表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/9

王宮のお茶会と回想(1)

「え?王太子殿下の婚約者決め茶会?」

「…まぁ、確かにそうなんだが…リア、もう少しオブラートに包むということを学ぼうか」


「はぁい」と適当に返事をしながらメインディッシュの肉を切り分けていく。公爵家ともなると一食一食が豪華で良い。まぁ一回、一食にいくらかかっているのか聞いてみたい気もするんだが。

義母と兄、義弟の会話を耳に通しながら父に先を促す。


「それで?まさかとは思いますが―」

「あぁ、君も出てもらうことになった。王命となるとさすがの私も引けなくてね」


ちっ、深窓の令嬢としてずっとやって来たというのに…ここまでだったか―ッ!!

―というか、それよりも。


「……一茶会に王命を下すこの国って大丈夫なのか…?」

「?リア、何か言ったか?」

「いいえ、なんでもありませんわ。お父様」


王太子殿下ねぇー?

彼の噂は深窓の令嬢である私でさえ、良く聞く。


曰く、その金髪は太陽の光を集めたかの様な輝きを誇り

曰く、王族特有の蒼い瞳は空を映した彼のような美しさ

曰く、筆を持てば世は平和になり

曰く、剣を取れば戦争もおわる


―とまぁこんな感じだ。いや、どこのラノベ主人公だよ。

え?彼って今八歳じゃなかった?

八歳児が戦争終わらせちゃってみんな悲しくないの?

っていうか、筆を持っただけで世の中平和になるわけないじゃんッ!


いや、マジレスはここまでにしておいて。

この噂を持ち出してまで何を言いたいかと言いますと―。

女子の醜い争いに駆り出されるのとか最悪なんですけどッ!?

絶対みんな王太子妃の座狙ってくるじゃん!

私公爵令嬢じゃん!更に深窓の令嬢じゃん!格好の的じゃん!!


あぁぁあああああああ…行きたくない。

マジで行きたくない。

ゼノ達と一緒にクエストこなす方がまだマシだよ。

いや、断然そっちの方が良い!!


あぁぁぁぁぁぁぁ~運よく風邪とか、骨折とかならないかなぁ~。



***



私はあのイケメン兄とツンデレ義弟を心の底から恨んでやるぅッ!

煌びやかな王宮を前にして私は心の中で叫んだ。


ピングゴールドの髪を持つ私は所謂"前妻"の娘だ。

え?じゃあ"後妻"もいるのかって?

えぇ、それが私の愛しのツンデレ義弟エドワードの母です。ハイ。

私の産みの母は私を産んだ直後に亡くなった。あとから知ったことだけど、私と兄の両親は白い結婚だったんだそう。―いや、でもお母様はお父様を愛していらっしゃったと思うよ?二人も子供産んだんだから。

それで私が記憶を取り戻して半年後―五歳の冬に来たのが今の母と同い年の義弟。

―記憶がある私は正直ショックだった。だってお母様が亡くなった時にはもう"義母様"との子を持っていたってことでしょ?お母様が死んだのに心の中では別の女のことを考えていたの―?って。

きっと年不相応に大人びて賢い兄も同じ結論にたどり着いただろう。

だってお兄様はそれから図書館や自室に引きこもるようになって、全く顔を合わせることが亡くなったんだもの。

知らない貴族の女、知らない義弟。信じられない父に、家族に見切りを付けた兄。

私たちブラット公爵家は私が五歳~六歳までの一年間―私が関係改善に奮闘する一年間は氷河期だった。

―いやだって私の夢(冒険者)の片手間に改善していたんだよ?しかも最初は相手にもされなかったし。

私悪くないのに八つ当たりばかり…今思い出しても最悪だったわぁ。


…まぁソレは閑話休題(置いておいて)


六歳からずっと良好な関係を気づいてきた私たち兄弟はお互いのことをほぼ何でも(冒険者だということは知られていない)知り合っているわけで…

〈―今朝公爵邸の隅にて〉


「ふっふっふ~♪誰が大人しくお茶会なんて行くものですかっ!いざ!エスケー…」


プ、と言い終わらないうちに目の前に現れたのは愛しの兄弟たち。

あれれ~?なんでこんなところにいるのかな~??

嬉しいも反面彼らの背後に吹くブリザードに笑顔が引きつる。


「姉さん、これは"王命"だよ?」

「リア、今回ばかりは逃げられん」


ぐすん。兄弟が優秀過ぎて辛い…

っていうかココ公爵本邸から死角の場所なのに!?


―と、いうことである。

そりゃ恨んでも仕方ないよね?そうだよね?

まさか全部私の自業自得じゃん!とか言わないよね?

私は"物理的な"戦場の女神な訳であって、社交(戦場)の女神ではありません。そこんとこよろしく。


豪華な馬車の窓から見る王宮が間近に迫り、馬車が緩やかに停車した。

―はぁ。回想もここまでかよ。

もういっそ逃亡しようか、という案を飲み込んで開く扉を見つめた。


「ちぃッ―行くかッ!クソッ!!」


扉の向こうに見慣れた"彼"を見つけ、最期の抵抗を吐き捨てながら馬車を降りる。


「お嬢様。お口が悪うございますよ?」


深緑の髪をした幼馴染兼従者が私へ手を差し出しながら窘める。


「ルカ。今回ばかりは見逃して」


白を基調とした動きにくいドレス(まぁ当たり前なんだけど)を翻して苦笑する。

―本当。私の友はどいつもこいつも優秀で辛い。

苦笑いと溜息は帝国の城へと吸い込まれていった。



★新キャラ登場

1、シリウス→シスコン予備軍だがしっかりしている兄。万能系

2、義弟エドワード→ガチのシスコンだけどツンデレ。姉LOVE

3、従者ルーカス→リアが冒険者ギルドへ行っていると知っている、リア唯一の協力者。


兄は二歳上、エディとルカはリアと同い年です。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