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4話「女騎士団来襲!」




「死因が村人による狙撃ってどんな世界観だよここ! あれ弓とかじゃなくてスナイパーライフル的な奴だぞ!!」


 何十回も見て既に辟易してきたリスポン位置——村の広場。


 チチパイがそこでぶち切れている。


「ちなみに俺は爆死だ。明らかに現代の手榴弾だったぞ……」

「ファンタジーじゃねえのかよ!! あれか? オークが襲いすぎて、七人の侍ばりにやべえ奴等が守ってるのかあの村!?」

「落ち着け。オークやスライムがいるからってファンタジーとは限らんだろ? そういう世界の文明が発達して……」


 俺は辺りを見渡した。NPCオーク達が営んでいる生活はどう見ても原始時代に近い。

 いや、商人がいる時点である程度文明は……。


「そんな深い設定があるわけねえだろ!」

「ですよね」


 とりあえず、あの村に近付かないようにしよう。スナイパーライフルと手榴弾が向こうにある時点で無理ゲーだ。


「となると……んー川を越えて山の方か?」

「もうちょい森を探索するか? 結構広かったしスルーした遺跡みたいなとこあったろ?」

「あー確かに」


 とか悩んでいると、突然、警告音が大音量で鳴った。


『ビー! ビー! 警告! 女騎士団が接近中! ビー! ビー! 村人は直ちに迎撃せよ!』


 そんなメッセージが表示され、あの野太い声が天から降ってきた。


「なになに? なにが起こってる? 俺は何もしてないぞ!」

「イベントか?」

「まじか。確かにみんな驚いた様子もなく、入口に走って行くぞ」

「俺らも行こうぜ!」

「よしきた!」


 俺らが走って、門をくぐり抜けると、そこは——地獄だった。


「ぎゃあああ」

「ぐわあああああ!!」

「はああああああ!! 神よ! 我に力を! 【斬滅聖剣(ホーリーダーク)闇撃(ブレード)】!」

「お姉様には負けませんわ!! 【フレイム・ストーム】!!」

「このクソブタ共が! 死ね! 跪け! 家畜の哀れな鳴き声をあげろおおおおお」


 3人の女騎士がプレイヤーの群れ相手に——無双していた。


 プレイヤー達を千切っては投げ、千切っては投げを繰り返している。


「もっと殴ってくれえええ」

「踏んでくれええええええ」


 ……一部のプレイヤーはわざとやられている気配がある。


「おいどうするよ!」

「ニュー棍棒を信じろ!」


 うおおおおおと雄叫びを上げながら俺達が突っ込む。


 なんか、神殿騎士みたいな格好の金髪美人の女騎士が闇なのか光なのかよく分からんビームで辺りを薙ぎ払っていく。それで撃ち漏らしたプレイヤーを、もう一人の杖を装備した女騎士が炎の嵐で燃やしていった。


 遠くで逃げ惑うプレイヤーをあの闘技場にいた女戦士が剣で追い回している。


「あれどうすんだよ!!」

「知るかよ!」


 目の前で、七色に光るゲーミングオークがビームで切断された。


「これ、無理ゲーじゃね?」


 チチパイがそう言って、逃げようとする。まあ俺もそう思う。


 だが、その時、女騎士の向こう側に蠢く物を俺を見付けた。


「あれは……ん? いや無理か……」

「どうした? ぼさっとしてると、あのバーサーカー共に殺されるぞ!」

「いや、ちょっと試したい事が」

「は?」


 俺は素早くチチパイにそれを説明した。


「……悪くない。むしろそれしかない気がするぜ。都合良く、()()()()

「問題は死なずにあそこに行けるかどうか」

「……俺がおとりになる」

「……そういうとこだぞ」


 俺達は無言で拳を合わせると、そのままチチパイは女騎士達へと突っ込んでいった。ニュー棍棒を振り回している。


 俺は、その隙にその3人の横を通り過ぎて後ろへと回る。少し進むと、あのスライムの群れが見えた。

 そう俺がさっき見えたのはスライムの群れだった。

 俺達が10匹に増やしてしまったスライムが、この騒ぎを聞き付けたのか、こちらにゆっくりと向かってきている。


「よし、後は……」


 俺が振り返った時には、ほとんどのプレイヤーが死んでいた。


 見れば、チチパイが善戦していた。というか遠くからニュー棍棒で殴っては逃げるを繰り返していた。ちょっとずつだがHPを削っている。


 器用に魔法とビームを避けて、近付くバーサーカーを棍棒で吹き飛ばす。

 しかし、一瞬の隙をついて、神殿騎士のビームがチチパイの頭を吹き飛ばした。


 くそ! チチパイ! お前の犠牲は無駄にしない!


