」
「え!ゲイルの誘いを断るって馬鹿なのかしら?」
「馬鹿なんだよ!きっと頭悪すぎてどうにかなっちゃったんじゃない?」
「もしかしたら、あの娼婦から病気貰ったカイルが病気を他の奴らにうつして皆おかしくなったんじゃないか?」
「そうかも!じゃあ私達で病気を治してあげないと」
「そうですね!治してくれたお礼に一生お供しますってついてくるかもね」
「で病気をうつしたあの娼婦はきっと村から追い出されるんだわ!」
「じゃあ、早速あいつらの病気を治しに行こーぜ」
自分達の考えることが全て正しい、あいつらは間違っていると信じて疑わない。もうこの時点で碌な大人にならないことが分かってしまう。どうしたらその考えに行きつくのかこれが分からない。
そんなこんなでゲイル一行はカイル達を救い、悪の権化たるライルを村から追い出すべくカイル達を追うのだった。
■□■□■
森に入って数時間、何も出ることはなくゆっくりと森の中を散策する。
「そういえば、カイル。この森に来た目的って何だったんだ?」
「あれ、兄さんに言ってなかったっけ?宝探しのこと」
「宝探し?」
聞いていない、初耳だ。じゃあ、今日はトレジャーハントしに来たってことか?この軽装備で、普通一人か二人は大きめな袋とか持ってくると思うが、武器と防具を装備しているだけの様に見える。まあ、自分はそれ以下なのだが、武器は朝貰ったが防具と呼べるものはいつも着ている古着だけだ。
「こんな、軽装備で大丈夫なのか?」
「問題ないわ、宝なんて見つからないの前提で来てるし、もし見つかっても大人に獲られちゃうからないも同然よ。そして、今日来たのはこの探索で少しでも強くなることなのあなた以外のここにいるメンバーは冒険者志望だからね」
これも初耳、兄も冒険者になりたいって言ってたけど冒険者って人気なんだな。
「ねー、カームにカイル!ここら辺で休憩しない?」そう持ち掛けたのはベルンだ。
「ふわぁ、私もちょっと疲れたかもなの」
「じゃあ周りを確認して休憩しようか」
「そうだなカイル」
皆休憩の為、武具を外そうとするがそれを止める者がいた。
「待て、皆。武具を外すのはまだ早そうだぞ。俺の【気配察知】に俺ら以外の生き物の気配あった。それも俺達を尾行してるみたいだ。」
「えっ、ディンクそれって本当なの?尾行って私達を狙ってるってこと?」
「確証はないが、多分それであってると思うぞ」
急な展開だな、それに知らんスキルの名称が出た。観察眼で見れるかな?
ディンクの様子を見ると眼をつぶって、頭に手を添えて何か考えてるようだ。
あの動作からして頭の中でレーダーみたいなものを見ているんじゃないかと思う。レーダーの範囲は尾行してる奴らから推測して小規模、精度の方は「俺ら以外の生き物」って言ってる辺り、生物の判別は出来ないみたいだ。これから予想すると【気配察知】レベル3ってとこかな?ってうわー初めて観察眼使ったけど、こういう感じになるのか。無意識に思考して今考えられる結果を導き出すって感じか。この無意識の中での思考は場所と導き出したいものによっては危険かもしれない。このスキルの発動時は無意識の中思考するから他の行動が一切出来なくなり無防備になる恐れがある。
この思考速度約15秒、まあまあ長い。と考えていると気配の張本人が現れる。
「やあやあ諸君、俺の誘いを断ったと思ったら娼婦の兄弟と何しているんだ?」
現れたのは、ゲイルとアルメラとクイントン、そうあの三馬鹿だ。
彼ら三人は、こちらに武器を向けている。
「お前らが、つけてたんだな?危害を加えるのであれば容赦なく返り討ちにするが何か反論はあるか?」
カームが武器を構えながら、警戒を解かずゲイル一行を観察している。
他の皆も警戒して身構える。
「おいおい、何勘違いしてんだ?俺らはお前らを助けに来たんだぜ?」
「そうですよ!その娼婦に唆されてこんな人気の無い森にまんまと連れてこられた哀れな者達を救済に来たのにその態度はないんじゃないですか?」
「そうよ!平伏ぐらいしたらどうなの!?」
何言ってんだこいつら。
ゲイルは、口角を上げニヤニヤとしている、他の二人は汚いものを見る様な目をしている、というか目が死んでる。教会で見た時はもう少し明るかった気がするが今はどうだろうか?
