第1話
「ヒューレッド様。」
ヒューレッドと呼ばれた青年は声のした方を振り返った。黄金に輝く髪がふわりと舞った。
「……マリルリ様。」
ヒューレッドは目の前にいる女性に向かって膝をついて最敬礼をする。目の前にいる淡いピンクゴールドの艶やかな髪を持つ美少女がこの国の唯一の聖女だからだ。
聖女は国を守り、国を発展させるとして王族と同等の待遇を得ている。そのため、宮廷魔術師でしかないヒューレッドはマリルリに対して最敬礼をするのが礼儀であった。
「ヒューレッド様。私、あなた様の子を身籠もりましたの。」
「はあっ!?」
ヒューレッドはマリルリに何を言われるのか緊張しながら待っていると、マリルリの口から可愛らしい鳥のさえずりかと思うような声とともに衝撃的な一言を告げられ、目の前にいるのが王族と同等の地位を持つ聖女だということも忘れて素っ頓狂な声を上げてしまった。
だが、ヒューレッドには全く身に覚えがないのだ。素っ頓狂な声を上げてしまうのも仕方が無いことだ。
「ですから、ヒューレッド様。私と結婚してくださいまし。」
聖女マリルリは、そんなヒューレッドの様子など気にもとめず、にっこりと無邪気な笑みを浮かべてヒューレッドに結婚するようにと迫るのだった。