「こっちにもオークはいるぞ!!!」


 俺は叫びながらニュー棍棒を振り回す。後ろでスライム達が蠢いているが、5時間も戦ったおかげで、行動パターンは全て把握している。このぐらいの距離を保っていれば、攻撃はしてこない。


「お姉様! スライムもいます! 倒しましょう!」

「神よ……魔物を撃滅する力を……」

「ぶっころーーす!!」


 気付いた3人が俺の方へと向かってきた。


 一番遠距離を攻撃を出来る杖を持つ女騎士が杖に炎をともした。


 そう、それでいい。俺はその場でターンすると、今度はスライムの方へと逃げる。


 近付いたせいで、迎撃状態になったスライムの攻撃を躱し、全速力で逃げる。


「ファイヤーストーム!!」


 熱風を背後で感じる。俺はダッシュで森の中へと逃げる。


 一瞬振り返ると、炎が竜巻のように吹き荒れる中で、スライムが増殖していた。


 ……あれ何匹いるんだ?


 増えに増えたスライム達が、女騎士達を襲い始める。


 見ると、めちゃくちゃ良い勝負をしている。スライムの攻撃を受けてHPがガリガリ減らされていく女騎士達。やっぱりあのスライムつえええええ。


 頑張れスライム! いけスライム!


 だが、別属性の魔法と、あの謎ビームで、スライムの数も減っていく。

 ちなみにあの闘技場の女戦士はスライムの中に取り込まれて身動き取れずに、スリップダメージを受けている。ざまあ。


 俺も黙って見ているわけではない。

 そう。ニュー棍棒はオブジェクトを貫通する。そして物理無効のスライムの身体も貫通する事は検証済みだ。


 だから俺はスライムを盾に、ニュー棍棒で女騎士達を殴った。たまにスライムが俺を攻撃しようとするが、それは予見して躱す。


 長い戦いだった。どうやら、誰も戻ってこないところを見ると、一度死ぬと参加できないようだ。


 俺は殴っては逃げ、スライムを盾にして、女騎士達をちまちま削っていく。


 気付けば、神殿騎士は、スライムの攻撃でHPがゼロになり、倒れた。

 魔法を使う奴は俺の棍棒の一撃でノックダウン。その間際に放った魔法で盾にしたスライムが死亡。

 残るは、あの闘技場の女戦士とそれを取り込んだスライムのみだ。


 どうやら取り込んでスリップダメージを与えている間はスライムも身動きは取れないようだ。

 地味に、女戦士ももがきながら、スライムのコアを攻撃している。


 お互いのHPがじんわり減っていく。


 俺も棍棒で殴って女騎士のHPを減らしていくが、それ込みでもスライムの方が僅かに早く死にそうだ。


 「はあああああ!!」


 それぞれがHPゲージを残り1ミリ程度残したところで、俺が思いっきり棍棒を振りかぶった。


 女戦士の攻撃でスライムが消失。そいつは剣を構えながら、俺に向かってこう言った。


「はあ……はあ……くっ! 殺されてたま——」


 俺はそれを最後まで聞く事なくフルスイングで棍棒を薙ぎ払った。


 HPが完全に削れて、女騎士が吹き飛ばされた。ゴロゴロと地面を転がった後、不自然に膝をついた姿勢になると、何やら言ってるがどうせまたくっころだろう。


 もういいよそれは……。


 視界の端で、KKポイントが大量に入った事と、大量のドロップ品を入手した事を知らせる表示が出たが、それを確かめる気力は既になかった。


「もうこんなクソゲーは懲り懲りだ……」


 俺は徒労感を抱えたまま、ログアウトした。


 チチパイには、『疲れたし寝る』とだけ送った。


 現実へと戻る。相変わらず散らかった部屋だ。

 俺はVR機器を放り投げて、カーテンを開けた。見れば、朝日が昇っており、目の奥が痛い。


 妙な達成感と疲労感が身体を包んでいた。


 やりたいことはあまりない。けど、とりあえず何より今は眠りを欲していた。

 

 起きたら、あのイベントを生き残った事をチチパイに自慢してやろう。

 

 そんな事を考えながら俺はベッドにダイブするとそのまま気絶するように眠った。


ばけもん(女騎士)にはばけもん(スライム)をぶつけんだよ!


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― 新着の感想 ―
[良い点] このノリ、好きです!
[良い点] チチパイ先輩(捨て駒)オッスオッス! [気になる点] ウザイ女騎士が仲間になりそうな気が……。 [一言] ドクペ美味し!
2020/04/12 15:29 退会済み
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