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新パーティーと新たな仲間(おまけ)

「セイルっ!今っ!!」

火焔矢(ファイヤー・アロー)!!」


炎を纏った弓がラビットドラゴンの群れに火をつける。


「―虚空連星、氷炎星雨」


敵がパニックに陥った一瞬を突いてルーファが敵を一閃していく。

彼女の両手に持った剣が敵地を縦横無尽に切り裂き、それに合わせるようにしてゼノも彼女のフォローに当たる。


「アゼク流、連続剣技・キルストリーム」


最早敵しか見えていないルーファに息を合わせてゼノも片手剣を振りかざす。体の一部のように剣を振り、息をするように敵を殺していく二人。

―完全にもう一人いることを忘れている。


「……これがAランクパーティー?っていうか…こいつら八歳と七歳なんだよな…?化け物なのか…?」


剣先を目で追うことさえ出来ない戦場を木の上から眺めながら、セイルは独り言ちる。

視線の先には哂いながら敵を斬るルーファと、彼女をフォローアップしながらも型通りの剣技で敵を滅していくゼノ。二人とも膨大な魔力を持っているというのに、単純な剣技だけでAランクモンスターの群れをあしらっている。


「―――これが八歳のAランクパーティーなら、SSSランクパーティーって世界征服できるんじゃねぇか?………ってか完全に俺いらねぇじゃん」


呆れたように溜息をつきながら炎を纏わせた弓を引く。


「―邪魔者にはなりたくねぇし。置いて行きぼりも嫌いだぜ?殿下」


彼の零した言葉は勢いよく彼の手元を離れた弓の音でかき消された。


「!!セイルっ!!」

「!?あっ、セイル!!」


彼らの後ろに迫っていたラビットドラゴンを燃やしたことで、二人は改めて彼を認識したらしい。セイルはそんな二人に苦笑しながら、内心で二人の異常な集中力を褒める。


「敵は後十二体だ。平等に行こうぜ」

「―!了解っ!じゃあ誰か一番早く四体片付けられるか勝負ねっ!」


名案とばかりに瞳を輝かせるルーファ。…こういうのを脳筋という。


「よし―ッ!ほれ、一体!!」


早いもの勝ちとばかりに一体を燃やすセイル。

―その横顔は今までで一番輝いていたりする。


「〈青薔薇の蔓〉発動。―虚空連星、紫雲虹霓(しうんこうげい)


セイルに続くように氷魔法〈青薔薇の蔓〉で敵を固定し、連続技で敵を滅するルーファ。


「アゼク流、連技・スターバースト」


ルーファが敵を滅するのと同時に、自身を囲んでいる四体のラビットドラゴンを綺麗に半分にするゼノ。


〈火焔矢〉(ファイヤー・アロー)―!〈1〉(ウーナ) 〈2〉(トゥアエ) 〈3〉(トレース)ッ!!」


魔力で作り出した三本の火焔矢を、木の上から三体のラビットドラゴンへ向かって打っていくセイル。

…なんと言うか、異常なまでのオーバーキルに敵が可哀そうである。


「ふっふっふ~私が一番早かった!」


双剣を腰の鞘に仕舞いながらゼノとセイルを振り返るルーファ。


「はぁ?俺だっただろ」

「いや、セイルはフライングしたでしょ?」


弓矢を背負って木から降りてきたセイルをゼノが咎める。


「ふん。みんな仲良くスタートー、なんて甘いことしねぇよ」

「それでも私の紫雲虹霓には敵わないしっ!?」

「いや、ルーファよりは僕の方が早かったよ」

「はぁ?!私が一番って言っているじゃん!」


いい加減埒が明かないっ!とでも言いたげにルーファが言い放った。


「―ふぅん?でもルーファは魔法を使ったけど、僕は剣だけだったよ?」


ゼノがルーファを煽るのは本能なのか―見ている方は苦笑が禁じ得ない。そして見事に煽りに乗ったルーファによって、会話はどんどんヒートアップしていく。


「な―っ!魔法を使っちゃいけないなんてルールなかったもん!」

「そ・れ・で・も!僕は剣技だけ、ルーファは魔法も剣も使った。やっぱり僕の方が強いね」

「―はぁああ?!それだけは絶対にねぇしッ!私が一番だっつーのッ!ゼノより先にSSSランク行くんだからっ!見ていろよッ!?」


いやいやいや…いつの間にか趣旨が変わっているし、ルーファは完全に男みたいな喋り方師ちゃっているし…と傍観を決め込んだセイルが突っ込む。

炎の弓使いが半目でじゃれ合いを見ている間にもゼノの煽りは激しくなっていった。


「ふっ、その威勢はどこまで持つかね?」

「なぁああああああああ―――っ!?」


―あーあ、ついにルーファの逆鱗に触れちゃったか…。

出会って間もないセイルでさえ、ルーファがSSSランク冒険者に尋常ならざる熱意を持っていることは知っていた。ならこの一か月ずっとパーティーを組んでいたゼノはその熱意の深さをセイルよりも知っているはずなのだ…なのに。

―どーして、殿下は煽り過ぎちゃうかねぇ?未来の宰相(みぎうで)としてこの性格は直したいところだ。最悪、未来の番さえ失いかねん。


「ハイハイ、二人ともギルドのアイス奢ったるから落ち着け」


一個百ミルのアイスクリームを思い浮かべながらゼノとルーファを諭す。


「はぁ?セイル、そんなんで僕が―……」


ゼノの言葉は途中で終わってしまった。

―まぁ、それも仕方がないだろう。

セイルとゼノの視線の先には、瓶底眼鏡の奥の黒い瞳を大きく輝かせたルーファ。今にも"きらきらきら"…と音が鳴り出しそうな勢いである。


「―私、バニラで」


幸せを噛みしめるようなルーファの姿は、例えるなら極上の餌を得たツンデレ子猫か、三歳ほどの気丈な令嬢がクマのぬいぐるみを得たような感じだ。


「―ふっ、了解」

「…はぁぁぁぁ…。そうか、そうだよね。ルーファだもんね」


愛しい妹を見るような顔をするセイルと、苦虫を噛み潰したような顔をするゼノ。


どうやら今日の勝者はアイスを得たルーファだったらしい。







※百ミル=百円

……安っ!?ルーファの機嫌も安っ!?

ちなみにAランク冒険者の年収は大体500万円くらい。

(サラリーマンよりも多いくらい)

いや、普通に金持ちやんっ!?ルーファリアどうしたッ!?


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