「ねぇ、カイル。僕を30秒ぐらい守れる?」と小声でカイルに聞く。それに対して、理解はしてないようだったが頷いてくれる。
「なんなんださっきから!意味わからないことを言うな!」
「意味わからないって、助けに来たって言ってんだろ!お前らは病気なんだよ!!そこの娼婦から病気をお前らは貰ったんだ!」
暴言を吐かれて指をこちらに向けられているが、知ったことではない。観察眼でアルメラとクイントンを見た結果が案の定、状態が洗脳だった。教会で見たときは、洗脳の効果はアルメラとクイントンに馴染んでいなかったのだろう、だが今は完璧なゲイルの傀儡になり果てている。洗脳の解除は、所有者が自ら解くか回復魔術以外に思いつかない。とりあえず、このことを皆に伝えようと思うが、皆の様子がおかしい。
「おれ...たちは病気?あいつのせい???」
「やっぱり、カイルは俺のことを陥れようとしてたんだ!」
「少し怪しいと思ってたのよ、また宝探しをやろうなんて!!私をこの森に連れて来た理由は邪魔なあたしを始末する為だったのね!?」
最悪だ、カームとディンクとベルンまでもが洗脳された。
「ねぇ、どうしたのベルン?」とアメルがベルンの袖を引っ張るが弾かれてしまう。
「チッ、全員とまではいかないか。だがカームとディンクとベルンはこちらに下った、戦力は俺らのが上だな!最初はこの村から追い出すだけにしとこうかと思ったが邪魔だし始末するか」
「何を言っているの?彼らに何をしたの?返答によっては子供だろうと容赦しないわよ!」
ラリアは長剣をゲイルに構えるが、背後からラリアを攻撃する者がいた。それはカームだった。
カームの武器は槍でラリアを薙ぎ払う。不意打ちを喰らい吹っ飛ぶラリアは大樹に背中を強打する。
「どう...して、カーム?」
唖然とするカイル達に対して無情に返答するカーム。
「どうしてもなにもないだろう?お前達が裏切ったんじゃねぇか」
ベルンやディンクも無言でこちらに武器を向ける。がアメルがいち早く行動しラリアの元まで向かいラリアに杖を向ける。
「生命を司る者よ彼の者の生傷を癒したまえ、ヒーリング!」
彼女の杖から放たれたの光の輪がラリアの身体を包み込む。そして、ラリアの傷はゆっくりとだが確実に塞がって癒えていく。
ライルは他の子にも聞こえるように大きなこえで言った。
「みんな!!カーム達はゲイルによって洗脳されてる!」
みんなに聞こえたのだろう。何をしたいのかも伝わったらしい。
「俺達は、カーム達を足止めするよ兄さん!隙を見てゲイルに攻撃する」
「私は、後方からサポートするの!状態効果の解除や強化魔術バフはまかせてなの!!」
「わたしも負けていられないわね」
「チッ、洗脳がバレたか。勢いもついてきている、おいアルメラ!あれをあの娼婦に使え!!」
「はい」
なにか仕掛けて来るらしい、アルメラが地面に触れると一瞬だけ地面が波打った。そして、その地面からは無数の植物が生えてきて周りの植物と同調してこちらに向かってくる、植物...ツルが僕の身体に巻き付こうとするがラリアがそのツルを切り飛ばす。だが、ツルは再生し僕を捕縛し森の奥へと連れ去る。これがゲイルの目的、僕の始末。
「兄さん!!」
「よそ見するな!!俺を嵌めようとしたお前を絶対に許さない!!」
「ディンク、俺も兄さんをこんな目に合わせたお前らを絶対に許さない!!」
カイルの瞳には憎悪の色が浮かぶ、殺意を放ちディンクを迎え撃つ。
そして、ゲイルは愉快そうに笑っていた。